「解放」最新号(第2885号2025年9月15日)の内容

<1面>
「反米」での結託強化に突進する中・露・朝権力者
 「抗日戦勝八十周年」軍事パレード
長射程ミサイルの全国各地への配備を許すな!
<2面>
日米共同演習レゾリュートドラゴン25を阻止せよ
ロシア自爆型無人機増産の実態
<3面>
マイクロソフト――AI開発投資のための大量首切り
柏崎刈羽原発再稼働を許すな
<4面>
行田市 下水道管点検作業
 労働者4名死亡事故弾劾!

読者より
 『解放』を読む仲間たちとともに
<5面>
国家主義教育強化に反対しよう
 教育労働者委員会
Topics 「全労連」の「レバカレ2025」
組織存立の危機打開を画策
<6面>
第63回国際反戦集会 海外からのメッセージ B
「ニューズ・アンド・レターズ」委員会/インド共産党(マルクス‐レーニン主義)解放派/アブラムソン(ロシア)/イオス・デル・モラル(スペイン)/アフガニスタン急進左翼
 「解放」
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「反米」での結託強化に

突進する中・露・朝権力者


「抗日戦勝八十周年」軍事パレード


ウクライナ侵略に加担する習近平指導部弾劾!

 九月三日、中国の習近平指導部は、北京の天安門広場で「抗日戦争勝利八十周年」の一大軍事パレードを挙行した。侵略者プーチンとその共犯者たる金正恩を左右に従え、かつSCO諸国やミャンマーなど中国の「友好国」二十六ヵ国の権力者どもを従えて、国家主席・習近平は、新型核兵器部隊を先頭にして行進する中国軍を閲兵した。まさに中・露・朝三国の権力者どもは、「強暴な相手」とみなしたアメリカ・トランプ政権にたいして、盟主£国のもとに結束して対峙し対抗する姿勢を全世界にさししめしたのである。
 大陸間弾道ミサイルをはじめとした核戦力を誇示しながら、習近平は言った。「中華民族は強暴を恐れない自立自強の民族である。」「人類は平和か戦争か、対話か対抗かの選択に直面している。中国人民は歴史の正しい側に断固として立ち、平和的発展の道を断固歩み、人類運命共同体を構築していく。」そのために「世界一流の軍隊の建設を加速させる」、と。まさしく「世界の覇者」たらんとすることの傲然たる宣言にほかならない。
 軍事パレードには、陸海空の戦略的核戦力の三本柱――新型ICBM「東風61」、SLBM「巨浪3」、航空機発射型長距離ミサイル「驚雷1」――のみならず、「智能化戦争」の戦力となる新型ステルス無人機やキラーロボットなどを並べたて、中国の核戦力の威容≠誇示してみせた。
 習近平は、ウクライナ侵略を強行し数多のウクライナ人民を虐殺しつづけているプーチンと一万五〇〇〇人の兵隊をロシアの侵略戦争に派遣している金正恩とを最上級の国家の賓客として歓待し、天安門の楼閣での三者そろい踏みの閲兵という演出を凝らした。――このことは、習近平指導部が「抗日戦勝パレード」に名を借りて、プーチン・ロシアによるウクライナ侵略と占領支配=属国化の公然たる容認に踏みきったことの宣明にほかならない。
 習近平の後ろ盾を得たプーチンは、ウクライナとの二国間の「和平」協議(トランプが提案したそれ)について、「ゼレンスキーがモスクワに来い」と言い放った。ウクライナに無条件降伏を傲然と迫っているのだ。〔二十六の欧米有志諸国によるウクライナの「安全の保証」をめぐる協議にたいしては、「ロシアぬきで議論しても意味はない」(外相ラブロフ)とほざきながら、欧州各国軍のウクライナ派遣は絶対に認めないと叫んでいる。〕
 そしていまロシア軍は、ウクライナへの攻撃を一段とエスカレートしている。九月七日には、これまでで最大規模の八〇〇機の自爆ドローンと弾道ミサイルを、キーウやクリヴィー・リフ、ドニプロなどに撃ちこみ、数多の人民を殺傷した。エネルギーやインフラ施設、民間住宅のみならず、ウクライナ政府施設を標的とした攻撃を強行したのだ。
 われわれは、全世界の労働者・人民に心から訴える。ウクライナを蹂躙し「ロシアの属国」にせんとするスターリンの末裔<vーチンの蛮行を断じて許してはならない。侵略者プーチンと共犯者・金正恩との結託に突進している中国・習近平指導部は、ウクライナ侵略の加担者であり、プーチンの侵略戦争と日々戦っているウクライナ人民への公然たる敵対者以外のなにものでもない。しかも、核兵器を大量に保有するこの三ヵ国の結託は、ユーラシア大陸いや全世界を新たな核戦争勃発の危機に叩きこむものにほかならない。ネオ・スターリン主義中国のウクライナ侵略戦争への加担を断じて許すな。中国・ロシア・北朝鮮による米・欧・日に対抗しての核軍拡反対! プーチンの戦争粉砕! 全世界人民は、いまこそ反戦の闘いに起て!

以下、見出し

「内憂外患」ののりきりに血眼の北京官僚


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長射程ミサイルの全国各地への配備を許すな!

 八月二十九日に防衛省は、「スタンド・オフ・ミサイル」と称する長射程攻撃ミサイルの配備計画を発表した。計画を一年前倒しにした石破政権は、射程を一〇〇〇`bまで延ばした「12式地対艦ミサイル能力向上型」〔以下、長射程12式ミサイル〕を最初に陸上自衛隊・健軍駐屯地(熊本)に配備すると発表した(来年三月と二六年度)。射程一〇〇〇`bは、熊本からは朝鮮半島全域と中国沿岸部が入る。沖縄・南西諸島からは台湾や中国南西部がすっぽり入る。また、富士駐屯地(静岡)に射程数百`bの「高速滑空弾」を今年度中に、改良型12式ミサイルを二七年度に配備するとした。
 このミサイル配備は、「一流の軍事強国」に飛躍せんとする日本帝国主義国家が、中国や北朝鮮の領土を直接攻撃できる武器を手にする一大事態なのだ。われわれは、現行憲法を完全に踏み潰し「戦争のできる国」の露骨な姿をあらわにするこの暴挙を打ち砕くために断固として起ちあがろう。
 石破政権は、地上発射型(地発型)の改良型12式ミサイルを健軍駐屯地(陸自西部方面総監部と同じ場所)に配備することを皮切りに、今後は湯布院駐屯地(大分)や勝連分屯地(沖縄)などにも次々と配備するにちがいない。「地対艦」と称しているが攻撃目標は「敵」とみなした中国・北朝鮮の基地や軍事司令部を含むのだ。「12式ミサイル」は、中国軍のミサイル攻撃を回避するために、「発射機」と呼ばれる八輪トラックに搭載し、移動しながら陸上の駐車場や公園などどこからでも撃つことができる。それは日本のいたる所を中国軍の軍事標的にすることを意味する。
 石破政権は、地発型だけでなく艦発型を横須賀配備の護衛艦「てるづき」に、空発型を空自・百里基地(茨城)のF2戦闘機に、いずれも二七年度に配備することも発表した。「高速滑空弾」は上富良野駐屯地(北海道)とえびの駐屯地(宮崎)に二六年度にも配備するとした。全国に、陸・海・空問わず、国産の長射程ミサイルを次々に配備しようとしているのだ。
 そればかりではない。石破政権は、佐世保に配備しているイージス艦「ちょうかい」に今年度中に改修を施し、アメリカ製の巡航ミサイル・トマホーク(射程一六〇〇`b超)をすぐに装備しようとしている。トマホークの射程一六〇〇`bは、佐世保から北京や台湾全域に届く距離だ。イージス艦が東シナ海に移動すれば、中国のさらに内陸に届くことになる。この配備自体が中国・北朝鮮にたいする軍事挑発なのだ。今後、舞鶴や横須賀に配備しているイージス艦も改修し順次導入するにちがいない。このトマホークこそアメリカ帝国主義がこのかんイランやイラク、シリアなどへの先制攻撃に使ってきたものである。これを今後四〇〇発導入する計画なのだ。
 自民党政権は、国家防衛戦略(二〇二二年策定)において「防衛力の抜本的強化」を掲げ、なかでも筆頭に「スタンド・オフ防衛能力」を挙げ、長射程ミサイルの開発と実戦配備に狂奔してきた。アメリカ帝国主義が「中国は二〇二七年までに台湾に侵攻する軍事力をもつ」と通告し、事実上期限を切って日本に対中の軍事力増強を求めてきた。これに隷従する日本の自民党政府は、「新しい戦い方」(国家防衛戦略)の名において、長射程ミサイルを全国の陸自ミサイル部隊・海自護衛艦・空自戦闘機部隊に配備し、自衛隊を「敵国領土をミサイル攻撃できる軍隊」としてその在り方を抜本的に変えようとしているのだ。
 これに合わせて(「継戦能力」の強化も目論んで)、全国に長距離ミサイル用の大型を含む弾薬庫一三〇棟を急ピッチで建設している(大分、宮崎・えびの、鹿児島・さつま町、京都・祝園、北海道各地など)。同時に、中国や北朝鮮の基地・部隊の動向を米軍と連携し早期に把握するために「衛星コンステレーション」の確立に血眼になっているのである。

以下、見出し

沖縄・九州の軍事要塞化反対!

米日共同の対中国先制攻撃体制の強化を許すな


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行田市下水道管点検作業 


労働者四名の死亡事故弾劾!


老朽下水道管を放置する自民党政府を許すな!


 八月二日、埼玉県行田市で既設下水道管(一九八一年布設・口径二六〇〇_b)の点検作業をおこなっていた労働者四名が死亡するという重大事故が発生した。この事故は一月に勃発した同県八潮市の下水道幹線の破損による道路陥没事故を受け、政府=国土交通省が全国の自治体に実施を要請した口径二〇〇〇_b以上の下水道管路「特別調査」の作業中に発生したものである。
 歴代自民党政権は二〇一三年に策定した「国土強靭化基本計画」の「インフラ長寿命化基本計画」にもとづき既存インフラの――「修繕・更新を回避」し、一層の「効率化をはかれ」などと称して――「修繕・更新」をサボタージュし新増設に重点をおいてきた。しかし埼玉県八潮市で一名のトラック運転労働者の命が奪われる悲惨な事故が発生することによって、上下水道管の老朽化が社会問題化し、労働者・人民のあいだに既存インフラ設備への不安が一挙に増大してしまった。これを沈静化するために政府=国交省はアリバイ的な緊急点検を「特別調査」と称して全国の自治体当局に三月十八日付けで指示したのである。しかしこの指示は、現場の実情や特殊性などまったく考慮せず、ただただ労働者・人民の眼を欺くためのアリバイ的なものでしかなかった。このことが今回の行田市の事故で暴露されたのである。
 事故が発生した行田市の調査現場は河川部を横断する伏せ越し部(註)という特殊な構造であることから硫化水素が非常に滞留しやすい場所であっただけでなく、現下の温暖化にともなう高温によって下水道管内には通常以上に硫化水素が多く発生する状況であったといえる。だから「特別調査」を指示した国交省においても、指示を受け調査を民間業者に委託した自治体当局においても、当時、下水道管内に硫化水素が非常に多く醸成されていたことは十分予想できたはずである。しかしこうした状況を一顧だにせず「特別調査」をゴリ押ししたのが政府=国交省であった。許せない!

あまりにも杜撰な「安全管理」

 今回の事故は、あまりにも杜撰な「安全管理」のもとで引き起こされた。
 @八月二日午前九時ごろ、下流側で点検作業をするために伏せ越し部の下水道管内の排水(汚水)の水位を下げようと、排水ポンプを運転し排水作業を実施した。それと同時に硫化水素の濃度が急激に上昇し、ガス検知器の警報が鳴ったため、現場責任者は作業員を地上に退避させ排水ポンプを停止した。
 A午前九時十分〜二十分ごろ、上流側でAさんは状況を確認するために、マンホール内に梯子を使って入った。この時点では警報は鳴っていなかった。しばらくするとAさんの大きな声が聞こえ、その後何か(Aさんと思われる)がマンホールの底に落下したような音が地上の作業員に聞こえた。
 Bこの事態を知った現場責任者のBさんが続いてマンホールに入った。なんとこの時点でガス検知機は鳴っていたというのである。考えられないことである。Bさんの反応もなくなった。
 Cさらにガス検知機が鳴りつづけているなかを、Cさんがマンホール内に入ったという。それだけではない。Aさん、Bさん、Cさんの落下を地上の作業員が確認し、一一九番通報したのであるが、その過程でDさんもマンホールに入っていたのである。
 この日は、三四度という猛暑のもとで、硫化水素の濃度が基準値の十五倍超となるなかで、なんと、酸素を送るエアーラインマスクの用意もなく転落防止の保護装置もないままに、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんの四人が硫化水素ガスを吸い込みマンホールの底に落下し死亡したのである。
 請負業者(会社側)は、「七月十六日・十七日におこなった当該場所での作業では硫化水素濃度に問題はなかった。だからマスクも安全帯も用意しなかった」などとぬかしたという。伏せ越し管路と呼ばれる形状の下水道では、汚物なども溜まりやすく、硫化水素が発生しやすいのだ。しかも事前の目視点検で腐食などの異常が確認され、今回はその箇所を詳しく調べるために、伏せ越し部に溜まっている汚水を抜く作業をおこなったのであり、その渦中で事故が引き起こされたのだ。水道事業の民営化・委託化が進むなかで、水道労働者の命があまりにも軽んじられているのだ。許しがたいではないか。

以下、見出し

自治体に責任を転嫁する政府=国交省

「コストカット」で危険作業に駆り立てられる労働者


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戦後80年――大軍拡と憲法大改悪を許さず

国家主義教育の強化に反対しよう



「教育DX」という名の能力主義教育反対!
「定額・働かせ放題」の給特法撤廃!
「主務教諭」導入を許すな!
ウクライナ侵略戦争反対! ガザ人民虐殺を許すな!

教育労働者委員会

 教育研究全国集会(「教育のつどい 二〇二五」)に参加された全教組合員のみなさん!
 アメリカ帝国主義による広島・長崎への原爆投下、第二次世界大戦の終結から八十年の今、世界は再び熱核戦争勃発の危機に立たされている。ウクライナでは「核使用」をふりかざすプーチンのロシア軍によって学校や病院などが連日爆撃され、子どもや高齢者の犠牲が後を絶たない。パレスチナでは、ネタニヤフ政権によって多くの子どもたちが爆撃と銃撃と飢餓に襲われている。東アジアにおいてもアメリカ・日本と中国・北朝鮮との軍事的対立が激化している。
 ここ日本では、教育勅語の復活や核武装、現行憲法の廃止を叫ぶファシストの党が参院選で議席を伸長させるなど、国会の総翼賛議会化が急速に進んでいる。学校現場にも自衛隊が入り込み、国防意識の涵養や入隊勧誘が堂々とおこなわれている。「教え子を再び戦場に送るな」の旗を投げ捨て、教職員組合を主体とした反戦の取りくみを完全に放棄している全教本部をのりこえ、今こそ教育職場から反戦・平和の声をあげよう! 国家主義教育に反対しよう!
 文部科学省による「教育DX」の推進とともに拡大している子どもたちの急激な学力低下と心身の異状が学校現場で大きな問題となっている。教育労働者じしんも、授業・校務全般の「ICT活用」による業務増加と長時間労働、そして常態化する持ち帰り残業=ステルス残業で切れ目なく働かされ、疲労困憊にさせられている。労働強化と労務管理強化に抗する活発な討論をおこなおう!

「教育勅語」の賛美を許すな!

 参院選において伸長した参政党は、「(日本は)天皇のしらす(統治する)君民一体の国家である」などと天皇主権を鼓吹するとともに「教育勅語など歴代の詔勅を、教育において尊重せよ」と叫ぶ、真正のファシスト党にほかならない。軍国主義日本において、戦意高揚と忠君愛国の精神を子どもたちに刷りこむために全国津々浦々の学校で暗誦することが強制された教育勅語を、再び子どもたちに注入しようというのだ。この「勅語」の核心は「一旦緩急あれば義勇公に奉じ、もって天壌無窮の皇運を扶翼すべし」、すなわち天皇と国家のために戦場に馳せ参じて命を捨てよ、と教えこむことにある。日本を「アメリカとともに戦争する国」へと飛躍させる策動がおしすすめられているもとで、極右政党が勢力を伸ばし、軍国日本の再興に相応しい国家主義教育の旗を振っているのだ。こんなことは絶対に許してはならない。
 だが全教本部が支持する日本共産党の指導部は、参院選の運動期間をつうじて消費税減税の代案を宣伝することに終始し、ファシストどもの「改憲」「核武装」の大合唱にもまともに反論することもできなかった。彼らじしんが自衛隊も日米安保条約も認め、政策を右翼的に変質させてきたからだ。全教本部もまた、改憲反対もファシズム反対も組合員に呼びかけなかった。これでは自公政権にたいする教育労働者の怒りを教職員組合のもとに結集することなどできるわけがないのだ。
 今、学校現場に日本国軍=自衛隊がますます浸透している。今春、防衛省は、文科省の容認のもと全国二四〇〇の小学校に『まるわかり! はじめての防衛白書二〇二四』を直接送りつけた。この子ども版『白書』では、「ウクライナがロシアに侵略されたのは防衛力が弱かったからだ」「中国・ロシア・北朝鮮に対抗するために軍備増強が必要だ」といった軍拡宣伝が並べたてられている。防衛省はこれを学校教育に活用させようというのだ。本当に許しがたいではないか! 社会科見学や職場体験活動の訪問先として自衛隊基地を選ぶ学校が増え、自衛隊への勧誘のために子どもたちの名簿を提供するような反動首長の自治体も少なくない。軍靴で学校が踏み荒らされる時代の到来を許してはならない。今こそ教育労働者は、教職員組合の力を結集して改憲・大軍拡に反対するとともに、国家主義教育反対の声をあげよう!

ICTを活用した新たな能力主義教育に反対しよう

 
全教教研集会にわが同盟が檄
 八月十七日から三日間、全教の全国教研集会(「教育のつどい 二〇二五」)が埼玉県内で開催された。わが同盟教育労働者委員会は十八日、参加する全教組合員や市民にビラを配布し情宣をおこなった。(写真は8月18日、飯能市)

 政府・文科省は「GIGAスクール構想の実現」をかかげて、ICT機器を活用した教育をどんどんおしすすめている。「個別最適な教育」や「業務の削減」を実現するという謳い文句とは裏腹に、こうした教育政策によって子どもたちのあいだに深刻な問題が広がっている。デジタル視聴による視力の低下はもとより、ひらがなも漢字も書けず計算ができない、論理的な文章が書けない・読めないといった子どもが増えるなど、急激な「学力の低下」が進んでいるのだ。実験・体験もタブレットの視聴にとって代えられ、五感の発達がないがしろにされるといった問題も多くの教員が指摘している。授業中のゲーム、アニメ視聴が蔓延し、授業やクラス運営の大きな障害になってさえいる。しかも、貧困家庭の子どもほど一人で過ごす時間が長く、家でも学校でもスマホ漬け・ゲーム漬けとなる危険性は高い。経済格差の拡大とともに、学習意欲、協調性、外向性、自己肯定感など人格形成に大きく影響をおよぼす「体験の格差」も拡大している。これら人間破壊というべき問題は、教育労働者の「教育技術」「ICTスキル」の向上によっては決して解決できない。教育労働者はこの新たな問題に直面して悩み苦しみ疲弊を深めている。
 ところが現場教員の苦悩をまったく無視抹殺して、教員は教育アプリや生成AIを使った子どもたちの「学び」を補助する「伴走者」たれ、などと号令しているのが文科省である。知識を教えるのも悩みに答えるのも機械(AI)であり、教員はただAIに使われる存在だといわんばかりなのだ。これをICT物神崇拝による倒錯と言わずしてなんというのか。文科省がこのような教育政策に固執するのは、子どもたちには企業の生産性向上に必要な能力(その中心環がICT活用能力だ)を付与すればよい、という独占資本家的な能力主義丸出しの教育観に凝り固まっているからなのだ。
 全教本部は「ICT機器の活用の強制に反対する」と言ってはいる。だが具体的な指導をまったくおこなわないのだ。今教研で、「教育DX推進」という名の能力主義教育の強化に反対する積極的な討論を巻きおこそう!

給特法改定弾劾! 労務管理強化に反対しよう!

 六月十一日、石破政権は給特法改定を強行した。教職調整額を一〇%に引き上げることとひきかえに「定額・働かせ放題」の給特法を永久化したのだ。教員は「高度な専門職」であるから他の労働者のような残業代支給はなじまない、などと叫びながらである。彼らは、ICT教育と国家主義教育を進めるためには、この教師=聖職イデオロギーを根幹とした給特法が絶対に不可欠だと考えているのだ。
 全教本部は給特法改定案に反対し、残業代を支給する仕組みをつくるよう政府に要求してはきた。だが彼らは「残業代ゼロ」の法的根拠である給特法を、「教員の専門性を認めたもの」だとして賛美している。これでは「残業代を支給しろ」などと言ってもまったく無力だ。いやむしろ給特法を未来永劫存続するという政府・文科省の尻押しにしかならない。今こそ給特法撤廃の声を大きくあげよう!
 政府・文科省は給特法改定において、「主務教諭」の設置をうちだした。校長―副校長(教頭)―主幹教諭―主務教諭―一般教諭という五段階に学校運営組織を改め、労務管理体制をより強化することを狙っているのだ。
 しかも学級担任手当を新設する代わりに義務教育特別手当を減額し、さらに特別支援教育にかんする調整額を廃止し、特別支援学校・学級の担任には担任手当を支給しないなど、教員給与の格差を拡大させる方策を次々とうちだしたのだ。格差賃金と労務管理強化こそは教職員組合の団結を破壊する悪辣なものだ。これらの導入に反対し、教職員組合の団結を強化しよう!

教育職場から反戦・平和の声を!

 プーチンによるウクライナ侵略開始から三年半、女性・高齢者・子どもなど多くの一般市民が殺傷され二万人以上の子どもたちがロシアに拉致されたままである。この苦しみに耐えながら侵略に抗してたたかっているウクライナの人々と連帯してプーチンの戦争に反対しよう!
 パレスチナ・ガザではイスラエル軍による人民虐殺がエスカレートしている。「もう嫌だ! 二年近く学校に行っていない。学校に戻りたい」というガザの子どもたちの叫びを受けとめ、教育労働者が先頭にたって日本の地でネタニヤフの戦争反対の声をあげよう!
 石破政権は、中国・北朝鮮に対抗するために、日米安保同盟の強化にますます狂奔している。すでに昨年、中国にたいして核使用の脅しをかけることを自衛隊幹部が米軍に強硬に要求し、これに米軍が応じるという内容の日米共同の机上演習がおこなわれている。唯一の被爆国である日本が、核使用を想定した演習をおこなうなど絶対に許してはならない。
 石破政権は「戦争する国」にふさわしく国内支配を強化するために、労働組合・学生自治会・市民運動団体などへの弾圧を強めている。日本学術会議の解体を許すな! 愛知大学などにおける反戦運動・学生自治活動にたいする大学当局と警察権力が一体となっての弾圧に反対しよう!
 治安維持法制定から百年。この希代の悪法の最初の適用が学生運動弾圧事件である「京都学連事件」(一九二六年)であった。その後弾圧の矛先は全国の学校に拡大した。このことは歴史の教訓だ。現代の治安維持法型弾圧を許すな!
 国家主義・能力主義教育の強化に反対しよう! 今こそ反戦・平和の声をあげよう! 今次教研集会で活発な討論を巻きおこそう!
 (八月十七日)

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