第2779号2023年7月31日)の内容

<1面>
米日韓の核軍事同盟強化反対!
 北朝鮮の弾道ミサイル発射弾劾!
 熱核戦争勃発の危機を突き破る反戦闘争を!

<2面>
ロシアによるオデーサへのミサイル攻撃弾劾!
<3面>
放射能汚染水の海洋放出に突進する岸田政権を許すな
泊3号機再稼働に狂奔する政府
日本原電が資料改ざん・ねつ造
<4面>
NTT
労組本部の超低額・超低率妥結弾劾!
<5面>
Topics 岸田の「構造的賃上げ」策に期待する「全労連」指導部
ヤマト運輸との業務提携に突進する日本郵便
▽米俳優組合がスト
<6面>
万華鏡2023――情勢の断層を読む
イエレン訪中
国安法3年の香港
『新世紀』最新号(第326号)紹介
《週間日誌》7月16日〜22日
 「解放」最新号




























  


米日韓の核軍事同盟強化反対!

北朝鮮の弾道ミサイル発射弾劾!

熱核戦争勃発の危機を突き破る反戦闘争を!



米・日・韓―中・露・北朝鮮の核恫喝と対抗的軍事演習

 アメリカ・バイデン政権は七月十八日に、核弾道ミサイル二十発を搭載した戦略原子力潜水艦「ケンタッキー」を韓国・釜山港に入港させた。アメリカ本土に届くICBMの開発に狂奔する北朝鮮・金正恩政権にたいして、最大級の核恫喝を加えたのだ。この戦略原潜の入港を韓国・尹錫悦政権は大々的に歓迎した。大統領・尹錫悦がこの原潜の前に立ちアメリカの圧倒的な核の力≠賛美したのに応えて、核原潜の艦長も「拡大抑止の公約を韓国国民に示す」などとほざいた。まさに米韓両権力者は、金正恩政権にたいして米韓軍事同盟の核の威力≠見せつけたのである。
 この釜山港への戦略原潜入港と同日の十八日にソウルにおいては、米韓両政府が、アメリカの「拡大抑止」(いわゆる核の傘)にかんする協議機関・米韓「核協議グループ」(NCG)の初会合を開催した。この会合においてアメリカ側の代表キャンベル(インド太平洋調整官)と韓国政府の代表・金泰孝は、「アメリカと同盟国にたいする北朝鮮のいかなる核攻撃も、北朝鮮政権の終末につながる」(NCGの共同文書)などと宣言したのだ。米・韓の両権力者は、もしもアメリカとその同盟国を核攻撃するならば北朝鮮国家を一瞬にして破壊する≠ニいう意志を傲然と示したのである。
 ウクライナ侵略を強行したロシア・プーチン政権が、東アジアにおいては北朝鮮の金正恩政権にたいする弾道ミサイル・核開発への援助に拍車をかけている。中国・習近平政権は台湾併呑のための対米・対日の核軍事力の増強に突進している。この両国の軍事的・経済的援助を支えとして、金正恩は韓国・尹錫悦政権にたいする「核攻撃」の脅迫をくりかえしているのだ。この中・露・北朝鮮の対米の核戦力強化に対抗するために、そして韓国国内において噴出しはじめた独自核武装≠フ声を抑えるためにも、バイデン政権は、尹錫悦を従えて、「拡大抑止」の名のもとに、米日韓の核軍事同盟の飛躍的強化に血眼となっているのである。まさにその画期をなすのが、米原潜の釜山入港と米韓NCGの初会合にほかならない。
 いまや米韓両軍は、北朝鮮にたいする、核戦争をも構えての臨戦態勢に突入している。この米韓両軍と一体化するかたちで日本国軍は、北朝鮮のICBMを迎撃するミサイル防衛の体制を構築しているのだ〔米原潜釜山入港の二日前に、米韓両軍のイージス駆逐艦と日本国軍の護衛艦「まや」が連携して、弾道ミサイルの「情報共有」に主眼をおいた合同演習を日本海海上で強行した〕。米日韓の権力者どもは、対北朝鮮のミサイル防衛を直接の名分にしての米日韓三角軍事同盟の再構築・強化に突進している。これをバイデン政権は、対中国の軍事包囲網の主要な一翼を担うものとして飛躍的に強化せんとしているのである。
 こうして北朝鮮を軍事的に威嚇する米韓日にたいして金正恩政権は、真っ向から対抗し、連続的なミサイル発射にうってでている。「軍事攻撃は始まったばかりだ」(金与正)などとヒステリックに叫びたてながらこの政権は、ただちに射程五〇〇`bの短距離ミサイル二発を日本海に向けて撃ちこんだ(十九日)。まさに平壌から五〇〇`bに位置する釜山港の原潜を標的にするという恫喝の意をこめて、短距離ミサイルを撃ちこんだのだ。さらに、西方の黄海に向けて、核弾頭搭載可能な巡航ミサイル数発を発射した(二十二日)。中国・ロシアの後ろ盾のもとに、あくまでも核ミサイルの開発配備に狂奔しているのが金正恩政権なのである。
 この北朝鮮・金正恩政権を支えている中国・ロシアの両権力者は、米原潜の釜山寄港とほぼ同時期に、両軍合わせて十隻以上の艦船と航空機三十機以上の海・空軍部隊を動員して、対潜水艦攻撃や「情報共有」などの合同演習を強行した(七月二十〜二十三日)。これに参加する中国海軍艦隊が、まさにアメリカ原潜が入港している釜山港の沖を通過したのだ。こうして米・韓・日の核軍事同盟にたいして、中・露・北朝鮮は結託して対抗的な軍事行動にうってでているのである。
 この中国・ロシア・北朝鮮にたいする軍事的包囲網の構築・強化に、アメリカ・バイデン政権は、日本の岸田政権と韓国の尹政権を従えて、いままさに突進しているのだ。
 アメリカ・バイデン政権は、八月十八日に岸田と尹をワシントンのキャンプデービッドに呼び寄せ、米日韓三国首脳会談を開催しようとしている。この会談において三国の権力者どもは、アメリカの核戦力を柱とした米日韓三国の核軍事同盟の飛躍的強化を確認するとともに、さらにこの米日韓同盟を米英豪の「AUKUS」およびNATOとも一体的に結びつけたグローバル同盟として強化することを合意しようとしているのである。
 尹政権が元徴用工問題の幕引きを――日本軍国主義の犯罪を居直る日本政府に全面屈服し――強行したことを区切りとして、日韓両権力者は、安保対話の五年ぶりの再開、日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)の効力回復などに踏みきった。この日韓の「対立解消」を両国権力者に強制してきたバイデン政権は、三国の核軍事同盟を対中・対露のグローバルな核軍事包囲網の主要な一翼として飛躍的に強化せんとしているのである。

以下 見出し

対中対露包囲網構築の先兵として立ち回る岸田政権

大軍拡・改憲・ネオファシズム反動攻撃を打ち砕け!


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ロシアによるオデーサへのミサイル攻撃弾劾!


 侵略者プーチンの命をうけたロシア軍は、七月十八日から四日間にわたって、黒海に面したウクライナ南部の主要港湾都市オデーサ(オデッサ)およびミコライウ、チョルノモルシクにたいするミサイル攻撃を連続的に強行した。
 巡航ミサイル「カリブル」や自爆ドローンを大量に投入して、プーチン政権は、ウクライナ最大の穀物積み出し港を擁するオデーサのインフラを破壊し、さらにはチョルノモルシクの穀物ターミナル、穀物倉庫を次々と爆破した。これによって年間二七万人分の消費量にあたる約六万dの穀物が焼失したとされる。ミコライウの住宅地にたいしてもロシア軍は、ミサイル、無人機を雨あられと撃ちこみ、数多の人民をガレキの下敷きにして殺傷した。〔二十一日にはオデーサの穀物倉庫を巡航ミサイル「オニクス」で攻撃した。〕
 われわれは、プーチンが強行したこの悪逆無道のウクライナ南部への軍事攻撃を怒りをこめて弾劾する!
 ウクライナ軍と連携した労働者人民の反転攻勢に追いつめられたプーチンは、ウクライナに経済的打撃を与えることを狙って黒海経由での穀物輸出を阻止するという挙にうってでたのだ。
 ウクライナ南部へのミサイル攻撃を強行する前日(七月十七日)にプーチンは、トルコ・国連の仲介で昨年七月に締結したウクライナからの食糧輸出協定の一方的停止を宣言した。同時に、ウクライナに向けて黒海を航行するすべての船舶を「軍事運搬船」とみなすことを傲然と西側諸国に通告したのである(十九日)。
 それは、米欧の西側諸国から国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシア金融機関の排除という経済制裁を加えられ窮地に叩きこまれてきたプーチン・ロシアの巻き返し策にほかならない。
 プーチン政権は、食糧輸出協定を再開≠キる条件として、SWIFTへのロシア農業銀行の復帰やロシア向け農業機械・部品の供給再開を米欧諸国権力者に要求している。ロシアへの制裁を緩和しなければウクライナにも穀物輸出をさせない≠ネどとほざき、全世界とりわけ中東・アフリカの人民の命の糧である穀物を人質にとって、西側権力者に譲歩を迫っているのがプーチンなのだ。
 ロシアのウクライナ侵略開始から一年五ヵ月のこんにち、憎き虐殺者プーチンはいよいよ断末魔を迎えつつある。ウクライナ正規軍と一致協力したたかうウクライナ人民は、東部ルハンスク、ドネツクならびに南部ザポリージャ、ヘルソンにロシア軍によって張りめぐらされた防衛線(塹壕や地雷原や「竜の歯」)を突破する軍事作戦の完遂にはなお時間を要することのゆえに、侵略軍部隊の兵器、兵員、食料の補給ルートを遮断するために東部および南部クリミア半島などの後方拠点に打撃をくわえることを当面の軍事目標としている。七月十七日にウクライナ海軍と特殊工作部隊が敢行したとされるクリミア大橋の爆破は、右のことを象徴する事態にほかならない。
 二〇一四年にロシアが一方的に軍事占領し併合したクリミア半島とロシア本土とを結ぶ大動脈≠スるこの道路橋の爆破によって、プーチンの政治的威信はますます地に堕ちた。
 プーチンは、その足もとではロシア軍・FSB中枢における抗争と内部崩壊にみまわれている。そしてウクライナ軍およびこれと連携して占領地におけるパルチザン闘争など非公然・公然の様ざまな形態でたたかうウクライナ人民の反転攻勢の炎にあぶられている。この今ヒトラー<vーチンを包囲する反戦の炎を全世界で燃えあがらせよ。
 ロシアの労働者人民よ! プーチンを表看板とするFSB強権型支配体制を打ち倒せ。全世界の労働者人民は、たたかうウクライナ人民と連帯し<プーチンの戦争>にとどめを刺す決意も固く反戦闘争の大爆発をかちとれ!
 (七月二十四日)

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放射能汚染水の海洋放出に突進する岸田政権を許すな

「廃炉に必要」なるデマ宣伝を打ち砕け


 いま岸田政権と東電経営陣は、東京電力福島第一原発の巨大タンクに保管してきた放射能汚染水の海洋放出を、この八月にも強行しようとしている。労働者・人民の圧倒的な反対の声を踏みにじって強行されようとしている海洋放出を断固として阻止せよ。
 経産相・西村は福島県漁連や全漁連の会長らを訪ね(七月十一日と十四日)、「安全基準に合致している」というIAEAのお墨付き≠振りかざして、政府の放出決定をおしこもうとした。これにたいして漁連関係者はあくまで「反対」の意志を表明した。
 そもそもIAEAは「安全基準」の枠内だと言っているだけで、リスクがゼロ≠ニ言っているわけでもない。そこで今、この西村をはじめとした政府・東電経営陣が、海洋放出を正当化するために強調しているのが、「廃炉をすすめるためには海洋放出は避けて通れない」という屁理屈である。これは、廃炉=福島の復興のためには、多少のリスクは我慢しろ≠ニいう、放出反対派にたいする恫喝にほかならない。
 東電福島第一原発事故をひき起こした張本人どもの、この破廉恥な居直りを断じて許すな。

「デブリ取り出しの作業場作り」という大ウソ

 「廃炉をすすめるため」として政府・東電経営陣がおしだしているのが、核燃料デブリ取り出しのための作業場や取り出したデブリを保管するための用地の確保≠ニいう口実である。トリチウムを大量に含む放射能汚染水を保管している容量一三五〇トンのタンクが一〇三三基もあり、これを撤去しなければ廃炉作業がすすめられないとおしだしているのだ。
 だがそもそも、デブリ取り出し≠フ展望などまったくたっていないのが福島第一原発の現状なのである。
 東電と国際廃炉研究開発機構(IRID)は、七月十四日に、2号機のデブリ取り出しに使用するロボットアームをマスコミに公開した。そして今年度後半に試験的取り出しを開始するという。彼らはあたかも、デブリ取り出しに向けた作業が着々と進展しているかのような宣伝につとめた。
 しかし、最長二二メートルに達する巨大アームが一回の作業で取り出すデブリの量は、わずか一グラムである。これを数回おこなって数グラムのデブリを取り出して作業は終りなのである。デブリの組成を分析するための試料の取り出しがこのロボットアーム使用の目的なのであって、この延長線上で、三基合わせて八八〇トンもあるデブリの取り出しができるはずもない。
 これをあたかも、廃炉に向けたデブリ取り出し作業が進展しているかのように宣伝し、もって汚染水の海洋放出を正当化しているのだ。この労働者・人民を愚弄するキャンペーンを断じて許すな。

「四十年廃炉」の虚構の上にたてられた海洋放出策

 今なおデブリ取り出しの工法も決まっていないし、取り出したデブリの保管方法も決まっていない(『新世紀』第三二四号「東電福島第一原発『四十年廃炉』計画の破綻」参照)。もしも原子炉の構造物や建て屋にへばりついたデブリを取り出すとするならば、放射性物質を大量に環境中にまき散らし、この作業に従事する労働者の大量被曝が避けられない。デブリ取り出しは犯罪行為なのだ。それゆえ、デブリを取り出さずに安定的に管理しつづける方策をうちたてることを提案している専門家もいる。
 こうした方策を検討することもせず、政府・東電経営陣が「デブリ取り出し」ができるかのように言い張るのは、福島県人民の怒りをかわすために口から出まかせでうちだした「四十年廃炉」という虚構を護持するためなのである。
 われわれはすでに事故発生直後から、廃炉には最低数百年かかると暴露してきた。今日においては、原発推進派の学者が多数を占める原子力学会でさえも、廃炉は「一〇〇年のスパン」で考えるべきとしている。ところが、労働者・人民をみくびっている政府・東電経営陣は、汚染水の海洋放出を正当化するために、できもしないし、やる気もないデブリ取り出しを口実としてもちだしているのである。
 汚染水を三十年で流しきると彼らがうちだしているのも、事故発生から四十年という期間に合わせているからなのである。だが、今もなお事故炉の原子炉建て屋には一日で九〇トンの地下水が流入していると東電じしんが発表している。これは地下水の流入を抜本的に防止する工事を、東電経営陣が回避してきたことの結果である。この地下水は核燃料デブリに触れて放射能汚染水になり、一年で約三・三万トンの汚染水が発生しつづけるのである。このままでは、永続的に汚染水の海洋放出がつづけられることになるのだ。彼らは、いったん海洋放出の既成事実をつくってしまえば、三十年間で終わらなくても居直れると腹黒く計算しているのだ。
 放射能汚染水の海洋放出を阻止せよ。「廃炉のために海洋放出が必要」なるデマキャンペーンを打ち砕け。
 岸田政権は、原発再稼働・運転期間延長や原発の新増設をおしすすめるために、福島第一原発の廃炉作業が進展しているかのようにみせかける海洋放出を強行しようとしている。原発再稼働・新増設を阻止せよ。核兵器開発の野望をたぎらせる岸田政権の原発・核燃料サイクル開発を粉砕せよ。

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NTT労組本部の超低額・超低率妥結弾劾!


 NTT労組中央本部および企業本部は、三月十五日に「主要会社正社員、月例賃金一人平均三三〇〇円改善」という超低額の会社回答を受けいれ二三春闘を妥結収拾した。「連合」の「目安」(三%)にもおよばない「二%」に「賃金改善」要求を抑える代わりに「組合員の生活防衛への措置」と称して掲げた「一〇万円(年間)」の要求をさえ経営陣に拒否され取り下げるという大裏切りを傲然と居直りながら、だ。
 二〇二二年度通期のNTTグループ連結の営業利益が、昨年より約五〇〇億円増の一兆八〇〇〇億円の増収増益になると予想されていた。このような状況のもとで、率にしてわずか「一%」程度の超低率の回答を本部は受けいれたのだ。政府発表においてさえ食品などの物価上昇率は四・一%であり、ガス、電気代がこれからさらに二〇〜三〇%も値上げされようとしているなかで、この「一%改善」なるものは労働者にとって賃金の大幅切り下げでしかないのだ。
 NTT労働者諸君! 腹の底からの怒りをもって経営陣の賃金抑制を弾劾し、これにつき従う本部指導部の大裏切りと反労働者性を徹底的に暴き弾劾しようではないか。

T わずか「一%」程度の超低率で妥結した本部労働貴族

 NTT労使が明らかにした妥結内容は、以下のような超低額のシロモノであった。
 @主要会社(持株・ドコモ・データ・東・西)の正社員について、資格賃金と成果手当をあわせて一人平均三三〇〇円改善。その内訳は、資格賃金に一人平均七〇〇円相当、成果手当に一人平均二六〇〇円相当を改善。――以下は西日本会社の子会社について、A「グループ会社採用社員」(西日本会社からの転籍ではなく、子会社そのもので採用された社員)について、資格賃金と成果手当をあわせて一人平均二九七〇円改善。資格賃金を一人平均六三〇円相当、成果手当を一人平均二三四〇円相当改善。B「エリア」社員(地域限定の社員)について、資格賃金と成果手当をあわせて一人平均二三二〇円改善。資格賃金を一人平均四九〇円相当、成果手当を一人平均一八三〇円改善。C六十歳超え契約社員について、特別手当の「評価反映額」として月例賃金の平均二二五〇円改善相当分を支払う(年二回の特別手当支払い時に半年分まとめて支払うというもの)。労組本部は経営陣と口裏をあわせて、これを「平均二二五〇円の月例賃金改善」とおしだしている。D無期・有期雇用者について、特別手当U評価以上の労働者にかぎって「評価反映加算」分を改定(Cと同様の方式)。
 特別手当(ボーナス)については、「昨年水準」の支払いということで決着した。会社ごと、雇用形態ごとに格差つきの支払いである。

 徹底した格差配分

 主要五社の正社員については、新年度=二三年四月から「新賃金体系」にもとづいて賃金が配分・支給される。
 彼らの基本給部分にあたる資格賃金は、「グレード賃金」へ移行している。彼らの大多数は低位の「グレード6」から上位の「グレード1」までにランク付けされ、最上位が「スペシャリストグレード1」(SG1)である。「一人平均七〇〇円」とされている資格賃金の「改善」分は、下位のグレードではそれより低い四〇〇円から五〇〇円程度にしかならず、SG1では一〇四〇円となっている。このグレード賃金は特別手当の基礎となる「基準内賃金」であって、これをふくめると驚くべき格差拡大となるのだ!
 成果手当の「改善」分とされる「二六〇〇円」の「配分」は、すべてのグレードに「一律」となってはいる。しかし、もともとの「成果手当支払基礎額」そのものが低位のグレードと上位のグレードでは二倍以上もの格差があるのだ。
 こうした本体会社(主要五社)の正社員の妥結結果を基準にして、西日本会社のもとにある子会社においては、「グループ会社採用社員」は本体社員の九割、地域限定の「エリア社員」は本体社員の七割が配分される。本体会社との、また雇用形態間での格差はいっそう拡大されることになるのである。
 右に述べた正社員以外の社員の場合は以下のとおりである。
 (1)六十歳超契約社員の平均二二五〇円の「月例賃金の改善」と経営陣および労組本部が称しているものは、特別手当支払い時の「評価反映額」に半年分をまとめて支払うというシロモノである。およそ「月例賃金改善」などといえるものではないのだ。
 (2)NTTグループのすべての無期および有期雇用者(いわゆる「契約社員」)は、月例賃金引き上げはゼロであり、これで「賃上げゼロ」は十年連続となる。しかし、本部はこれをあたかも月例賃金の引き上げをしたかのようにうそぶく。彼らの言う「月例賃金の改善」とは、六十歳超契約社員と同様に特別手当の「評価反映加算額」(TからXの五段階評価)の改定でしかない。毎月の賃金が上がるわけでないとともに、高く評価されないかぎり「平均」以上は支払われない仕組みである。基本給の「基礎賃金」はなんら改善されないのだ。
 今春闘は、経営陣によるジョブ型雇用システムを組みこんだ新人事処遇制度の導入のもとでたたかわれた。経営陣が、「高度デジタル人材」を育成・獲得するために、年次的・年功的要素を否定し一掃した「専門性を軸とした人事給与制度」なるものを本年四月から実施したからだ。経営者どもは「高い成果を上げた社員がそれにふさわしい適正な評価をされる仕組み」と称して、「社員のやりがいを高めていく観点から、評価間の間差を拡大する」(会社提案の「『人事・人材・処遇等の見直し』について」)と傲然と言い放った。「業績評価を五段階」で、「行動評価を三段階」で絶対評価し処遇に反映させるとしているが、評価の基準は不透明にしている。高度IT人材を育成・獲得する観点から徹底した「間差」=格差を設けるということなのだ。
 経営陣は新制度導入にあたって、許しがたいことに既得の配偶者手当・扶養手当・外勤手当などの諸手当を廃止した。彼らは、これまでの扶養手当に代えて「子育て・介護手当」として子どものいる労働者にたいしてのみの手当に見直した。これこそは、働きたくても働けないパートナーや父母と生計をともにする組合員にとっては、手当のカットで大幅な収入減となるものなのだ。この大改悪にたいして中央本部は昨年八月、多くの組合員の反対の声に突きあげられて、「移行時調整賃金の支給」など六項目の対処策≠形ばかりに会社に要求したが、微々たる「移行措置」をとるという経営側回答で結着させられたのである。

以下 見出し

U 実質賃金低下の容認と非正規雇用労働者の見殺し

 欺瞞的言辞で裏切りを居直る労組幹部ども

 経営陣の意を受けた超低率の「二%」要求

 「格差拡大」を賛美・尻押しする反労働者性


V 会社施策に全面協力する本部を弾劾しよう!

 岸田政権の大軍拡・大増税、憲法改悪を打ち砕こう!

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ヤマト運輸との業務提携に突進する日本郵便

極限的な労働強化をはねかえせ!


 六月十六日に、日本郵政、日本郵便、ヤマトHD、ヤマト運輸の四社は、「持続可能な物流サービスの推進に向けた基本合意」と題して、メール便・小型薄物荷物分野での業務提携をおこなうことを発表した。
 その内容は、これまでヤマト運輸がおこなってきた@「クロネコDM便」の配達を来年一月三十一日に終了し、新たに「クロネコゆうメール(仮称)」として日本郵便がその配達を引き受ける。A「ネコポス」(追跡サービス付き薄型小物荷物)の配達を今年十月から順次とりやめ、新たに「クロネコゆうパケット(仮称)」として日本郵便が配達を引き受ける、というものだ。四社はこの業務提携の目的を、「両者の経営資源を有効活用することで、顧客の利便性向上に資する輸送サービスの構築と事業成長を図る」、「『二〇二四年問題』(ドライバーの超過勤務時間に年九六〇時間の上限規制が課される)の緩和」や「環境問題(カーボンニュートラル)」に貢献するためなどとおしだしている。日本郵便はこの提携による年間取り扱い物数の増加を、ゆうメールは現在の約三一億通から三九億通へと二五%増え、ゆうパケットは現在の五億通から八億通へと約六〇%増加すると見込んでいる。
 この提携をもちかけたヤマト運輸は、「二〇二四年問題」を目前にして、拠点間の輸送を担当するトラックドライバーの確保が困難になり、さらに「宅急便」の配達と営業を担うセールスドライバーの長時間労働が問題になることから、薄型小物荷物(メール便)の配達をとり止め、より利益率の高い小荷物分野(「宅急便」)に集中することを目論んでいる。「DM便」や「ネコポス」として取り扱っている薄型小物荷物の営業・集荷は継続してセールスドライバーにおこなわせ、集配業務全体のなかで最も「コスト」がかかる配達作業を日本郵便に下請け≠ウせて、より多くの利益を確保することを策しているのだ。ヤマト運輸は、長年目の敵≠ノしてきた日本郵便の郵便物のみならずゆうパック・ゆうパケット・ゆうメールが減少する苦境を見越して提携≠もちかけたのだ。

 取扱個数拡大に狂奔する経営陣

 郵政労働者に強いられる過酷な配達労働


 郵政労働者にとっては、ただでさえ人員不足の職場で、さらなる極限的な労働強化を強制されるものではないか。今、全国の職場では経営陣にたいする労働者の怒りが沸騰し渦巻いている。なにが「経営資源の有効活用」だ! われわれ労働者をもっと極限まで酷使しようということではないか! 冗談ではない! ゆうメール(定形外郵便物と同等の大きさ、郵便法上の信書ではなく荷物扱い)や追跡入力が必要なゆうパケットが増えるということは、集配労働者はたんに物数が増えるという以上の過酷な労働を強いられるのだ。

 JP労組本部の協力を弾劾せよ!

 JP労組本部は、このヤマトとの業務提携について、「物流をめぐる社会課題の解決に向けた対応だ」などと賛美し、この業務委託によって「一六〇億円程度」の「損益改善が見込まれる」などと経営陣の宣伝文句に添った見解を述べたてている。本部はこの施策がうまくいくかどうかを心配しているだけで、郵政労働者がおかれている過酷な労働実態からも、これから強いられるであろう極限的な労働強化からも浮きあがりきっているのだ。いったいだれの立場に立っているのだ! 本部労働貴族たちは、「事業の成長のための方策を労組として提言する」労働運動路線を基本とし、労使運命共同体思想に骨の髄まで侵されている。
 われわれ戦闘的・革命的労働者は、JP労組本部の反労働者的な対応を弾劾し・のりこえ、極限的な労働強化に反対する闘いを職場深部から創意的につくりだそうではないか! 「二〇二四年問題」への対応≠フ名による、郵便・集配・輸送労働者への犠牲強要をうち砕こう!

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新世紀

The Communist

第326号

2023年9月

最新号紹介



    
「ワグネルの反乱」の真相と深層を抉る



        岸田政権の大軍拡・改憲攻撃を粉砕せよ








 ▼本号の「ワグネルの反乱 揺らぐロシア支配体制」は、六月二十三〜二十四日にかけて起きた事態がプーチンを表看板にしたFSB強権型支配体制の「終わりの始まり」を象徴するものであると喝破している。
 プリゴジンが率いるワグネルの反乱軍はモスクワの手前二〇〇`bまで迫ったところで撤収した。国家安全保障会議書記パトルシェフが仲介役に仕立てたベラルーシ大統領ルカシェンコとの取り引きに応じて、プリゴジンは部隊を撤収させたといわれている。こうした事態とその実体構造を、ロシア支配体制内部の対立と分解を示すものとしてえぐりだしているのだ。
 さらに本論文は、ロシア労働者人民に熱烈に訴えている。「プーチンを表看板としたFSB強権体制は、破産国ロシアの救世主などではない。権力者と特権支配層への怒りにもえて<ウクライナ侵略戦争反対―FSB強権型支配体制打倒>の闘いをまきおこせ」と。
 ▼第六十一回国際反戦集会にむけた海外の諸団体へのアピール「米―中・露激突下の核戦争の危機を打ち破る反戦闘争を!」は、FSB強権型支配体制そのものを内部分解に追いこんだ戦うウクライナ人民と連帯し、今こそ憎むべきロシアの侵略を打ち砕く闘いの全世界的高揚をかちとろうと呼びかける。ここ東アジアにおいても、台湾・北朝鮮を焦点にして米・日―中が激突し熱核戦争勃発の危機が高まっている。全世界の労働者・人民は、米日両帝国主義と中国ネオ・スターリン主義の相互対抗的な軍事行動と核戦力強化に反対し日本でたたかうわれわれと共に、世界をおおう核戦争の危機をつき破る闘いをまきおこそう、と訴える。
 また、本誌前号(第三二五号)に掲載した「ロシアのウクライナ侵略に反対しよう Q&A」の英訳文を掲載した。
 ▼岸田政権はさきの国会において大軍拡二法、原発推進法、改定マイナンバー法、改定入管法などの反動諸法の制定を次々と強行した。この「戦後最悪の反動国会」というべき事態は、日共をはじめとする既成指導部の総屈服によってもたらされた。巻頭の「大軍拡・改憲・安保強化の極反動攻撃を粉砕せよ!」は、既成指導部の闘争放棄を弾劾し、決意もあらたに反撃の闘いを創造しようと呼びかける。
 「岸田政権の反動諸法制定を弾劾せよ」もあわせて検討されたい。
 「反戦反安保・改憲阻止の闘いを! <プーチンの戦争>を打ち砕け」は、さきの国会の終盤時点においてわが同盟がうちだした軍事強国化の総攻撃を粉砕する闘いの指針だ。日共・志位指導部は、立民との「共闘」をはかるために、岸田政権の「悪法制定阻止」の方針から「反安保」を抜きさり、「専守防衛の自衛隊」を実質上容認するまでに変質している。日共の腐敗を弾劾し、大軍拡・改憲阻止の闘いの爆発をかちとれと呼びかける。
 ▼この日共はいま、「安保条約堅持・自衛隊合憲」を「党の綱領的政策」に明記することを要求し「党首公選制」を唱えるにいたった松竹の除名をめぐって、大混乱におちいっている。松竹を処分した志位指導部は「自分の影≠ノ向かって吠え立てる犬」にひとしい、と「日本スターリニスト党の四分五裂」(藤沢浩市)が暴きだす。「日共式『岸田大軍拡反対』方針の反労働者性」(茅ヶ崎洋)とあわせ検討されたい。
 ▼いま岸田政権は、莫大な国家資金を投じて先端半導体の製造工場を国内に建設することに狂奔している。軍事強国化のための産業育成・軍民両用の高度技術開発を「国策」として推進するというこの政権の経済・産業政策を分析しているのが、「軍事強国化と一体の岸田式『新しい資本主義』」(斯波顕太)である。「『DX』と大失業・ギグワーカー化」(飛鳥井千里)は、独占資本家が叫びたてる「DX(デジタル化)」が労働者に大量首切りと貧窮化と新たな電脳的疎外を強いるものであることを暴きだす。「『生成AI』狂騒劇」(竹下徹)もあわせて検討されたい。
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