第2700号2022年1月1日)の内容

<1〜5面>

暗黒の21世紀を革命の世紀へ

反スターリン主義運動の怒濤の前進をかちとれ!

<6〜7面>
漫画 初場所千秋楽之圖

<8〜9面>
習近平・中国の究途末路

<10〜11面>
年頭の決意
 沖縄/九州/北陸
 自治体/郵政/交運/情報通信/化学

<12面>
写真特集 2021闘いの軌跡


《お知らせ》 本号は2021年12月27日付にあたりますが、22年1月1日付新年特別号とします。22年1月3日付、同10日付は休刊にします。
 「解放」最新号





























  

暗黒の21世紀を革命の世紀へ

反スターリン主義運動の怒濤の前進をかちとれ!


 
 国会・首相官邸・米大使館に向け進撃する全学連と反戦青年委(2021年10月17日、東京・港区)
 新型コロナ・ウイルスのパンデミックによって一挙に先鋭化した米―中・露の冷戦的激突。戦争的危機の深まりのゆえの各国権力者による暗黒支配の強化。いわゆる「コロナ不況」をのりきるための支配階級による労働者・人民への貧困の強制……。二〇二二年を迎えた現代世界はいま、未曽有の危機に直面している。
 西太平洋においては、「台湾の完全統一」を掲げて政治的・軍事的攻勢を強める習近平の中国と、この台湾を死守するために「台湾有事」を想定しての軍事的威嚇行動をくりかえしているバイデンのアメリカとの軍事的衝突の危機が切迫している。ヨーロッパにおいては、中国との同盟的結託を強めるプーチンのロシアが、ウクライナのNATO加盟を阻止し・その東部地域をロシアの領土に組みこむことを狙って、いまにもウクライナへの軍事侵攻を開始しようとしている。
 こうしていま、ユーラシア大陸の東と西で、米―中・露の冷戦的対立が激化し、その熱戦≠ヨの転化の危機は日増しに高まっているのだ。
 ソ連邦崩壊以降の「経済のグローバライゼーション」を逆手にとってアメリカに伍する「経済大国」へとのしあがったネオ・スターリン主義中国は、没落の一途をたどるアメリカ帝国主義を蹴落として「世界の覇者」にのしあがるために、政治的・軍事的・経済的の攻勢を一気に強めている。今世紀半ばまでに「社会主義現代化強国」へと飛躍し「世界の中華」を復興するという国家戦略、これを実現するために習近平の中国は、「偉大なルーシの再興」をめざすプーチンのロシアと結託して、「一帯一路」の経済圏づくりなどと結びつけつつ、「反米」の国家連合をつくりだす策動に拍車をかけているのだ。
 この習近平中国の挑戦に直面している没落帝国主義アメリカのバイデン政権は、中国との「二十一世紀を決定づける戦略的競争」にかちぬくための「同盟の再構築」という世界戦略のもとに、日米軍事同盟とAUKUS軍事同盟とを中核にして、対中国・対ロシアの軍事的・政治的・経済的包囲網づくりに狂奔している。
 それだけではない。対中デカップリング(分断)政策によって、重要物資(半導体など)のサプライチェーンを・中国を排除して同盟国中心で再構築しようとしているアメリカと、「一帯一路」構想にもとづいて莫大なカネと技術の「援助」をタテにして貧困に直面する後進諸国を抱きこみ従属化させようとしている中国とは、経済的にも分断と対立を深めている。
 まさに、アメリカ帝国主義権力者と中国ネオ・スターリン主義権力者との、世界の覇権をめぐってのこの角逐は、いまや軍事・政治のみならず、経済・技術などのあらゆる領域を包みこんでの激烈な争闘と化している。それゆえにいま、米―中・露による新たな大戦勃発の危険性はいや増しに高まっているのだ。
 こうした二十一世紀現代世界の危機のなかで、労働者階級・人民の怒りは全世界で高まっている。にもかかわらず、それはなお、階級的闘いとして組織されてはいない。
 この日本においては、転向スターリニスト党=日本共産党が、「反安保」も「反独占」も投げ捨てて修正資本主義の党と化し、労働者の闘いを議会主義的・市民主義的に歪めている。そして、ナショナルセンター「連合」を支配する労働貴族は、公然と岸田政権・自民党に抱きつき、日本型ネオ・ファシズム政権を支える労働運動≠ヨと転進した。
 すべての諸君。この現代世界の暗黒を突破しうるのはただひとり、<反帝国主義・反スターリン主義>の戦略に立脚してプロレタリア階級の自己解放のためにたたかっているわが同盟と革命的な労働者・学生だけなのだ。いまこそわれわれは、世界に冠たる反スターリン主義革命的左翼としての真価を発揮して、全世界の労働者・人民の最先頭で奮闘しようではないか!

T 感染拡大の下での革命的労働者と全学連の奮闘

 われわれは本二〇二二年の闘いを前進させるために、まずもって昨二〇二一年にわがたたかう労働者・学生が、コロナ感染拡大下で切り拓いてきた闘いの画期的地平を確認するのでなければならない。

大軍拡・安保強化・改憲攻撃に直ちに反撃

 昨年十月三十一日におこなわれた総選挙において自民党単独で「絶対安定多数」を手中にした岸田政権は、「国民の信任を得た」と称して大軍拡・安保強化と改憲に突進しはじめた。このネオ・ファシズム政権の新たな攻撃にたいして、わが同盟と革命的労働者・学生は直ちに反撃に起ちあがった。
 岸田政権は、日本の軍事強国化と日米グローバル同盟の強化のために、自民党が公約として掲げた「敵基地攻撃能力の獲得」や「軍事費の対GDP比二%以上への引き上げ」などの実現に突きすすみはじめた。そして、自民・公明・維新・国民民主の改憲勢力で衆議院の四分の三を超える議席を占めたことを踏み台にして、憲法改悪にむけた策動を一気に加速した。たたかう労働者・学生は、「野党共闘」の破産に展望喪失となり一切の闘いを放棄した日本共産党指導部をのりこえ、11・3国会前闘争をはじめとする<改憲・大軍拡阻止! ファシズム反対!>の闘いに全国各地で勇躍起ちあがったのだ。
 総選挙では、自民党が「絶対安定多数」を確保し自民党タカ派の別働隊たる真正ファシスト党=日本維新の会が大幅に議席を増やした。その他方で、「保守リベラル」を標榜する立憲民主党と転向スターリニスト党=日本共産党は惨敗した。「中国・北朝鮮の脅威」を煽りたてながら「民主主義政権か共産主義が入った政権かの体制選択選挙だ」と大宣伝をくりひろげた自民党にたいして、枝野の立民は、もっぱら「政権担当能力」なるものをおしだし、「成長か分配か」という岸田の土俵に乗っかったうえで「分配重視」なる代案にもならない代案を対置≠キることに終始した。そしてこの立民に抱きついて、政府・自民党による大軍拡・安保強化・改憲の危険性を暴き反対することも完全に放棄し、ただただ「わが党は危険な党ではありません」などといった弁解に明け暮れ、無惨な敗北を招きよせたのが日共・志位指導部であった。このような彼らの反労働者性をわれわれは徹底的に暴露し弾劾しつつ、この総選挙をつうじて日本型ネオ・ファシズム支配体制が一段と強化されたことへの警鐘を乱打したのである。
 同時にわれわれは、この過程で、ネオ産業報国運動の旗手としての本性を剥きだしにした「連合」労働貴族の犯罪を断固として暴きだした。
 昨年十月の「連合」大会においてJCメタル(金属労協)の右派労働貴族は、「日共との共闘」を護持する立民を主軸として支持するという従来の「連合政治方針」の継続を拒否するために、いっせいに「連合」三役から引きあげた。新会長に選出された芳野は、これら右派労働貴族の意志を体現して、立民の枝野執行部に「日共との協力をやめよ」と迫った。そしてみずからは首相直轄の政府会議「新しい資本主義実現会議」に正式メンバーとして参加し、岸田政権の政策策定に協力することを誓約したのだ。総選挙では、小選挙区の組織内候補をみずから降ろして自民党に議席を明け渡したトヨタ労働貴族を先頭にして、右派労働貴族は各選挙区で「立民支持」を拒否して自民党を実質的に支援するという挙に出た。――このような新たな諸事態にたいしてわが同盟は、「連合」指導部がいまや日本型ネオ・ファシズム政権を支える労働運動≠ノ公然とふみだしたと間髪を入れずに暴露し、すべての労働者・人民にむかって「今こそ『連合』を脱構築せよ」と呼びかけたのだ。
 わが革命的左翼は、発足した岸田政権が開始した改憲と大軍拡・安保強化の総攻撃をうち砕く闘いを、一切の既成指導部の腐敗をのりこえ、<反戦・反安保・反ファシズム>の闘いとして創造してきたのである。

労学両戦線における創意的闘い

 この一年間、コロナ感染拡大下での数波にわたる政府の緊急事態宣言や「三密排除」の規制のもとで、既成指導部は諸々の取り組みを自粛≠オ放棄してきた。このような状況のなかで、わが労働者・学生は、この規制と自粛を食い破りながら縦横無尽に諸活動を展開してきた。
 わが革命的・戦闘的労働者たちは、独占資本家どもによる「コロナ不況」を口実にした解雇・賃下げ・労働強化の攻撃にたいして、これをうち砕く闘いを職場からつくりだしてきた。
 「感染対策」を理由として経営者・当局が「集まるな」「会食するな」などの組合活動への規制をかけてきたばかりではない。「連合」や「全労連」傘下の既成労組指導部は、組合大会さえオンライン開催とし、いっさいの職場活動を放棄した。このように、いわゆる伝統的な組合活動さえも崩されていくのに抗して、たたかう労働者たちは「感染対策」をとりながら創意工夫をして組合員との対面での論議をおこないつつ、分会・単組の会議、職場集会、大衆団交など、組合活動をどしどしとくりひろげてきた。組合活動にオンラインをも駆使したわがたたかう労働者は、オンラインの特性と限界にふまえつつ、組合員に対面での活動の必要性を訴えてきた。
 たたかう労働者は、労働貴族が二一春闘を国難突破のための労使協議≠ノ解消するのを許さず、「大幅かつ一律の賃上げ」の獲得をめざして奮闘した。非正規雇用労働者の雇い止めやシフト削減を許さないためにも全力でたたかった。飲食業界・公共交通などパンデミックのもとで需要が一気に落ちこんだいわゆる不況業種、ここでもわがたたかう労働者たちは労働運動を左翼的に推進してきた。資本家どもは、業績悪化を口実として労働時間延長や諸手当剥奪などの熾烈な攻撃を労働者にうちおろしてきた。これにたいして革命的・戦闘的労働者たちは、労組指導部の闘争放棄を許さず、労働時間延長反対や賃金制度改悪反対・大幅賃上げ獲得の闘いを断固としてつくりだしたのであった。これらの職場において、組合員たちは、わが仲間を先頭にして一致結束して行動し、大幅な賃上げをたたかいとったのである。
 また、医療・介護・保健所などの職場でたたかう労働者たちは、「感染したら自己責任」と叫ぶ病院・施設当局にたいする怒りに燃えて、「いまこそ組合の力を強くして反撃しよう!」と組合員に呼びかけた。これらの職場においては、凄まじい労働強化のゆえに体を壊す労働者も続出した。病院・施設当局の理不尽な対応に怒り相談してきた組合員と、わが労働者たちは膝詰めの論議をおこないつづけた。たたかう労働者たちは組合場面において、組合の諸要求――たとえばコロナ感染症への対応を口実とした労働強化を許さないことや、コロナ感染や濃厚接触の場合の特別休暇を認めさせることなど――をかちとってきたのである。
 革命的・戦闘的労働者たちは、コロナ感染の蔓延下においても、あらゆる産別において、「連合」労働貴族や日共系労組指導部をのりこえて闘いを戦闘的につくりだしたのである。そしてこの闘いをつうじて、わが仲間たちは、革命的労働者の隊列を一回りも二回りも強化し拡大してきたのだ。
 全学連の革命的学生たちも、パンデミック下で闘いの画期的前進をかちとった。たたかう学生たちは、大学当局によるキャンパスの閉鎖とサークル活動の禁止という歴史上かつてない事態に直面した。だが仲間たちは、あくまでも大学キャンパスから原則的に学生自治会運動を自治会員・サークル員を組織しつつ大衆的な規模で創造する、それを媒介にして自治会組織・サークル団体の強化をかちとる、と決意してとりくんできた。たたかう学生は、各大学において、反戦闘争や政府による貧困の強制を許さない闘いを、そして自治破壊に反対する闘いを創意的につくりだした。まさにそれゆえに、たたかう学生が牽引するわが自治諸団体の執行部は、いま自治会員・サークル員から絶大な信頼をかちとっているのだ。
 革命的・戦闘的労働者たち、そして全学連のたたかう学生たちは、職場や学園において、組合員や学生にたいして、パンデミックであらわとなった貧富の格差や、米中冷戦下での戦争勃発の危機などについても、あらゆる機会をとらえて熱っぽく語りかけてきた。「この凄まじい格差を生みだす資本主義とはいったい何か?」「中国の自称『社会主義』とは何か?」「スターリン主義とは何か?」などをめぐって彼らと論議し、コロナ・パンデミックのもとで政府や経営者の対応に憤激して考えはじめた労働者や学生たちを反スターリン主義運動の担い手へと高めるオルグを、いまこの時とばかりに強化してきたのである。
 このように、コロナ感染爆発とそのもとでの政府や当局の規制強化という条件のもとで、これをはねのけ食い破りながら労働運動・学生運動を展開し、それをつうじて革命的戦列を飛躍的に拡大してきたわが闘いの革命性を、われわれは誇りをもって確認しようではないか。

U 米―中・露による戦争勃発の危機

A 台湾・ウクライナを巡る米―中・露の激突

 現代世界はいま、東は台湾、西はウクライナにおいて、まさに戦争前夜≠ニもいうべき危機的状況に直面している。
 昨二〇二一年に中国共産党結成一〇〇周年を迎えた中国の習近平政権は、「中国の核心的利益」と位置づけた「台湾の完全統一」にむけて政治的・軍事的攻勢を一気に強めている。
 北京官僚政府による香港制圧≠眼前にして「中台統一」を拒否することを改めて宣言した台湾の蔡英文政権と、この台湾政府にたいする政治的・軍事的な支援を強めてきた米バイデン政権。これにたいして習近平政権は、「台湾は中国の一部だ」と叫びながら、「台湾独立」の動きを封じこめるために狂奔している。彼らは、「台湾独立勢力が一線を越えれば断固たる措置をとる」と蔡英文政権を恫喝し、台湾の防空識別圏に中国軍機を頻繁に侵入させ、「台湾上陸」を想定した軍事演習をくりかえしている。そして空母三隻体制の構築を急ぎ、数千発の中距離ミサイルを配備するなど、いわゆる第一列島線のみならず第二列島線の内側まで米軍を接近させない軍事態勢の構築を急いでいる。
 この中国と対峙している蔡英文政権は、アメリカの支援をうけて台湾軍の強化に必死になっている。バイデン政権は、「二〇二七年までに中国が台湾に侵攻する可能性がある」と危機感を剥きだしにして台湾への軍事援助をさらに強化するとともに、軍備増強をつづける中国を封じこめる軍事包囲網の構築・強化につきすすんでいる。「AUKUS」という名の実質上の米・英・豪軍事同盟≠創設するとともに、米・日・豪・印の「クワッド」を形成するかたちで、対中国(ロシア)の軍事的・政治的・経済的の包囲網を重層的に構築しようとしている。これらの対中包囲網の中核として、日米軍事同盟を飛躍的に強化しようとしているのである。
 そしてバイデンは、対中・露の政治的包囲網をつくりだすことを狙って、昨年十二月に、血塗られた「自由と民主主義」の旗をふりかざしつつ、台湾政府を招待した「民主主義サミット」なるものを開催した。――自国の人民に残虐な弾圧を加えているフィリピンのドゥテルテやブラジルのボルソナロなどをも招待して開かれたこの会議は、膨張主義≠剥きだしにして新興国・途上国を囲いこんでいる習近平中国にたいするバイデンの焦りの象徴にほかならない。
 ユーラシア大陸の西側では、習近平と連携して対米・対欧の準軍事同盟を形成してきたロシアのプーチンが、「ウクライナへの(NATOの)ミサイル配備はレッドラインだ。その場合には対抗的措置をとる」と宣言し、ウクライナ国境付近に約一〇万人のロシア軍部隊を配置し、「軍事演習」という名の軍事的威嚇行動をくりひろげている。これにたいしてバイデンは、「二〇二二年一月にもロシア軍は一七・五万人に増員してウクライナに侵攻する可能性がある」という情報機関の分析を公表しながらも、ウクライナにロシア軍が侵攻した場合には「厳しい経済制裁をおこなう」けれども「米軍を派遣しない」と言明した。このバイデンの対応をみてプーチンは、二〇一四年のクリミア半島の占領・併合に続いてウクライナ東部のロシア系住民地域に侵攻する衝動を強めているのだ。
 ソ連邦の崩壊を「二十世紀最大の地政学的大惨事」とみなし、旧ソ連構成諸国のNATO・EUへの加盟を「大ロシア」の領地が削りとられた屈辱的事態ととらえているのが、プーチンなのだ。現代のイワン雷帝≠スることを自任し、「大国ロシアの復活」を国家戦略としている彼は、モスクワにミサイルがわずか数分で到達するウクライナのNATO加盟を阻止するために、そしてスラブ民族の兄弟国とみなしているウクライナを「大ロシア」のもとに奪還するために、ウクライナにたいする再度の侵攻を策しているのである。
 このように中・露の権力者どもは、アメリカが「二正面」同時の軍事的対応などなしえないことを見透かしつつ、共謀≠オながら台湾とウクライナの双方で対米の軍事的挑戦を強めているのだ。
 そして対米戦争に勝ち抜くために、中国およびロシアは宇宙空間における軍拡やAI兵器などの開発・配備に狂奔しており、それらの開発競争においてはアメリカを凌駕しつつある。とりわけ、従来のミサイル防衛システムでは対応不能といわれる極超音速ミサイルの開発では、中・露はアメリカに大きく先んじている(北朝鮮が昨秋に発射した極超音速ミサイルはロシアの技術供与によって製造されたものである)。このことに戦慄しているバイデン政権は、核軍事力における自国の優位を死守するために、いま極超音速ミサイルやAI兵器・宇宙兵器の開発をはじめとする戦力増強に血道をあげているのである。
 また、石油パイプラインなどの重要インフラのシステム破壊や政府・軍中枢からの情報の盗み取りを狙ったサイバー攻撃、相手の国家・社会を攪乱するためのフェイク情報の撒布などのいわゆるグレーゾーン戦争≠ェ、米―中・露のあいだで熾烈に展開されている。このような軍事的戦闘の形態をとらない見えない戦争≠ェ、すでに米・イスラエルや中・露のサイバー軍や諜報機関によって激烈に展開されているのである。こうした現代における戦争の形態変化のゆえに、いまや米―中・露は<プレ戦争状態>に突入している、とさえいえるのだ。
 それだけではない。アメリカ・EU・日本や中国・ロシアなどの権力者はいま、「経済安全保障」の名において、軍事技術と結びついた半導体などの高度先端技術やレアメタルなどの希少資源の囲い込みをすすめると同時に、相手に自国企業への依存度を高めさせたり、大規模な投資や融資で縛りつけるなどの手段を使って、相手国の政府や企業を従属化するための経済的術策(いわゆる「エコノミック・ステートクラフト」)を行使しあっている。この「経済安保」=「エコノミック・ステートクラフト」策の応酬は、サイバー戦争や情報戦争を含むところの米―中・露の軍事的・政治的角逐を、さらにいっそう複雑化させ激烈化させているのである。
 このように中国・ロシアとアメリカとは、相互対抗的に軍備増強と軍事的包囲網づくりをおこないながら、それぞれに軍事的威嚇やサイバー攻撃をしかけあい、「経済安保」の名による経済的攪乱攻撃を互いにくりかえしている。まさにそれゆえに、現代世界の戦争的危機はいや増しに高まっているのである。

B 「社会主義現代化強国」に向けて突進する習近平中国

 中国・習近平政権はいま、ロシア・プーチン政権と連携しながら、SCO(上海協力機構)を中心にして、反米国家連合を形成することに血道をあげている。九月にはイランのSCO正式加盟にむけて協議を開始した。米軍が撤退したアフガニスタンで復活したタリバン政権を、彼らは――ウイグル族のイスラム原理主義勢力を擁護しないことを条件として――ロシアとともに支えている。北京官僚は、米軍がアフガニスタンにつづいて早晩イラクからも撤退することを見越して、中央アジアから南アジア、中洋をみずからの勢力圏として一気に取りこもうとしている。
 さらに習近平政権は、バイデン政権が対中包囲網に取りこもうとしているASEAN諸国――中国の周辺国であり、シーレーンと「一帯一路」の要衝をなす地域――を、カンボジアやラオスを先兵として切り崩し抱きこむ追求を強めている。また中米の左派政権やアフリカなどの軍事ボナパルチスト政権にたいしても、米欧による「専制主義・人権抑圧」批判を逆手にとりつつ、経済的・軍事的の援助を手段にして、次々に反米連合に囲いこんでいるのだ。
 中国政府は、こうした反米包囲網づくりを「一帯一路」構想にもとづく中国主導の経済圏づくりと結びつけてすすめている。彼らは、アメリカン・グローバライゼーションのもとでの凄まじい収奪によって、もっぱら貧困と環境破壊だけを強制されてきた途上国・後進国にたいして救済者≠ニして立ち現れ、国家的な資金援助をバックとして中国企業の進出を促進し、インフラ建設などをすすめてきた。もってその国の経済に対中国依存の構造を刻みつけるとともに、それを手段としてこれらの国を「友好国」として抱きこむ追求に狂奔してきたのだ。
 二〇二〇年六月の国連人権理事会において、中国が香港「民主化」運動を弾圧するために制定した「香港国家安全維持法」の施行を批判した国は八十ヵ国中わずか二十七ヵ国にとどまり、中国を支持する国が五十三ヵ国に上った。その大半は、「一帯一路」経済圏に参加している国である。もはや国連およびその諸機関では、「内政干渉反対」をスローガンとして掲げる中国・ロシアを支持する国が多数派≠形成しているのだ。
 だが、この「一帯一路」構想にもとづく経済圏づくりの追求は、いまやいたるところで相手国の権力者や人民の反発を惹起している。
 中国政府のやり方は、相手国がとうてい返済できないほどの借款を供与し、返済できなくなるのを待って港湾や空港などの使用権を奪いとる、といったあくどいものだ(いわゆる「債務のワナ」)。昨年十二月三日に開通したラオスの南北縦貫(中国領内から首都ビエンチャンまで)の高速鉄道の建設もまた、そのようなものである。その事業費の七割は中国が出資し、残りのラオス負担分もその大半は中国系銀行からの借入金である。対外債務がGDPの五割を超えているラオス政府の財政状況を見透かしておこなわれたこの借款による建設プロジェクトは、あらかじめ返済不能に追いこんでの接収・支配を企むものなのである。しかも中国政府がこうした「支援」をおこなうばあいに、相手国との契約書には、中国側が政治的理由で契約を一方的に解除できる条項が盛りこまれている。中国政府は、このような条項を盾にとって、その国の政府が台湾と国交を結んでいる場合には即時の断交を迫ったり、米欧が主導する中国を非難する国連決議に反対することを強制したりしているのだ(二〇一六年以降にアフリカ・中米・太平洋の八ヵ国が台湾と断交して中国と国交を樹立した)。
 このような中国の「一帯一路」経済圏づくりは、他国にカネを貸し付けて中国系企業が経済的権益を確保するだけでなく、巨額の借款を手段にしてインフラを分捕り、相手国を属国化するという意味で中国式のネオ植民地主義≠ニいうべきものにほかならない。
 いまやこうした悪辣な手法と中国系企業の大量進出にたいして、各地で労働者・人民の「中国化反対」のデモが巻き起こっている。これに押されて「一帯一路」に一度は引きずりこまれた各国の政府権力者もまた、反発を強めているのである。

「自立・自彊」を掲げての経済危機ののりきり

 中国の「世界の工場」としての地位も揺らぎはじめている。これまで中国の労働力と消費市場に多くを依存してきた米欧日の製造業諸企業が、中国国内の賃金上昇と米・中対立の激化を条件にして、東南アジア諸国やインドなどの南アジアに製造拠点を移転しはじめている。このことを基礎として、帝国主義各国政府はこぞって、これまでの過度な中国経済依存≠ゥらの脱却をはかる対外経済政策を採りはじめた。
 いわゆるデカップリング政策をうちだしたアメリカ政府だけではない。これまで中国との経済協力を重視する対中政策をとってきたドイツなどの欧州諸国政府もまた、中国を「ライバル」とみなした「インド太平洋戦略」を相次いでうちだし、対中政策を転換しはじめた。中国がロシアと結託して欧米主導の国際秩序を脅かしていること、とりわけウクライナにたいしてロシアが軍事侵攻を開始しかねないことに危機感を募らせているのが、欧州諸国の権力者である。インド太平洋地域に植民地主義時代の権益をなお残している英・仏の権力者だけではない。EUのなかでは自動車をはじめとして最も中国市場に巨大な権益をもっているドイツの権力者、彼らもまた中国のEV(電気自動車)国産化ラッシュの趨勢を見てとり、今後の経済成長の中心が中国からASEAN・インドなどのインド太平洋地域に移りつつあるという展望≠フもとに、――親中国≠ナあったメルケルの退場をも契機として――「ライバル」と見たてた中国との競争を勝ちぬくことに重点を置きはじめているのだ。欧州各国権力者は、新疆ウイグル自治区での「人権」問題を理由に天安門事件いらい三十二年ぶりに経済制裁をおこない、二〇二〇年末に大筋合意していたEU・中国の投資協定の協議も中断した。
 このように米欧諸国からの「人権」や「経済安保」を盾にしてのサプライチェーンの分断や締めつけが強化されていることを一因として、中国の「世界の工場」としての地位は大きく揺らぎはじめ、成長鈍化の傾向がいよいよ露わとなっている。大手不動産開発企業・恒大集団のデフォルト問題にしめされた過剰債務=不動産バブルの一挙的崩壊の危機の切迫、化石燃料の価格高騰と供給不足ゆえの電力不足、そして何よりも貧富差の加速度的拡大、迫りくる少子高齢化・人口減少や食糧不足の深刻化……。
 こうした国内経済の危機的事態をのりきるために、北京官僚は、「双循環」(輸出主導型経済から内需主導型経済への転換)とか「自立・自彊」とかの号令を発しながら、AIやEV・自動運転などを実用化するためのイノベーションと半導体などの国産化率(現在は二〇%程度)の引き上げ、「軍民融合」を旗印とした高度技術の開発や新たな産業の育成、米欧諸国に依存しないサプライチェーンづくりなどに狂奔している。それとともに習近平指導部は、凄まじい貧富の格差にたいする人民の不満と反発をかわすために毛沢東が唱えた「共同富裕」なるものを前面におしだすとともに、習近平その人への忠誠≠人民に強制しているのだ。

「中国の特色ある社会主義」と「中国的民主」の宣揚

 習近平指導部は、昨二一年十一月上旬に開催した中国共産党六中全会において「中国共産党創立百年」を共産党に指導された中華民族発展の歴史≠ニして総括する「歴史決議」を採択した。この「歴史決議」において彼らは、中国は毛沢東時代に屈辱の「半植民地・半封建」から脱却し、ケ小平(江沢民・胡錦濤)時代に「豊か」になり、わずか数十年で世界第二位の経済大国となった、というように「新民主主義革命」以来の歴史を帝国主義列強の支配から脱した中華民族復興の歴史≠ニして描きあげた。そして、いまや「中華文化と中国精神の時代的神髄」であると同時に「マルクス主義の中国化における新たな飛躍」を画すところの「二十一世紀のマルクス主義」を、すなわち「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」をうちたてた、などと喧伝している。
 「建国百年」までに「社会主義現代化強国」にのしあがり、アメリカから世界の覇者の座を奪いとるという国家目標をなんとしても実現するために、党と国家――いまや汚職と腐敗が蔓延しているそれ――を上から固め、この目標に向かって人民を総動員していくことを狙って、彼らは、「中華民族の偉大な復興という夢の実現」という中華ナショナリズム(スターリン主義的ナショナリズムと伝統的中華思想とが相互浸透したようなそれ)を鼓吹している。また「中国の特色ある社会主義思想」なるものを宣揚することによって、「社会主義市場経済」がうみだしている諸矛盾――資本主義国のそれをも凌駕≠キる凄まじい所得格差、拝金主義や投機や金権汚職の横行、膨大な農民工への貧窮生活の強制、住宅バブルによって乱造されたタワーマンションの「鬼城」化などとして現出しているそれ――をおしかくすことに躍起となっているのである。
 あまつさえウイグル人民などの少数民族にたいする残忍な弾圧を「中国的民主」の名において傲然と正当化しているのが、習近平指導部なのだ。彼らは、「過半数を保護するために少数を攻撃すること」こそが「民主と独裁を統一」した「中国的民主」だ(白書『中国的民主』)などと傲然と開き直り、反抗する人民・少数民族にたいする強権的弾圧に狂奔しているのである。
 一四億の労働者・人民を、党=国家官僚の専制体制によって強権的に支配し、「社会主義市場経済」のもとで徹底的に収奪して貧窮の底に突き落としているネオ・スターリン主義官僚ども、彼らが「二十一世紀のマルクス主義」なるものを僭称しながらこの圧政と収奪を正当化し強化することを、われわれ反スターリン主義者は断じて許すわけにはいかない。

「大国ロシアの復活」をめざすプーチン

 この中国との同盟的結託を強めながら、「大国ロシアの復活」をめざして突進しているのが、ウラジーミル・プーチンとその政権である。プーチン政権は、「ウクライナのNATO加盟阻止・NATOミサイルの配備阻止」を米欧諸国政府に求めてウクライナへの軍事的圧力をかけているだけではない。ベラルーシにおいて欧米諸国が支援するいわゆる「民主派」が台頭するのを抑えるために、EU諸国から「不正選挙」や「国家的ハイジャック」を理由とする経済制裁を受けているルカシェンコ政権を全面的にバックアップしている。EU諸国に制裁解除を迫るテコとして、イラク・シリア・アフガニスタンなどの難民たちを欺してベラルーシをつうじてポーランド=EUに大量に送りこむという人非人的な術策さえも弄しているのが、プーチンなのだ。
 かつてソ連KGBのエリートだったプーチンは、ソ連邦崩壊後のロシアの歴史を、NATOの東方拡大によってロシアの勢力圏であった旧東欧・ソ連構成諸国が欧米諸国によって削りとられ、経済的貧困国にまで転落した受難の歴史≠ニしてとらえ、「大国ロシア」を復活させるために、ありとあらゆる凶悪な手段を駆使して突進している。彼は、国内的にはFSB型強権的支配体制を強化して反プーチン勢力を徹底的に弾圧しつつ、対外的にはベラルーシとウクライナという同じスラブ民族の兄弟国のNATO・EU加盟を絶対に阻止するとともに、中央アジアのみならず中洋・南アジアをみずからの勢力圏として確保する策動を強めている。そのために、極超音速ミサイルをはじめとする核戦力の一大強化をもって核大国としての地位を護持しつつ、強大化する中国との結託を強め、これを基礎として反米国家連合を形成することに突進しているのだ。

C 「同盟再構築」に狂奔する没落帝国主義アメリカ

 アメリカ権力者・バイデンは、猛然とキャッチアップしてきた中国がいまや軍事的にも経済的にもアメリカを凌ぐ国際的地位を獲得する日が迫っていることに焦りを募らせている。だが凋落著しいアメリカには、もはや単独で中国・ロシアを抑えこむ力などはまったくない。それゆえにバイデン政権は、中国との「二十一世紀の戦略的競争」に勝ちぬくために「同盟の再構築」をめざすという世界戦略をうちだし、これにのっとって「専制主義にたいする民主主義の戦い」を標榜しながら対中・対露の包囲網づくりに狂奔している。
 バイデンは、昨年十二月にアメリカの同盟国や友好国をかき集めてオンライン開催した「民主主義サミット」において、「専制主義国家の指導者たちは世界中で彼らの影響力を拡大している」と危機感を露わにしながら、「われわれの民主主義を新たに取り戻す」と各国権力者に呼びかけた。それは、反米連合をうち固めている中・露が「内政干渉反対」「国連中心」を旗印として新興国・途上国を囲いこんでいることへの焦りと恐怖のあらわれにほかならない。「民主主義」なるものを吹聴さえすれば、地に堕ちたアメリカの国際的威信を回復できるなどと妄信しているのが、おめでたい老いぼれ大統領バイデンなのだ。
 この「民主主義サミット」にバイデンが台湾政府を招待し、「民主主義陣営の一員」として世界におしだしたことは、アメリカ政府が辛うじて維持してきた「一つの中国」政策の実質的破棄を意味する。いまバイデン政権は、習近平指導部が国家の威信を賭けて開催しようとしている北京オリンピック・パラリンピックにたいしても、ウイグル問題を理由として、政府関係者の派遣をおこなわない「外交的ボイコット」を決定した(イギリス・オーストラリア・カナダが追随)。
 バイデン政権は、軍事的には、自国の核軍事力の強化と同盟国を束ねての対中軍事包囲網づくりに邁進している。みずからの世界支配の絶対的基礎である核軍事力の優位性を中国・ロシアに脅かされていることに焦るこの政権は、中・露に後れをとる極超音速ミサイルやAI兵器や宇宙兵器などの技術開発・実戦配備に狂奔している。それとともにバイデン政権は、インド太平洋地域にヨーロッパのNATOのような多国間の軍事的枠組みをつくりだすことをめざして、米・英・豪のAUKUSに日本や欧州諸国を加え、この事実上のアジア版NATOの中核に日米軍事同盟を位置づけて、その強化をはかろうとしているのである。
 加えてバイデンは、経済的には、中国が「軍民融合」を唱えながらAI兵器などを開発しているのに対抗すると同時に自国の軍事機密情報を盗み取られないようにするために、先端半導体や半導体製造装置の対中輸出と中国製ハイテク機器の輸入を禁止する対中デカップリング政策をトランプから引き継ぎ、それをさらに強化している。その他面で国内においては、最先端半導体製造工場(TSMC、サムスン、インテル)や蓄電池工場などを建設する企業への支援を、莫大な補助金を拠出してすすめている(半導体産業には五・五兆円を支援)。アメリカ権力者は、軍事技術とも結びついた最先端技術開発など、国家の産業競争力の核となる「デジタル化」と「脱炭素化」にかかわる技術開発の主導権を中国に奪われることを、なんとしても阻止しようとしているのである。

レイムダック寸前のバイデン政権

 中国を封じこめるためにアメリカを中心とする「同盟を再興」するというバイデンの追求は、こんにち、いたるところで破綻をきたしている。タリバンの猛攻・カーブル制圧をまえにして、欧州同盟国の「駐留延長」要求を無視してのアフガニスタンからの米軍撤退を強行したこと。米英豪の核軍事同盟たるAUKUSの結成にさいして、オーストラリアと通常型潜水艦建造の契約を交わしていたフランスのマクロン政権をあざむいて、米英共同での技術提供によるオーストラリアへの原潜導入を決定したこと。これらのゆえに、バイデンの吹聴する「多国間協調主義」にもとづく「同盟の再興」なるものが、「アメリカ第一主義」の別名でしかないことがあまねく世界に知れわたっている。
 アメリカ国内においては、オミクロン株出現による新型コロナ感染の再拡大と石油・食料など生活必需品価格の高騰にたいする労働者・人民の怒りは日増しに高まっている。
 米欧日などの各国政府が「二〇五〇年の温室効果ガスの排出実質ゼロ」の国際目標を掲げ「脱炭素」へと舵を切ったことを背景として、世界の石油・天然ガス開発への投資・生産量は激減し価格暴騰をもたらしている。世界最大の産油国アメリカにおいても、資金不足のゆえに、シェールオイル・シェールガス(さらには石炭)採掘鉱の新規開発は停滞し次々と閉鎖に追いこまれているのだ。
 バイデンが大統領就任直後から採ってきた「脱炭素」諸施策――パイプライン建設許可の取り消し、化石燃料生産企業への補助金削減、石油・ガス生産用地向けの国有地リースの停止など――のゆえに、石油・ガス・石炭などエネルギー産業に従事する労働者の多くが資本家どもによって解雇され路頭に投げだされている。しかも、アメリカが世界に押しつけてきたグローバライゼーションのもとで、アメリカ国内ではGAFAMなどのICT企業が肥大化した反面で、自動車・電機・鉄鋼などの製造業は空洞化してきた。
 こうしたなかで、「ラストベルト」や「コールベルト」(アパラチア山脈沿いの石油・ガス・石炭の産出地帯)の「プアー・ホワイト」と呼ばれる労働者の多くが、「忘れられた人びとを取り戻す」と叫ぶトランプの支持へと再び傾倒しつつある。このゆえに、今秋の中間選挙における民主党の敗北と二〇二四年の大統領選挙におけるトランプ復活の可能性はいよいよ高まっているのだ。
 まさにレイムダック寸前にたちいたっているバイデン政権は、労働者・人民の不信と怒りを排外主義的にかわすことを策して「専制主義・権威主義との戦い」を絶叫しての対中強硬策にうってでているのだ。

D 二十一世紀の<新東西冷戦>

 このように、新型コロナ・パンデミックに揺れる現代世界において、「二十一世紀の覇者」の座を獲得せんとして対米挑戦に攻勢的にうってでている習近平の中国と、衰退しつつも「民主主義陣営の盟主」づらをしているバイデンのアメリカとが激突し、それぞれがアジア・中南米・アフリカ・中洋・西太平洋などの新興国・途上国をみずからが主導する諸国家グループに引き入れようと競いあっている。こうした米・中冷戦の激化とパンデミックのもとで重要物資のサプライチェーンは分断され、いわゆる「中国依存」の世界経済が崩れつつある。この米・中激突を基軸として各国が国家エゴイズムを剥きだしにしてぶつかりあい、経済争闘戦が激化しているのだ。各国権力者は、この争闘戦に勝ちぬくためにあらゆる犠牲を自国の労働者・人民に強制し、人民を貧困の底に突き落としている。この人民の反発を抑えこむために、国内の強権的=軍事的支配体制を――デジタル監視網の整備をもテコとして――強化しているのである。
 こうして米・日・欧と中・露とがぶつかりあう<新東西冷戦>ともいうべき構造のなかで、全世界の労働者・人民はいま、新たな戦争勃発の危機に直面させられ、資本による強搾取=貧窮強制と各国政府の強権的支配によって、さらには帝国主義とネオ・スターリン主義の自然環境破壊が惹きおこした地球温暖化と大災害によって、塗炭の苦しみを強制されている。だが、欧米の帝国主義各国においては、スターリニストをはじめとする自称「左翼」が消滅し、帝国主義労働貴族が労働組合を支配している。何よりも全世界の労働者・人民がいまだなおスターリニズムの犯罪性・反プロレタリア性に目覚めてはいないがゆえに、労働者階級の反撃はつくりだされてはいない。
 コロナ・パンデミックをもつうじて露わになったこの腐蝕に満ちた暗黒の現代世界。――これを根底からくつがえすための闘いを、日本の地から全力で創造することこそが、二十一世紀世界に生きかつたたかっているわが反スターリン主義革命的左翼の使命であり責務なのだ。

以下、見出し

V 岸田日本型ネオ・ファシズム政権の反動攻撃

A 改憲・大軍拡・安保強化への突進

B 「デジタル化・脱炭素化」にむけた産業構造の転換

C 「連合」労働貴族と転向スターリニスト日共の腐敗


W 憲法改悪・大軍拡阻止!
22春闘の高揚をかちとれ

X <プロレタリア革命の世紀>を切り拓け!

A 今こそスターリン主義との対決を!

B 
反帝・反スタの旗のもとに前進せよ!

スターリン主義の歴史的犯罪とわが革命的左翼の闘い

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習近平・中国の究途末路

 スターリン主義ソ連邦の無残な自己崩落を他山の石≠ニし、共産党が指導する「人民民主主義独裁」を堅持し「資本主義を大胆に利用せよ」と説いたケ小平の路線のもとに、「富国」の道をひた走ってきたネオ・スターリン主義中国。党創立一〇〇周年(二〇二一年七月一日)を五二〇〇機のドローンを駆使したハイテク演出で華々しく飾りたて、中国共産党の指導こそが中国を帝国主義列強と伍する大国におしあげたと謳いあげた習近平指導部はいま、「第二の一〇〇年」=建国一〇〇年の二〇四九年までに「社会主義現代化強国」を建設するという国家目標を実現するために、――「同盟の再構築」戦略にもとづく対中国包囲網形成に狂奔する没落帝国主義アメリカとの対立を軍事的・政治的・経済的のあらゆる面で激成しつつ――突進している。
 けれども今、彼らネオ・スターリン主義官僚どもの足元では、「世界の工場」の地位の翳りと都市開発・住宅建設バブル崩壊の轟音とともに、労働者・人民のいっそうの困窮と貧富の差が絶望的なまでにひろがり、人民の怨嗟と怒りのマグマは国内のいたるところに充満している。
 対外的には、習近平政権がとりつづける「祖国の完全統一」をふりかざした台湾をめぐる強硬姿勢やウイグル・香港などでの苛烈な人民抑圧、そして「債務の罠」へのからめとりや露骨な経済的威圧などなどにたいする各国の権力者や人民の反撥が、――アメリカの対中国包囲網づくりと絡みあいつつ――広汎にうみだされてきているがゆえに、「人類運命共同体」を掲げ一七〇余の国および国際機関の協力を取りつけて進めてきた「一帯一路」沿線経済圏づくりも、いまや各地で行き詰まりをみせつつある。
 こうした内憂外患を、まさしく党=国家官僚専制体制の強化を実体的基礎とし「中華民族の偉大な復興」という中華ナショナリズムをイデオロギー的心棒にして、強権的に突破しようとしているのが、反「腐敗」運動の展開によって既得権益に群がる江沢民派などの特権官僚を粛清し、みずからの専制支配体制をうち固めてきた習近平なのである。
 いま中国の労働者・人民のあいだには、アメリカをも凌ぐ貧富の差と私腹を肥やすだけの党官僚どもの余りの腐敗ぶりを見せつけられて、寝そべり族≠フ若者がうみだされる他方で、東洋的道徳主義を色濃くにじませて貧困の平等≠追い求めた毛沢東時代への郷愁がひろがってきている。こうした風潮をまえにして習近平は、毛沢東の服装まで模して権威づけをはかりつつ、毛沢東が唱えた「共同富裕」を前面に掲げ、企業経営者・富裕層に寄付を迫る再分配政策なるものをおしだしはじめている。習近平のこのような立ち回りは、「世界の中華」として「人類運命共同体」を領導するという世界戦略を実現するために、国内の人民統制をさらに強化し統合していくことをこそ眼目としたものにほかならない。所得格差を「是正」し中間層を分厚くすることが「社会主義」ででもあるかのようにみなして富裕層への「締め付け」を喧伝し、もって噴出する社会的・経済的諸矛盾を糊塗し労働者・人民を蒙蔽(モンピー)して従わせようとする以外のなにものでもなく、ネオ・スターリン主義官僚の反人民性をしめして余りあるといわなければならない。

以下見出し

1 中国恒大集団の経営破綻

2 「共同富裕」実現の官僚的詐術

3 中国「社会主義市場経済」の基本構造

4 <擬似資本主義>の反労働者性


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