第2713号2022年4月11日)の内容

<1〜4面>
ウクライナ反戦・反改憲に起て
 「反安保」を放棄する日共をのりこえ反戦反安保闘争を!
 中央学生組織委員会
各地でロシアの軍事侵略を弾劾
 沖縄石川福岡
<5面>
日本製鉄のトヨタ・宝山鋼鉄提訴の意味するもの
<6面>
Topics 「労使交渉のニューノーマル」!?
デジタル教科書の本格導入に突進する政府・文科省
<7面>
リニア新幹線建設工事の相次ぐ事故を居直るJR東海・政府
<8面>
「支援パレード」で、ウクライナの人々と話して、感じ・考えたこと
週間日誌は7面に掲載

 「解放」最新号






















  


ウクライナ反戦・反改憲に起て


「反安保」を放棄する日共をのりこえ反戦反安保闘争を!

中央学生組織委員会


 プーチンのロシアが放った侵略軍は、ウクライナ人民にたいする残虐無比な殺戮戦を、東部ドンバスのマリウポリ、ハリコフ、南部のオデッサなどにおいて強行している。そして、ウクライナの労働者人民は、このプーチンの殺戮部隊をうち破るために、ウクライナ軍との連携のもとに武器を手にして命を賭して戦いぬいている。
 ロシアの侵攻軍は、数多のウクライナ人民を血の海に沈め、都市を徹底的に破壊し、すでに四〇〇万を超える人民を国外に追いやった。まさにそれは、四二〇〇万の人口と欧州第二の国土をもつウクライナ国家を民族まるごと地上から抹殺するという歴史上かつてない蛮行にほかならない。しかも、プーチンは、ウクライナを引き裂いて分断国家をつくりあげようとしているのだ。
 このプーチンによって開始されたウクライナ軍事侵略という世紀の蛮行によって、二十一世紀現代世界は再び<戦争の時代>へと突入した。
 いっそう熾烈化する<新東西冷戦>のもとでユーラシアの東でも戦争勃発の危機が高まっている。台湾・南シナ海を焦点として米・日の帝国主義とネオ・スターリン主義中国とが政治的・軍事的角逐をいっそう激化させているのである。
 この世界史的な激動のただなかで、日本の岸田政権は、アメリカのバイデン政権とともに対露制裁を強化しつつ、日米軍事同盟をグローバル同盟として強化する策動に狂奔している。そして、アメリカの核兵器の共同保有というかたちで核武装をはたすという野望をたぎらせながら、<軍国日本>の再興をかけた憲法改悪の策動に血道をあげているのが、安倍らネオ・ファシストに羽交い締めにされた岸田政権なのだ。
 全学連のたたかう学生は、いまこそ、ウクライナ反戦の闘いの大爆発をかちとれ! ウクライナ、そしてロシアのたたかう人民と連帯してたたかおう!
 「反安保」を放棄する日共翼下の反対運動をのりこえ、反改憲・反戦反安保の巨大な闘いを創造せよ!
 <新東西冷戦>下で高まる戦争勃発の危機を突き破る革命的反戦闘争を嵐のようにまきおこそうではないか!


1 ロシアのウクライナ軍事侵略と熾烈化する<新東西冷戦>


A キエフ侵攻軍の敗北とウクライナ東部総攻撃

 プーチンのロシアが、ウクライナにたいする軍事侵略にうってでてから約一ヵ月半――「首都キエフなど二日間もあれば陥落できる」などとうそぶいていたプーチンは、ウクライナ政府軍および領土防衛隊・住民組織の連携した猛反撃によって、「キエフ陥落」を狙った総攻撃戦において敗北を喫した。キエフ北部のイルピンをはじめとする諸都市では政府軍と連携した住民組織がロシア侵攻軍を叩きだした。いま街にはウクライナ国旗が翻っている。<占領下においたキエフでゼレンスキー政権を倒して親露派政権を樹立し・もってウクライナ全土をロシアに併合する>などというプーチンの野望は、いまや打ち砕かれたのだ。
 このキエフ総攻撃戦における惨めな敗退に直面したプーチンは、残存している北部の侵攻部隊とグルジアの南オセチアの部隊や民間軍事会社(ワグネル)の部隊などをかきあつめて東部・南部地域での戦闘に集中的に投入している。復讐心をたぎらせているプーチンは、東部・南部の地域をロシアの完全制圧下に組み敷くことを狙って、包囲するマリウポリやハリコフにたいする無差別攻撃を命じているのだ。
 東部地域と南部地域・クリミア半島をむすぶ要衝である港町マリウポリでは、ロシア軍は、食糧・水・燃料などの物資の搬入を阻んで一〇万人以上の市民を飢餓状態に陥れている。このマリウポリで、ロシア軍部隊は、ミサイル攻撃、戦車による砲撃、歩兵による銃撃によってウクライナ人民を虐殺している。このロシア軍に包囲されたなかでウクライナ軍の精鋭部隊が「マリウポリ防衛」のために徹底抗戦をおこなっている。
 そしてこのなかで「人道回廊」などの名で住民たちをロシアのシベリアやサハリンに強制連行しているのが、プーチンにほかならない。まさにそれはかつてスターリンがおこなったのと同じ蛮行ではないか!
 いままさに第二次大戦時の「独ソ戦」における「レニングラード包囲戦」のような残虐な攻撃にさらされているマリウポリ。「二十一世紀のヒトラー」プーチンの焦土作戦によってすべてが完全に破壊されたこの街には、殺戮された人々の亡骸(なきがら)が弔うこともできずに放置されたままにされているのだ。
 こうしたドンバス地域の諸都市にたいする総攻撃に戦力を集中するにあたって、プーチンは、国防省をして「軍事作戦の主要な段階は達成された」「ウクライナ軍の戦闘能力が低下したので、ドンバスの解放という主要目的に集中することができる」などと発表させたのであった。だがそれは、侵攻当初の「キエフ陥落=ゼレンスキー政権打倒」のための軍事侵攻が打ち砕かれたがゆえに、プーチンがドンバスに残存兵力を集中するほかはなくなったことを自己暴露するものにほかならない。
 いまやプーチンは、二〇一四年にロシアが一方的に併合したクリミアとともに東部ドンバスのドネツク州・ルガンスク州を新たにロシアに併合し、さらにウクライナ海軍の拠点であるオデッサを陥落させウクライナ南部地域をもロシアに併合するということに、その目的と作戦を変更したのである。
 あさはかにも「速戦勝利」を夢想したプーチンがキエフ侵攻における敗退を突きつけられたのは、このKGB出身の男が、ウクライナの人民が祖国と民族をまもるために一致団結して侵略軍を迎え撃つことなど思いもよらなかったからだ。しかも、このウクライナ人民が政府軍と一体となって武器を取ってロシア軍にたちむかい、これを撃退することなど予想だにしていなかったからである。
 ウクライナ軍は、気温上昇でぬかるんだ道をノロノロとすすむロシアの戦車部隊にたいして、木立や草むらにひそんでドローンや携行型の対戦車ミサイルなどを駆使して撃破した。莫大な燃料を消費する戦車部隊に燃料や食糧を補給するために駆けつける車両部隊も標的にし攻撃した。司令官の指示がなければ軍事行動一つできないロシア軍は、司令官の多くが携帯電話をウクライナ軍に傍受され位置情報もつかまれ殺害されたがゆえに、その部隊の多くが壊滅に追いこまれたのであった(二十人の司令官のうち六人が死亡)。こうしたウクライナ軍の攻撃は、領土防衛隊に入隊した人民および武装住民組織などのレジスタンス部隊の援護なしには決して実現されなかったのだ。
 プーチンは追いつめられている。すでに戦死者は二万人にもおよび、戦費も一日二・五兆円にのぼり国家財政は破綻寸前になっている。そして何よりも米欧による経済制裁によって労働者人民の窮乏はいっそう深まっているのだからである。
 このなかでプーチンは、「反戦・反プーチン」のうねりがひろがることを怖れて、「戦争の真実」を伝えようとする報道機関にたいする徹底的な弾圧やSNSの遮断などに狂奔している。そして、子供たちの避難先であった劇場をロシア軍が攻撃したことも「ウクライナ過激勢力の仕業」などと描きだすフェイクニュースを連日たれ流しているのだ。だがしかし、プーチンが放ったロシア軍に殺戮された数多のウクライナ人民の亡骸を隠しとおすことなど決してできはしない。
 「偉大なロシアの復活」という野望をたぎらせて世紀の蛮行に踏みきったプーチンに未来はない。キエフへのさらなる無謀な前進も、ウクライナから去りゆくという後退も、プーチンには無惨な敗北のうえに戦争犯罪人として歴史の裁きをうけるという奈落しか待ってはいないからだ。
 そうであるからこそプーチンは、東部ドンバスおよび南部の地域のウクライナ人民を殺戮しつくし完全に制圧しロシアのもとに併合するまで、この悪逆無道な<プーチンの戦争>を続けようとしているのだ。
 このプーチンは、「停戦協議」でゼレンスキー政府の代表が「NATO加盟」を断念する代わりに「NATOに代わる安全保障の枠組み」(米・英・仏と中国・ロシアなどで構成する枠組み)を提案したことにたいしても、「機は熟さず」などとほざきながらこれを時間稼ぎのためにのみ利用し、その時間的猶予のうちにロシアの支配地域を東部から南部オデッサまで一挙的に拡大することをたくらんでいるのだ。
 このプーチンにたいして、ゼレンスキー政権もまた、「ロシア軍の全面撤退」を熱願するウクライナ人民を背にしているがゆえに屈辱的な妥協をすることはできず「徹底抗戦」を貫くにちがいない。
 明らかにロシアのウクライナ侵略戦争は泥沼化・長期化することは必至である。このなかで追いこまれれば追いこまれるほどプーチンは、生物・化学兵器や小型核兵器をウクライナ攻撃で使用する衝動を強めていくであろう。それは、間違いなく熱核戦争としての第三次世界大戦の勃発の引き金になるにちがいないのである。

<プーチンの戦争>の現実的・歴史的背景

 いままさにウクライナ人民を血の海に沈めている<プーチンの戦争>――それはもちろん、直接的には、二〇一九年に登場したウクライナの大統領ゼレンスキーが「NATOへの加盟」の志向を表明したこと、そしてこのNATOへの加盟が実現するならばモスクワの目と鼻の先にミサイルが配備されること、これにたいするプーチンの危機感と焦燥感にもとづくといえる。
 プーチンは二〇一四年、クリミア半島を力ずくでロシアに組みいれたのであったが(このことのゆえに、その後のウクライナの権力者はNATOとの関係を一挙に強化したのであった)、このクリミア半島のロシアへの併合にたいして、NATO加盟諸国は経済制裁をおこなっただけで、併合を実質上は黙認したのであった。
 まさにこの欧米の対応を見て、ドンバス地方(ドネツク州・ルガンスク州)に触手を伸ばすために親露勢力にテコ入れしウクライナ政府軍との内戦を演出してきたのが、プーチンであった。
 そして、われわれが終始一貫して「暗黒の世紀」として暴きだしてきているように、「一超」帝国アメリカの衰退と米中対決時代への転回、さらに米―中・露の新東西冷戦の激化のなかで、米・日・欧の帝国主義がアジアの東の「台湾問題」への対応にその力を集中させ、かつインド太平洋地域での「米中覇権争い」に狂奔しているまさにその間隙をついて、プーチンは今回のウクライナ侵略戦争の挙にでたのである。
 このことは、ウクライナ侵略戦争の勃発というこの世界史的大事件を、一九九一年のソ連邦の崩壊を結節点的転換とする現代世界史の展開がもたらした現局面としてとらえるのでなければならないことをしめしている。
 ソ連邦の崩壊をもって「世界独覇」の野望をむきだしにした軍国主義帝国アメリカは、「自由と民主主義と市場」を掲げて全世界の政治的・軍事的支配と市場経済のグローバル化のために暴虐のかぎりをつくした。
 この「一超」帝国は、軍事的には、ユーゴ空爆(一九九九年)、アフガニスタン空爆(二〇〇一年)、イラク侵略戦争(二〇〇三年)という三つの戦争を強行した。そしてロシアにたいしても、「NATOの東方拡大」によって東欧諸国・旧ソ連構成諸国を切り崩し・それらをNATOに組みこむかたちで、欧州におけるアメリカ主導の支配秩序をロシア国境に迫るようにおし広げてきたのであった。
 このようなソ連邦崩壊以後のアメリカ帝国主義による「NATO東方拡大」にたいして、「アメリカはNATOを一ミリも拡大しないという約束を破った」と非難し・これに断固反対してきたのがロシアのプーチン政権であった。
 このプーチンは、グルジアの「バラ革命」(二〇〇三年)、ウクライナの「オレンジ革命」(二〇〇四年)、キルギスの「チューリップ革命」(二〇〇五年)などを「カラー革命」と呼び、アメリカ帝国主義がロシアの勢力圏を突き崩すために仕組んだ政治工作と見て警戒を強めてきた。
 現にプーチンのロシアは、旧ソ連構成諸国に親米欧の政権が誕生しようとするたびごとに、「大ロシア民族の版図復活」の野望をたぎらせて、グルジアへの軍事侵攻(二〇〇八年)、そしてウクライナのクリミア軍事占領の強行(二〇一四年)などをくりかえしてきたのである。
 現在のプーチンのロシアによるウクライナ軍事侵略は、こうしたソ連邦崩壊以降の「NATOの東方拡大」をめぐる米・露の角逐を歴史的な背景としてもっているのである。
 そしてさらにロシアのウクライナへの軍事侵略をつき動かしているもの――それは、プーチン政権が、ロシア=大ロシア、ウクライナ=小ロシア、ベラルーシ=白ロシアの三つを単一の民族とみなす大ロシア主義にもとづき、これをウクライナにたいして暴力的に貫徹するいがいの何ものでもないといえる。また経済的には、「亡国ロシア」の経済を建て直すために、肥沃な穀倉地帯を抱えるとともに工業が盛んな大国ウクライナをロシアに組みこむことを狙ったものでもある。FSB強権型支配体制のもとでの歪んだ国家資本主義(擬似資本主義)のゆえに経済的な危機にたえずさらされているのがロシアである。石油と天然ガスのほかには、武器や小麦ぐらいしか輸出するものがないロシア経済のこの脆弱性を突破するために、プーチンによってウクライナ軍事侵攻は強行されたのである。
 まさにこのような政治的・経済的な目的を貫徹するために、「NATO加盟」を志向していたゼレンスキー政権を武力でもって打ち倒し・ウクライナをロシアに組み敷くことを狙った世紀の蛮行にうってでたのが、スターリンの末裔にして現代の雷帝を装うプーチンなのだ。
 このプーチンはいま、ロシア革命の指導者レーニンの民族政策こそが「ウクライナを増長させた」などと悪罵を投げつけている。
 レーニンの死後、「一国社会主義」という虚偽のイデオロギーを掲げて革命ロシアを簒奪し、かつ全世界のプロレタリアートを裏切ったスターリン。そして「反スターリン的」とみなした共産党員や人民にたいする大量の粛清をおこない、また六〇〇万人ともいわれるウクライナ人民を餓死に追いやった「ホロドモール」に象徴される、ロシア人以外の諸民族にたいする苛烈きわまる抑圧政策を強行したスターリン。このスターリンがかつてウクライナ・ベラルーシはもとよりカフカス諸国をもロシア連邦共和国に統合しようとしたとき、断固としてスターリンとたたかったのがレーニンであった。
 だが今、かのソ連邦崩壊を「二十世紀最大の地政学的悲劇」と呼んできたプーチンは、このレーニンこそが「ソ連解体」の原因をつくったなどと断罪している。そうすることによって、「資本主義ロシアの復活」をはかったゴルバチョフやエリツィンによって埋葬された革命ロシアを再び埋葬したのだ。


B 熾烈化する米・日・欧と中・露の<新東西冷戦>

「ウクライナ問題」をめぐる米欧日と中露の角逐

 ロシアによるウクライナ軍事侵攻にたいして、アメリカ帝国主義のバイデン政権は、これをロシアのみならず中国にたいする米・欧・日の帝国主義諸国の世界的な包囲網を形成するための契機たらしめようとしている。そればかりではない。アフガニスタンからの惨めな米軍撤退、物価の高騰などによって支持率が低落しつづけ、トランプ人気に水をあけられているみずからの窮地からの挽回をはかるために、ウクライナ問題を利用しているのだ。
 NATO首脳会議(三月二十四日)においては、米欧諸国の首脳によって対露経済制裁の強化が確認されるとともに、アメリカの主導のもとで対ロシアの「前線」となるバルト海から黒海までの八ヵ国にNATOが戦闘部隊を置き・かつそれを増強することが決定された(エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドに加えて、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア)。
 これをもつうじてバイデンは、欧州諸国からの「兵とカネ」の拠出を増大させるかたちでNATOをば対露の軍事同盟として再構築する道筋をつけることに奏功したかに見えた。だがしかし、「世界大戦は起こさない」などとうそぶきつつ・ウクライナ政府がもとめる「飛行禁止区域の設定」を頑として拒絶しつづけているアメリカ権力者と、多くの避難民をうけいれているポーランドを筆頭にウクライナへの「平和維持軍」の派遣をもとめる旧東欧諸国権力者との政治的亀裂が、はやくも露わとなっているのだ。
 こうしたなかで、ロシア国防省がおこなった三月二十五日の「第一段階の特別軍事作戦の終了」という発表を区切りとして中国の習近平政権は、侵略国ロシアにたいする露骨な擁護姿勢をむきだしにして、「対ロシア制裁反対」と「ウクライナの即時停戦と対話の継続」の旗を公然と掲げてインドをはじめとしてアフリカ・中央アジア・東南アジア諸国にたいする外交攻勢に猛烈にうってでている。
 そして、この中国の外相・王毅のインドへの電撃的訪問(三月二十五日)が露払いとなるかたちで、ロシアの外相ラブロフのインド訪問(四月一日)も実現された。この外相会談では、ロシアからのインドへの安値での石油輸出の拡大にかんして協議を開始することが合意されたのである(ロシアはインドに、ドルではなくインド通貨ルピーでの取引を提案)。
 このインド訪問によって中国権力者は「対ロシア制裁」の国際的な陣形に風穴を開けるべくたちまわった(中国は、中国独自の銀行間決済網CIPSとロシアのそれとを相互運用することもロシア側に提案している)。
 けれどもそれは同時に、インドを対ロシア包囲網に組みいれるというアメリカの追求に横やりを入れることによって、対中国包囲網としてつくりだされているクアッドにおける米・日・豪とインドとの政治的連携を突き崩すという中国権力者の政治的目的にもとづくものなのだ。
 こうしてロシアのウクライナ侵略によって街が灰燼と化し数多の人民が殺戮されているこのときに、ロシアを擁護する中国とアメリカとは、酷たらしいまでの政治的な駆け引きをエゴイスティックにくりひろげているのである。

台湾・南シナ海をめぐる米中の激突

 こうしたロシアとの連携を強化するとともに、中国の習近平政権は、バイデン政権がウクライナ問題への対応に力を割かざるをえないこのときを狙って、米・英・豪のAUKUSと日米軍事同盟を連結するかたちでのアジア版NATOの構築に反対する気運をつくりだすために、ASEAN諸国にたいして「アジアへの冷戦思考の持ち込み反対」の旗を掲げた政治的な攻勢を強めている。
 その裏面で中国政府は、南シナ海の軍事拠点化にふまえて西太平洋への軍事的進出の足がかりをつくりだすために、みずからは南シナ海の南沙諸島の三礁(ミスチーフ礁・ファイアクロス礁・スービ礁)に軍事要塞(ミサイルや航空機の格納庫・レーダー施設を擁する)を完成させるとともに、オーストラリアの北側に位置するソロモン諸島の政府とのあいだで中国海軍艦船の寄港を認める「安保協力の枠組み合意」を締結する動きを強めているのだ。
 そして、バイデンに「台湾関係がうまく処理されなければ両国関係に破滅的な影響をおよぼす」と警告を突きつけたオンラインでの首脳会談(三月十八日)のその日に合わせて、国産空母「山東」を台湾海峡の金門島付近を航行させるというデモンストレーションをおこなったのが習近平であった。
 まさにこのように「台湾統一」の野望をたぎらせている習近平の中国による台湾・南シナ海における軍事的攻勢にたいして、アメリカ帝国主義のバイデン政権は、日本帝国主義の岸田政権をしたがえて沖縄周辺での日米共同軍事演習の連続的な強行で対抗している。
 そして、いまや反米国家連合を築きつつある中国・ロシア・北朝鮮。これらの諸国家にたいして、アメリカが軍事的即応態勢をとっていることを見せつけるために、バイデン政権は、米海軍第七艦隊のロナルド・レーガンを中国・北朝鮮の喉元に位置する黄海にまで侵入させるという軍事的な威嚇行動をおこなっているのである。
 このように東アジアにおいても、台湾・南シナ海を焦点として、米・日と中国との政治的・軍事的角逐が激化しているのだ。まさに世界の覇者の座をかけての米中の冷戦的激突はいっそう熾烈化しているのである。


2 憲法改悪・日米軍事同盟強化への突進


A ネオ・ファシズム反動攻撃をうちおろす岸田政権


B 「憲法九条を生かした平和外交」宣伝に狂奔する日共中央の腐敗と全学連の闘い




3 ウクライナ反戦・反改憲・反安保の闘いに起て


A 学生戦線から闘いを創造せよ!

 (1)全学連のたたかう学生諸君!
 われわれは、プーチンの世紀の蛮行をまえにして、日本政府に「憲法九条を生かした平和外交の推進」を請願するにすぎない日本共産党翼下の反対運動をのりこえ、<ロシアのウクライナ侵略戦争反対>の反戦闘争を日本の地から断固として創造しようではないか。新歓期の全国のキャンパスからウクライナ反戦の闘いの巨大なうねりをまきおこせ!
 いまウクライナ各地でロシア軍の無差別攻撃によって数多の人民が虐殺され、そしてウクライナ人民は兵士とともにロシア軍への血みどろの戦いに身を投じている。この現実を眼前にして、プーチンへの憤激もウクライナ人民への共感の一かけらさえもなく、プーチン政権およびソ連共産党との区別だてに血眼となっているのが、日共の志位指導部にほかならない。
 いうまでもなく、プーチンのさしむけた軍隊によっていま虐殺されているのはウクライナの労働者人民である。そしてこの侵略をはね返そうと命を賭して戦っているのもウクライナの労働者人民である。たとえそれがたんなる「反戦・反プーチン」意識に・しかも永い歴史のなかで心の中に刻みこまれた民族意識にもとづくものであるのだとしても、いやまさにそうであるからこそ、このウクライナ労働者人民の立場にわが身を移しいれることは、ウクライナ侵略戦争問題と対決し肉迫するための出発点なのだ。この現実的ヒューマニズムとしてのプロレタリア・ヒューマニズムを欠如したままになされる一切の評論など、それじたいが害毒でしかないのだ。
 肉親や友人が殺されながらも命をなげうって祖国と民族をまもるためにロシア軍と戦うウクライナ人民。この彼らに心も動かず共感することもできない代々木「共産党」は、そうすることによって死滅していることを自認したのである。
 彼らの頭の中を占めているものは、自己保身でしかない。先の衆院選での大惨敗に続いて三ヵ月後に迫った参院選でも敗北してしまうならば、「野党と市民との共闘」は最後的に凄絶なパンクをとげ、「解党の危機にあえぐ創立百年」を迎えることに怯えているのだ。まさにそれゆえに彼らは、党消滅の危機ののりきりをはかるために、「ソ連共産党は社会主義とは縁もゆかりもない覇権主義だと断固反対を貫いたのが共産党」などという真っ赤な嘘をたれ流しつづけているのだ。
 だが、醜悪なゴマカシはやめよ。一九五六年、ハンガリーでソビエトを結成して起ちあがった労働者人民とこれにたいするソ連軍のタンクによる血の弾圧にたいして、死のような沈黙を決めこみ、モスクワや北京にならってソ連の弾圧を支持したのが、代々木官僚どもであった。そしてその後も、一九七九年のソ連のアフガニスタン侵略にたいしては、侵略の直前に日・ソ両共産党の「共同声明」を確認していたがゆえに、二週間の沈黙の後になって「同意することはできない」とつぶやいたにすぎなかったのも彼らであった。こうしたみずからがくりかえしてきた反労働者的な犯罪の数々を消しさろうと躍起となればなるほど、われわれは、彼らもまたスターリン主義ソ連邦の巨悪に加担してきたネオ・スターリニストにほかならないことをあますことなく暴露する弾劾の矢を放ってやらねばならない。
 わが反スターリン主義運動は、一九五六年のハンガリー革命とこれにたいするソ連軍による圧殺という歴史的事件に「共産主義者としての主体性」をかけて対決した同志黒田寛一によって創造された。いらい六十五年間にわたって、スターリニスト・ソ連邦が反労働者的な犯罪をくりかえすたびに、これと対決したたかってきた。
 アンチ革命ゴルバチョフによるソ連邦の解体にたいしても、この革命ロシアの埋葬を弾劾して闘いを創造した。以来、この「世紀の逆転」を再逆転するために、われわれはたたかってきた。
 そして、エリツィンの後継として登場したプーチンが「シロビキ」とよばれる元情報機関員や軍人や治安機関員や縁故あるものを石油会社などの国営企業に送りこみ国有財産を簒奪してきたこと、そしてうちかためたFSB(連邦保安局)強権型支配体制のもとで旧ソ連圏諸国やシリアにたいして暴虐のかぎりをつくしてきたことにたいしても一貫してたたかってきたのだ。
 われわれ革命的左翼は、「大ロシアの復活」という野望のためにウクライナ民族そのものを地上から消しさるジェノサイドに狂奔するプーチン、この世紀の犯罪人にしてスターリンの末裔たるプーチンを絶対に許しはしない。レーニンの民族政策に「ウクライナを増長させた」などと悪罵を投げつけることで、再び革命ロシアを冒涜し埋葬したことを怒りをこめて弾劾するのでなければならない。
 わが日本の反スターリン主義革命的左翼と全学連のたたかう学生、革命的・戦闘的労働者は、この日本の地において、日共翼下の平和運動をのりこえ、ロシアによるウクライナ軍事侵略に反対する闘いを総力をあげて推進し、さらにこの闘いを国際的に波及させるために奮闘しようではないか!
 (2)われわれはこの闘いのなかで同時に、ロシアの労働者人民に訴えかけなければならない。
 プーチンは、ロシア軍によるウクライナ人民の大量殺戮を「ネオ・ナチからの解放のため」などと正当化している。まさにそれが正真正銘のデマゴギーであるにもかかわらず、これに唱和しているのがロシア共産党なのだ。ロシア人民は、官憲を動員した暴力的な弾圧をもはね返して、ロシア軍のウクライナ無差別攻撃を阻止する闘いに起て!
 プーチンを頭にするFSB強権体制を打ち砕くことなしには、ロシアの労働者人民には、戦争と暗黒支配とソ連崩壊直後のような経済的な奈落しか待ってはいない。
 いまこそ、ロシア人民は、革命ロシアを埋葬したスターリン主義者とその末裔どもの犯罪を弾劾し、ソ連邦の国有財産を簒奪し勤労人民を賃金プロレタリアに突き落としてきたプーチンら支配者どもに創意工夫をこらして反撃せよ!
 ロシアの人民よ。「悲惨なロシア」を突破する道は、「スターリン時代の偉大なソ連邦」への郷愁を抱き・その復活を願うことにあるのでは断じてない。スターリン主義の反マルクス主義的な本質にいまこそ目覚め、プーチン政権打倒の闘いに起ちあがることこそが、暗黒のロシアを未来に向かってきりひらいてゆくのだ。
 ロシア軍の兵士はその銃口をプーチンに向けよ!
 すべての労働者人民は、ソビエトを結成して革命ロシアを実現したあのロシアの労働者・農民・兵士たちのように、ウクライナ人民と連帯してたたかおうではないか!
 (3)そしてわれわれは、ロシア軍にたいしてたたかうウクライナの人民に訴える。
 現代の皇帝プーチンの姿にスターリンを重ね合わせながら、侵略軍を打ち砕くために決死の闘争をたたかいぬいているウクライナ人民よ。スターリンいらいのソ連邦によって筆舌に尽くしがたい苦しみを味わわされてきたウクライナの人民よ。アゼルバイジャン軍の副司令官が「プーチンはこの戦争に勝てない。なぜならばウクライナは全国民が団結しているからだ」と言うように、プーチンの戦争を打ち砕く真の根源的な力はウクライナ全人民の団結にある。全人民がうって一丸となってプーチンの戦争を打ち砕け! ロシアで反プーチン闘争をたたかう労働者人民と連帯し、「プーチン打倒」を呼びかけたたかおうではないか。
 重ねて呼びかける。ウクライナ人民の脳裏と体に憎悪とともに刻みこまれている「コミュニズム」の正体とは、ニセのマルクス主義としての血塗られたスターリニズムにほかならない。いまこそ「社会主義」ソ連邦の反労働者的な本質にめざめ、そしてまたウクライナを見殺しにしている米欧帝国主義の階級的本質にも目覚めよう。
 ウクライナ労働者人民は、みずからが進むべき道が、ロシア人民と連帯して、いま一度一九一七年のあのロシア・プロレタリア革命によって実現した「ソビエト共和国」を樹立することのなかにあることを自覚し決意して、いまこそ前進しようではないか!

 わが同盟は、このような呼びかけをウクライナ反戦の闘いのただなかで、ウクライナの、そしてロシアの人民に向けて発してたたかっている。われわれは、二月二十四日のロシアのウクライナ軍事侵攻に際して、その三日後に緊急声明を掲載した『解放』号外を――和文だけでなくロシア語版・英語版をも作成――ウクライナおよびロシアの人民に向けて断固として発表した。
 このような呼びかけを、ロシア軍にたいする血みどろの戦いを続けているウクライナの人民に、そしてプーチンの戦争に反対する闘争を官憲の暴力的弾圧をうち破りつつたたかうロシアの労働者人民に発しているものは、世界でもただ一人わが反スターリン主義革命的左翼いがいには存在しない。
 われわれが日本の地からこうしたウクライナ人民への呼びかけを発したのは、ウクライナにおいて戦う人民の立場にわが身を移し入れつつ、ロシアの侵略といかに戦うか、そして何をめざしていくべきかという方向性をさししめすためにほかならない。ウクライナ人民とともにたたかう立場に立脚することによってはじめて、たたかう人民にスターリン主義の反マルクス主義性と帝国主義のブルジョア階級性への自覚を促し、たたかう戦列を階級的質的に高めていくことも可能となるのである。
 これがまさに内在即超越であって、こうした内在即超越の論理にもとづいてはじめてウクライナ人民への呼びかけの内容は明らかにすることができるのである。
 われわれ反スターリニズム革命的左翼は、こうしたわれわれの訴えを、かつてソ連邦のもとにあったウクライナの、そしてロシアの人民のなかになんとしても届け、彼らとの真のプロレタリア的な連帯を創造してゆくのでなければならない。それこそが、「暗黒の二十一世紀」をプロレタリア革命の世紀に転じるためにたたかっているわれわれの任務なのだ。
 いまこそ、全学連のたたかう学生、戦闘的・革命的労働者は、ロシア軍にたいしてレジスタンスをたたかうウクライナ人民と連帯して、全国のキャンパス・職場からウクライナ反戦の闘いの巨大なうねりを創造しようではないか!


B <米中冷戦>下の戦争勃発の危機を突破する反戦闘争を推進せよ!

<軍国日本>再興のための憲法改悪を絶対に阻止せよ

「日米グローバル同盟粉砕」の闘いに起て



C 一切のネオ・ファシズム反動攻撃を粉砕せよ!

 われわれは、岸田政権による「経済安全保障推進法」の制定を阻止する闘いを創造するのでなければならない。
 その核心的な内容は、「官民連携での先端技術開発の促進」「技術流出防止のための特許の非公開化」「半導体などの特定重要物資の指定と供給網の構築」、「基幹インフラ事業の事前審査と機密漏洩への罰則導入」などである。
 こうした「経済安保法」を岸田政権が制定しようとしているのは、「権威主義国家」とみなした現代中国が巨額の国家資金を投入して「軍民融合」での最先端技術開発をおしすすめていることに対抗して、バイデンのアメリカとともに「経済安全保障」のための共同の取り組みをおしすすめようとしているからである。
 こうした「経済安全保障」のための策動は、経済版の日米2プラス2を司令塔として日米一体でおしすすめられているものであって、日米軍事同盟の強化にもとづく日米両国家による対中国の戦争準備策動とかたく結びつけられているのだ。
 同時にわれわれは、こうした「経済安保法」の国会審議の裏面ですすめられている「中国のスパイ摘発」のための治安・諜報部門の日米一体化の策動が、日本型ネオ・ファシズム支配体制を一挙的に強化するものであることをも暴露するのでなければならない。
 われわれは、「経済安保法」の制定に反対する闘争を<日米グローバル同盟反対><経済の軍事化反対><日本型ネオ・ファシズム支配体制の強化反対>の旗幟を鮮明にして断固として創造するのでなければならない。

 すべての全学連のたたかう学生諸君! 労働戦線で首切り・合理化に反対してたたかう労働者とかたく連帯して、日共指導部による闘争の議会主義的歪曲をのりこえ、「ウクライナ反戦」「反改憲」「反戦反安保」の闘いを総力で創造しようではないか!「経済安全保障法」の制定をはじめとする一切のネオ・ファシズム的な攻撃を粉砕する闘いに起て! ウクライナ軍事侵略と米・欧・日の対露経済制裁とによって拍車がかかっている狂乱的な物価高騰に反対する政治経済闘争をも推進しようではないか!
 こうした一切の諸闘争を結びつけつつおしすすめ、労働者階級・学生の階級的に団結した力で岸田日本型ネオ・ファシズム政権を打倒することをめざしてたたかおうではないか!
 全国のたたかう学生は新歓期のキャンパスから、新入生とともに闘いを創造せよ!
(二〇二二年四月三日)

 〔付記〕
 四月三日、ウクライナ政府は、ウクライナ軍が解放したキエフ近郊ブチャなどで四一〇名のウクライナ人民の遺体が見つかったと発表した。路上では射殺された遺体、民家の地下では拷問された遺体、子供もふくめて手足をしばられた状態でバラバラに切断された遺体が発見された。ロシアの侵攻軍は残虐極まりない殺戮をおこなった。このプーチンとその軍隊による歴史的大罪を断じて許すな!
(四月四日)

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日本製鉄のトヨタ・宝山鋼鉄提訴――その意味するもの

 製鉄業最大手の日本製鉄は、自社の高機能鋼材である「無方向性電磁鋼板」(NO)の特許権を侵害されたとして、トヨタ自動車と中国の宝山鋼鉄(中国の鉄鋼最大手・宝武鋼鉄集団傘下の中核会社)を東京地裁に提訴した、と発表した(二〇二一年十月十四日)。日本製鉄は、両社にそれぞれ約二〇〇億円の損害賠償を求めるとともに、トヨタ自動車にたいしてはこの特許権侵害の無方向性電磁鋼板を使用したモーター搭載のEV(電気自動車)およびHV(ハイブリッド車)・PHV(プラグイン・ハイブリッド車)の製造と販売を差し止める仮処分を申し立てた。
 「鉄は国家なり」を自負する日本最大の鉄鋼独占体経営陣が、ともに日本帝国主義経済に君臨してきた世界トップの自動車独占体を「特許権侵害」で提訴し製造・販売の差し止めさえ求める、いまだかつてなかった事態がここにうみだされたのだ。

以下、見出し

高機能鋼材をめぐる泥仕合

高度技術製品のシェアを侵食される日本製鉄

日本製鉄の要求を突っぱねたトヨタ経営陣


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「ウクライナ支援パレード」で、

ウクライナの人々と話して、感じ・考えたこと



 去る三月五日、東京・渋谷において「ウクライナ支援パレード」がおこなわれ、日本在住のウクライナ人やロシア人、その他世界各国の出身者、さらに日本の労働者・人民など総勢四〇〇〇名が結集した。首都圏のたたかう学生たちはこのパレードに参加し「ロシアのウクライナ軍事侵略弾劾!」の雄たけびをあげた。わが同盟の情宣隊はパレード終了後、日本語、英語、ロシア語の三種類の『解放』号外を配布し、ウクライナ人民、ロシア人民、そして日本と全世界の労働者・人民に断固たる檄をとばした。
 以下は、この3・5パレードに参加したたかうとともに、ウクライナ出身者をはじめ各国の人々と討論をくりひろげた全学連の女子学生からの報告です。〔編集局〕

 私は全学連の仲間たちとともに、三月五日に渋谷でおこなわれた「ウクライナ支援パレード」に参加した。パレードには、祖国を蹂躙するプーチン政権に怒りを燃やす在日のウクライナ人をはじめ、ロシア人、エストニア人、アメリカ人など多くの人たちが参加していた。
 彼らとともに私は「Stop war!」と声をあげ行進した。そしてそのただなかで、参加した人たちと討論することができた。ここにその一端を紹介するとともに、彼らと話して私が感じたこと、思ったことを書きたい。

キエフ出身で四十代くらいのウクライナ人女性

 私は彼女に「こんにちは、私は日本の学生です。私はウクライナの人たちの声を日本の人々に伝えたいです!」「プーチンの戦争を止めたい!」とつたない英語で話しかけた。その女性は、私が言い終わるのを待つことなく、激しい口調で怒りに燃えて話してきた。キエフ出身なんだ、と彼女は怒って言ってきた。私が「Putin is terrible!(ひどい)」と言うと「Terrible! Terrible!」と彼女は呼応してきた。
 その後に、私は「プーチンはキエフを侵略している!」と言った。私は本当は、「プーチンはキエフを侵略しようとしている」と言おうとしたのだが、私の英語力の低さゆえに、「侵略している」と誤って表現してしまった。だが、この私の発言にたいして彼女が切り返して言ってきたことに、私は感動を覚えた。彼女は言う、「いや、キエフはまだ侵略されていない! その前で、ウクライナの民衆が止めている!」と。そして、「必ずウクライナはプーチンに勝利しますよ」と何度も熱烈に訴えてきたのだった。
 私は「ウクライナの民衆は勇敢ですね。私もウクライナの民衆と連帯してプーチンと闘いたいです!」とすかさず言った。私は彼女から、プーチンにたいする煮えたぎる怒りや、ウクライナ人が闘って絶対に止めるのだ! という固い決意、ウクライナ人民の闘いへの誇りや確信をビシビシと感じたのだ。
 私が、「プーチンは今ウクライナの民衆を殺している。スターリンと同じように」と言うと、彼女がまた切り返して「そうだ。しかし、ウクライナ人はスターリンにたいして、ずっと闘いつづけてきたんだ!」と言ってきた。そして彼女は怒りに燃えて、さらに語りかけてきた。申し訳ないが、その内容は、ほとんど聞きとれなかった。唯一聞きとれたのは、「language」。推測だが、彼女はスターリンやスターリニストどもが、ウクライナの言語や文化を奪い、ロシア人化を強制してきたこと、またウクライナの農作物を収奪し、数多のウクライナ人民を餓死に追いこんできたことへの怒りを語っていたのだと思う。
 また、私は「プーチンはつねにこの軍事作戦の目的はロシア人を守るため、と言うけど、それも嘘だ。許せない」と言おうとして「Putin always says that the purpose of this attack is……」と言ったところで、瞬時に彼女は「to save Russian people=ロシア人を守る」と憎々しげにくりかえし語ってきた。そして「いつもそうなんだ」と何度も強調して言った。推測だが、彼女の言った「いつも」にはプーチン政権のあいだのことだけでなく、ソ連時代のことも含まれていたのだと思う。彼女は「私たちウクライナ人は、ずっと民族の魂を踏みにじられてきたんだ。それが今も同じなんだ!」と言いたかったのだと思う。
 彼女は続けて、「そしてウクライナ人は闘って、自由を手に入れた」「自由こそがウクライナ人にとって一番重要」「自由を守るために闘っているんだ」と語った。何度も「freedom」と強調して言っていた。「freedom」と言う彼女を見て、私は少し悔しい思いになったが、同時にその自由を手に入れたという思いを直否定するのは違うと思った。ソ連邦の下での圧政の痛みが体に刻まれている彼女にとっては、確かに「自由」はかちとったものなのだ。そうした思いを、どう止揚していくかを考え、ともに闘いたいと私は彼女と話しながら思った。
 しかし、「自由」の大切さについて語りながらも、彼女は次第に怒りを増して話してきた。聞きとれないところも多かったが、米欧などの自由主義を掲げる国々が、まったくウクライナを支援しようとしないことに、彼女は怒っているようだった。そう思い、私は今ならソ連邦崩壊後に普遍的とみなされてきた<自由・民主主義・市場経済>という価値観そのもののブルジョア性を、ウクライナ人民の前に暴きだせる時だと思った。
 以上のように話したところで、私は「話してくれてありがとう! 戦争を止めるために、プーチンを倒すために連帯して闘おう! 私は日本で闘います!」と別れの挨拶をすると、そうだそうだ、一緒に頑張ろう! と彼女は応じてくれた。
 私は、「ウクライナ人はずっと闘いつづけてきた」と言う彼女と話して、ウクライナ人のファイティングスピリッツはすごいものだなと感じた。そのバネにしている価値観は、ウクライナ人の民族的な誇りであり、「自由」であり、共産主義など否定しているのだと思う。民族的な意識をバネにしているのは、まさにスターリンの民族政策によって、「民族」そのものが消滅しかねないほどの危機に襲われてきたからである。また、スターリン主義をいまだわれわれの手で根絶できていないからこそ、西欧の「自由」という価値観が輝いて見えてしまうのである。そう思うととても悔しさを感じる。
 しかし同時に、私は悔しいというだけでなく、ここに光があると感動をもって思う。私のとらえかえしも入るが、彼女は、いわばウクライナ人の不屈の精神≠ノとても誇りをもっている。ウクライナ人は闘う民族なんだ! というような誇りなのではないか? 上から言ってしまえば「民族主義」で片付けられるのかもしれない。スターリン主義の犯罪のゆえに「民族意識」が止揚されずに固定化されているといえるのだと思うが、しかし、他国を侵略してもよいという「大ロシア主義」のような「民族主義」などではなく、「抑圧してくる者をはね返す!」というような意識と言えるのではないか。彼らはそれをバネにして、今プーチンにたいして命を懸けて闘っているのだ。そのためなら命を懸けてもよいとも思うほどに、彼らの体の中に燃え盛っているものなのだ。バネにしているものが「良いのか悪いのか」ではなくて、現に闘っている彼らから出発しないといけないのだ。彼らのバネを生かし、さらにどう止揚するのかを追求しよう!
 私は、本当にこの人たちは何があっても負けないだろうな、そういう血なんだなと確信のようなものを感じる。そして、絶対に連帯できる! とも感じる。私は、勇ましいウクライナの人民と連帯して、プーチン政権を打倒するために闘っていきたい! ウクライナの地に反スタ思想と闘いを根付かせよう! ウクライナの民衆は、必ずや、鋼のように強い反スタ主義者になるに違いないのだ!

二十代くらいのエストニア人の女性

 彼女は民族衣装なのか頭に大きな花輪をつけていた。私が「ウクライナ人ですか?」と聞くと「エストニア」と答えた。私は反射的に、「エストニアの人たちはスターリンによって殺された歴史をもってますよね」と言おうと思い、「Estonian people have the history of……」と言った後に、「Stalin」と一言言った。その途端に彼女は「Yes!!」と返してきた。その後、「プーチンはスターリンのようにひどい」と私が言うと、そうだ! と呼応。最後に、私が「エストニアの歴史とウクライナの歴史は似ている=Estonian history and Ukrainian history are similar(似ている)」と言うと、彼女は私の「similar」を遮って「Same!(=同じ)」と言ってきた。似ているんじゃない、同じなんだ! という思いなのだ。
 改めて痛感したのは、旧ソ連邦の人民のスターリンやソ連にたいする憎しみの強さだ。二十代の人でも、本当にスターリンと一言言うだけで、いや、言い終わらないうちに「そうだ!!」という激しい反応が返ってくる。そして、今のウクライナに自分の国を重ねて見て怒っていることを感じた。

反スタ主義者としての責務や誇りを感じた

 今回私が考えさせられたのは、「コミュニズム」への憎しみをもつウクライナの人々とどう連帯し、反スタ思想で感化していくべきかということだ。私は、私たちが「アンチ・スターリニズム」であることを前面におしだすべきだということを痛感する。
 反スターリン主義運動が、一九五六年に勃発したハンガリー革命に共産主義者としての主体性をかけて対決した黒田さんによって創造されたこと。「米・ソ核実験反対」闘争を創造し、全学連の先輩は「赤の広場」においてもデモを敢行したこと。チェコスロバキア事件、アフガニスタン侵攻、ポーランドの「連帯」への弾圧、チェルノブイリ原発事故……スターリン主義者の数々の犯罪と断固対決し闘ってきたこと。ソ連邦崩壊後、「暗黒の二十一世紀」を覆そうと闘ってきたこと。思想として「アンチ・スターリニズムですよ」ということではなく、物質的に闘いをつくりだしてきたことを熱烈に訴えるべきだ。
 現に、パレードの場で、「コミュニストはダメ」と言っていた二十代くらいの若いウクライナ人女性にたいして、われわれの仲間の一人が「僕たちはアンチ・スターリンのコミュニストなんだ。スターリン主義と闘ってきたんだ!」と言うと、瞬時に彼女は「そう、それはいいことですね!」と反応し、険しい表情が一転して共感の眼差しに変わる瞬間を私は見た。
 ウクライナをはじめとする旧ソ連邦の人々は、体でスターリン主義にたいする痛み、憎しみを感じている。だから、「アンチ・スターリニズム」であることをはっきりさせないと一言も口をきいてくれないような雰囲気だ。
 しかしそれは同時に「アンチ・スターリニズム」ならば、こじ開けられるということだ。世界で唯一、反スターリニズム運動を創造した黒田さんに導かれるわれわれのみができる! そう思い、私は反スタ運動を担うことの歴史的使命や責務と同時に、誇りや喜びを感じる。
 私は、ウクライナ人民とともに命をかけて、スターリニストの末裔・プーチンにたいして闘うなかで、「スターリン主義の本質は何か?」と彼らと熱く討論していきたい。

スターリンの民族政策を徹底的に批判していくぞ!

 私はウクライナの人々にたいして、「ウクライナ社会主義ソビエト共和国」としてウクライナの労働者・人民がロシア革命に合流した、この精神を呼び覚ませと訴えたい。
 しかし、このことをめぐってウクライナの人たちとどのように討論するのが良いのだろうか? ロシア革命当時、ウクライナのとりわけ農村部では、赤軍に最後まで抵抗した人民も多かったと聞く。そのことに――スターリンへの憎しみともあいまって――誇りをもっている人もいるだろう。
 ロシア革命を含めてソ連そのものを、民族が虐げられた歴史だと思っているウクライナ人民が多いと思う。ロシア革命にかんして湧かす感情は、ウクライナの人たちとロシアの人たちとでも違うのではないか。
 そのようなウクライナの人々にいかに反スタ思想を浸透させていくかと考えると、やはり、ウクライナ人民・ロシア人民への呼びかけ〔『解放』号外の緊急声明〕で言われているように、スターリンの民族政策を完膚なきまでに批判するのが肝だと改めて思うのだ。
 プーチンが「ウクライナを増長させた」と言ってレーニンを罵倒していること。スターリンがレーニンの「分離の後の連邦制」という思想を破壊してきたこと。こうしたことを明らかにした号外の訴えは、ウクライナの人たちに絶対に刺さるはずだと思う。ウクライナ人民がなぜ虐げられてきたのか? 皆が主体化し、明らかにしなければならない!

私の決意

 最後に、三月五日のパレードから約一週間後に訪れた驚きの出会い≠ノついて報告したい。私は全学連の仲間たちとともに、三月十一日におこなわれた「ロシアのウクライナ侵略糾弾! 即時撤退を! 新宿大アクション」に参加した。
 その場で、なんと、『解放』号外を「もう読んだ」と言う二十代くらいのロシア人男性が、私の前に現れたのだ! 聞けば、「ウクライナ支援パレード」に参加し、号外をもらったのだという。彼は号外を指さしながら、「これはスターリンに反対している。マルクシストでスターリンに反対しているのはありがたい」と号外を読んでの感想を言ってきたのであった。
 私は、これを聞いて、革マル派の訴えがプーチン政権に怒るロシア人民の胸に刺さりはじめていることを実感した。このような在日のロシアの人々を介して、『解放』号外は、ロシアの地にも届いているにちがいない。われわれの闘いは、芽を吹きはじめているのだ。

 私は、日本の地において、闘うロシア、ウクライナ人民と連帯しウクライナ反戦闘争を断固として創造する決意だ。
 そして、どんなに困難だろうが、何としても、ロシアやウクライナの地に反スタ運動を波及させるために奮闘する!
 ウクライナ人民のなかにコミュニズムへの憎しみを刻み込ませてきたスターリン主義を打倒するのは、われわれ反スタ主義者の責務だ。
 帝国主義打倒! スターリン主義打倒! 全世界の労働者階級・人民の自己解放をかちとるために、ともに頑張ろう!

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各地でロシアの軍事侵略を弾劾


ロシアのウクライナ侵略弾劾!
琉大生の発言に圧倒的共感
3・23 沖縄平和運動センター集会
 三月二十三日、那覇市の「県民広場」において「『プーチンの戦争』を終わらせよう! ウクライナ侵略から撤退を! 平和を求める集会」が沖縄平和運動センターの主催でおこなわれた。琉球大学と沖縄国際大学のたたかう学生たちは、結集した約八十名の労働者とともにロシアによるウクライナ侵略弾劾の怒りの拳をプーチン政権に断固たたきつけたのだ。
琉大生がウクライナ人民との連帯を呼びかける
(3月23日、那覇市)
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「ウクライナ人民と連帯して闘うぞ!」
金大生が労働者と共に奮闘
3・26 石川県平和運動センター集会
 三月二十六日、金沢市の石川県四高記念公園において「ロシアのウクライナ侵略抗議集会」が、県平和運動センターの主催でおこなわれた。金沢大学のたたかう学生は、現代のヒトラー=<vーチンの世紀の犯罪を許さない決意に燃えて、労働者たちとともにプーチン政権にたいして怒りの拳を叩きつけたのだ。
団結ガンバロウで集会をしめくくる
(3月26日、金沢市)
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「プーチンの侵略戦争弾劾!」
わが同盟が反戦の革命的檄
3・21 福岡・築城「日米共同訓練反対集会」
 三月二十一日に福岡県行橋市で、「2022・3・21築城(ついき)基地の日米共同訓練反対集会」が「築城基地の米軍基地化を許さない! 京築(けいちく)住民会議」の主催のもとでおこなわれた。
 わが情宣隊は「築城基地の対中国出撃拠点としての強化反対」「日米グローバル同盟粉砕」を訴え集会を戦闘的に高揚させるために最後までたたかった。そして集会参加者に「プーチン・ロシアによるウクライナ人民の無差別殺戮を許すな!」「決死のレジスタンスをたたかうウクライナ人民と連帯しよう!」「日本の地においてウクライナ反戦闘争を創造しよう!」と訴え結集した労働者・住民の共感をつくりだした。
日米共同訓練を怒りをこめて弾劾する労働者・住民
(3月21日、福岡県行橋市)
  わが同盟が西鉄福岡駅頭でウクライナ反戦闘争への決起を呼びかけ
(3月22日、福岡市・天神)
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