第2636号2020年9月14日)の内容

<1面>
敵基地先制攻撃の軍事体制構築反対! 
パンデミック恐慌下の労働者人民への犠牲強制反対!
自民党新政権の反動攻撃粉砕!

<6面>
黒田寛一著作集の刊行にあたって
<2面>
イスラエルがイランにサイバー攻撃
「郵便投票は惨事を招く」?
C調委員長のジレンマ
<3面>
規制委の六ヶ所村再処理工場「適合」認定弾劾!
再処理工場本格稼働を許すな
<4面>
Topics 「アベノミクス」への怒りに追いつめられた安倍
米軍佐世保基地で労働時間を一方的に「不利益変更」
◆「尖閣領有」を巡る日・米―中の激突
<5面>
第58回国際反戦集会 海外からのメッセージD
ギリシャ国際主義共産主義者組織(OKDE)/労働者革命党(EEK)ギリシャ/アフガニスタン急進左翼
 「解放」最新号



























  

敵基地先制攻撃の軍事体制構築反対! 

パンデミック恐慌下の労働者人民への犠牲強制反対!



自民党新政権の反動攻撃粉砕!


 わが革命的左翼とこれに鼓舞された労働者・人民は、新型コロナウイルスの感染拡大・パンデミック恐慌のもとで労働者・人民に犠牲を押しつける安倍政権を怒りの炎で包囲し、心神喪失に陥った安倍を首相辞任に追いこんだ。七年八ヵ月の長期にわたって反人民性をむきだしにした悪行を積み重ねてきた安倍政権にたいして、労働者・人民の怒りが爆発し、ついにこの極悪反動政権を打ち倒したのである。
 政治的危機に陥った政府権力者・自民党政治エリートどもは、そののりきりのために、「政治の空白」回避を叫ぶ自民党幹事長・二階の主導のもとに内閣官房長官・菅を首班とする政権をうちたてようと策している。この菅たるや、安倍政権の中枢を担い、貧窮人民切り捨ての「新型コロナ感染拡大防止対策」をはじめ数かずの反人民的諸施策を強行し、かつNSC(国家安全保障会議)専制の強権的政治支配体制の構築を主導してきた張本人ではないか。この輩は、「安倍政権の取り組みの継承」の名のもとに、労働者・人民見殺しの「感染防止対策」などの諸施策や日米新軍事同盟強化・憲法改悪などの政策を「引き継ぐ」意志を明示しているのだ。
 すべての労働者・学生・人民諸君! 菅を首班とする次期政権が「安倍政治の継承」と称して仕掛ける極反動攻撃を断固として粉砕する闘いを巻き起こそうではないか。「感染拡大防止対策」の名による貧窮人民切り捨てを許すな! 日米新軍事同盟強化反対・憲法改悪阻止の闘いの高揚をかちとれ!

二階を後見役≠ニした菅の首相への擁立
 安倍の首相辞任=安倍政権倒壊の激震に見舞われた政府・自民党は、この危機を菅政権の樹立によって突破しようとしている。九月十四日投票の自民党総裁選には石破、岸田、菅の三人が立候補しているが、菅が総裁・首相の座を得るのは確定的である。二階の主導のもとに、石破派・岸田派を除く自民党各派閥の領袖どもが九月初めに菅支持を早ばやとうちだしたことによって、すでに大勢は決しているのだ。
 策士≠ニ呼称される二階は、すでにおこなっていた菅との腹合わせにもとづき、菅が立候補をまだ表明していないうちに派閥としての菅支持を表明した。この二階の先駆け≠ノ慌てた細田、麻生、竹下の各派閥ボスどもが派内の立候補希望者を抑えこみ菅支持をうちだした。いわゆるキングメーカー≠フ地位を手にしようとする二階への警戒心を抱き・次期政権への自派の影響力保持と閣僚ポストの多数獲得を狙うこれら三派のボスどもは、わざわざ三派の共同記者会見を二階をはずすかたちで開いたのだ。二階派はこれに猛然と反発した。
 二階と細田、麻生、竹下の派閥抗争を孕みながらも、ともかく菅の首相への擁立という点で一致したのは、石破潰し≠ニいう共通利害による。森友・加計疑獄や「桜を見る会」問題などの数かずの腐敗を引き起こしながら・それらのもみ消しを図ってきた安倍政権の強権的な「政治手法」に異を唱えてきた石破。この男に首相の座を奪われると数多の疑獄や買収事件の「再調査」にのりだしかねないという危惧感を抱いている徒輩、すなわちみずからが数かずの疑獄を引き起こしたり関与したりしてきた菅、二階、麻生、細田らが、自己保身のためにも石破潰しの一点で野合したのである。――菅も二階も河井夫婦の選挙違反やIR疑獄に深くかかわっている。
 これら派閥ボスどもは、石破潰しのために、自民党総裁選では国会議員による投票方式(都道府県の地方議員に各三票を割り当てることを含む)をとることを決定した。党員投票方式だと地方自治体の議員や党員の支持をあつめている石破が当選しかねないからだ。――党員投票を求めて一五〇ほどの署名を集めた自民党青年局長・小林や小泉ら若手議員≠フ策をも押し潰した。
 各派閥領袖どもによる菅の新首相への擁立は、安倍政権が引き起こした数かずの疑獄・政治腐敗をもみ消し政敵≠葬りさることを策す徒輩の醜悪な蠢きの所産にほかならない。
 こうして自民党総裁選・首相指名選において、二階を後見役とした菅政権≠ェ成立させられようとしている。この菅は党総裁選立候補表明(九月二日)において、安倍政権の安保・外交政策、憲法改定、経済政策などの諸政策を「継承」する意志を明示しているのであり、この輩を首班とした新政権は政策面からすれば安倍継承政権∴ネ外のなにものでもない。そのうえ、内閣官房長官としてNSC専制の強権的支配体制(日本型ネオ・ファシズム統治形態の現実的姿態)を築いてきたこの輩は、NSC専制のいっそうの強化を策すにちがいない。〔NSCの実務≠担い労働者・人民にたいする監視・管理体制を築いてきた官房副長官・杉田や首相補佐官・和泉らを菅は留任させる腹づもり、といわれる。〕
 われわれは、「安倍政権の取り組みの継承」の名のもとに菅政権が仕掛けてくる極反動攻撃を打ち砕くのでなければならない。

貧窮人民見殺し・大企業優遇策の「継承」を許すな
 菅は自民党総裁選への立候補の表明において、「新型コロナウイルスの感染拡大防止と社会経済活動の両立」を図ると言明し安倍政権の経済政策を継承していく意向を明示した。安倍政権の「感染拡大防止対策」においてむきだしにされた貧窮人民見殺しの反人民性に数多の労働者・人民が怒りと憎悪を燃やしている。このことを一顧だにせず、なおも安倍政権の政策の「継承」をおしだすのは、まったく許しがたいではないか。
 「医療崩壊」を防ぎとめてきた、と菅はうそぶく。だが安倍政府は、医療機関への支援をなおざりにし、六月下旬以降の新型コロナウイルス感染者の再拡大(パンデミック第二波)にもかかわらずPCR検査の拡充も病床拡充も自治体に丸投げしてきたのだ。
 「感染拡大防止と社会経済活動の両立」を図り、「雇用を守る」などと菅は言う。まったく現実を無視した嘘八百でしかない。
 厚生労働省の発表した統計においてすら、コロナパンデミックのもとでの労働者の解雇・雇い止めは八月末で五万三二六人に達したとされる。また、非正規雇用労働者が七月時点で前年同月に比して一三一万人も減少したとされる。企業経営者どもがパンデミック下での経営難を口実に、非正規雇用労働者の大量解雇・雇い止めを強行しているのだ。派遣・パート・アルバイトさらに個人請負などの非正規雇用労働者は無慈悲に首を切られ、今日・明日の生活すらおぼつかない困窮の奈落に叩きこまれているのだ。
 大手企業独占体・中堅企業においても多くの正規雇用労働者が一時帰休・賃金カットを強いられている。パンデミック恐慌・大不況の長期化のもとで今後、資本家どもの工場・店舗閉鎖、生産・販売拠点統廃合の大リストラ推進によって早期・希望退職強要とか遠隔地配転強要とかのかたちで正規雇用労働者の大量解雇が強行されようとしているのだ。「デジタル化」推進の名によるAI・ICT機器の生産過程・業務過程・流通機構への導入をつうじて多くの労働者を排除しようとしてもいる。
 こうした非正規雇用労働者の大量解雇、正規雇用労働者の一時帰休・解雇の嵐のなかで、ますます貧窮化を強制された労働者にたいする生活補償も、休業・廃業倒産の危機にあえぐ中小・零細企業にたいする休業補償も、まったくなおざりにしてきたのが、安倍政権ではないか。雇用調整助成金制度の「活用」を謳ってはきても、政府の財政赤字増大・財政難を口実に打ち切りの期限をつけ、かつ自治体に押しつけるものでしかない(人民の怒りを浴びせられ雇調金特例措置は十二月末まで延長された)。
 まさに解雇・失業を強制され生活困窮にあえぐ労働者・人民になんの生活補償もせず、見殺しにしてきたのが、安倍政権なのである。その反面で、この政権は大企業独占体への手厚い保護・救済策をとってきたのだ。総計一三〇兆円におよぶ公的資金(労働者・人民からむしりとった血税)を投入しての資金繰り支援。日銀のETF(上場投資信託)の無制限の買い上げやGPIFの膨大な資金(労働者・人民の年金)の投入による株価のつり上げ(パンデミック恐慌勃発の三月に一万円台に下落した日経平均株価の二万円台への上昇)。さらには、需要の喪失により販売急落にあえぐ大手企業・独占体の救済を主眼とした「消費拡大」促進策としての「GoToトラベル」などと銘うった政策の前倒し実施――これを主導したのが全国旅行業協会会長・二階や菅なのだ。
 このような大企業・独占体支援策の実施によって独占ブルジョアどもや資産家などの富裕層に利殖・資産価格上昇の機会をふんだんに供与してきている。その対極において貧窮人民を見殺しにし・いっそうの困窮を強制している。独占ブルジョアども・富裕層と貧窮する労働者・人民との所得格差のいっそうの拡大、この根底をなす資本家階級と労働者階級との階級的分裂・階級対立の尖鋭化――これこそ、安倍式の経済政策「アベノミクス」がもたらしたものにほかならない。この「アベノミクス」の「継承」をなおも掲げる菅を首班とする政権など、断じて許すな!

<米中冷戦>下で高まる戦争的危機
 菅は安保・外交政策として「日米同盟を基軸としながら近隣諸国との関係をつくっていく」と称して、安倍政権の基本政策を継承する意志を表明した。米・中の角逐激化のもとで、アメリカ帝国主義につき従い対中(対露)攻守同盟としての日米新軍事同盟の飛躍的強化をおしすすめていくことを「基軸」とする、ということにほかならない。
 いま、アメリカと中国は国際政治・軍事・経済のあらゆる部面において激突し、まさに<冷戦>に突入している。
 中国・習近平政権は、九月一日から、南シナ海・黄海・渤海において大々的な軍事演習を展開している。八月二十六日に中距離ミサイル四発(いわゆるグアムキラーと空母キラー)を中国本土から南シナ海に向けて発射する演習を強行したのにひきつづいて、今度はSLBM=潜水艦発射弾道ミサイル「巨浪3」の発射実験をおこなうという。「アメリカにたいして戦略的抑止力を示す」(『環球時報』)と豪語しつつ。
 このように習近平中国は、対米の核戦力の増強を誇示する軍事演習を――「独立」を志向する台湾・蔡英文政権にたいする軍事的威嚇としても――頻繁にくりひろげている。また、南シナ海の「領海化」(西沙・南沙諸島への「行政区」設置)を強行するとともに、東シナ海の・さらに西太平洋の制海権をアメリカから奪取することを狙って空母部隊を投入した軍事行動を展開しているのだ。
 こうした東アジア・太平洋域におけるアメリカへの軍事的対抗の強化とともに、習近平政権は中東をめぐっても、反米<Vーア派国家イランを反米連合に取りこむ策動にうってでている。イラン・ロウハニ政権とのあいだで二十五年間におよぶ経済・安全保障の「戦略的パートナーシップ」協定を結ぶ交渉を開始している。習近平政権は、アメリカ帝国主義の経済制裁によって経済危機に陥っているイランを支援=救済し、そうすることによってアメリカへの対抗を強めているのである。
 習近平政権は「社会主義現代化強国」の達成(その前倒し的実現)という国家戦略にもとづきアメリカ帝国主義から二十一世紀世界の覇者≠フ座を奪い取ることを狙っていま総攻勢を仕掛けている。これにたいして、巻き返しに狂奔しているのがアメリカ・トランプ政権である。この政権は、共産党支配の全体主義£国を「民主主義諸国」の同盟によって包囲することを基軸に据え直した対中戦略を押っ取り刀でうちだし(七月の国務長官ポンペオ発言)、対中国包囲網の構築に躍起となっているのだ。
 アメリカ権力者は、中国がいまや二〇〇発を超える核弾頭を保有するにいたっていると中国の脅威≠煽り(国防総省の年次報告、九月一日)、これをタテにしてアメリカの中距離核ミサイルの配備受け入れを「属国」日本の政府に強要している。また、中国との国境紛争を激化させ対立を深めつつあるインド・モディ政権を「自由で開かれたインド太平洋戦略」にもとづき対中包囲網にからめとることを、「同盟国」日本・オーストラリアの各権力者を動員しつつ、追求しているのだ。
 ポンペオ発言に呼応して「民主陣営の最前線」などと自称している台湾・蔡英文政権にたいして、トランプ政権は軍事援助(兵器売却)と経済支援を強化している。国務次官補スティルウィルがアメリカ・台湾の経済協力強化のために「新しい経済対話」という名の機構を設立することを提唱した(八月三十一日)。
 こうしたトランプ政権の対中包囲網形成の追求に呼応しているのは、アングロサクソン系同盟国と唯一の「属国」日本の権力者どもだけであって、むしろアメリカの国際的孤立を浮き彫りにしてさえいる。このようなものとしてそれは、「アメリカ・ファースト」を掲げ各国に隷従≠強制するトランプ政権の追求の破綻を示しているのだ。

日米新軍事同盟強化・改憲反対の闘いを創造せよ
 中国にたいする巻き返しに狂奔しているアメリカ帝国主義・トランプ政権につき従い、米・豪とともに対中国軍事包囲網の構築・強化に突き進もうとしているのが、菅とこれを次期政権の長に据えようと策す自民党各派閥の領袖らの権力者どもなのである。彼らは――安倍が敷いたレール≠ノ乗って――「敵基地攻撃能力」保有の名のもとに、「敵国」たる中国および北朝鮮に先制攻撃を仕掛けることのできる軍事体制を、アメリカと共同で構築することをたくらんでいるのだ。「敵基地」に米軍とともに先制攻撃を強行しうる日本国軍の能力を獲得するために、先制攻撃用兵器(F35ステルス戦闘機など)をアメリカから大量に購入するとともに、アメリカ政府・国防総省がおしすすめようとしている新たなMD(ミサイル防衛)システムの開発・構築に「共同開発」を含めて参加し関与していく――こうした「新たな方針」の「具体化」とその実現にすでに着手している。
 こうして日本国軍の軍事力の飛躍的増強にのりだすとともに、日本の権力者どもは「インド太平洋戦略」なるものにもとづいて米・豪との三角軍事同盟の構築・強化と対中国包囲網へのインドの抱きこみを策している。――日本・オーストラリア・インド三国の閣僚級会合(九月一日)において、三国間での「次世代のサプライチェーン」の構築が合意された。
 まさにアメリカ帝国主義権力者の日米新軍事同盟にもとづく対日要求をことごとく受け入れ対中国包囲網の構築に突進しているのが、日米安保の鎖でしめあげられている「属国」日本の権力者どもなのである。いまやトランプのアメリカと習近平の中国とが南シナ海・東シナ海・台湾海峡さらに西太平洋において軍事的対峙を常態化させ一触即発の戦争的危機を日々高めている。この情勢のただなかにおいて、中国および北朝鮮にたいして米軍と一体で日本国軍が先制攻撃を仕掛ける軍事体制=日米共同の侵略戦争遂行体制の構築に突進するのは、まさに戦争勃発の危機を一挙に高める反人民的策動いがいのなにものでもない。こうした策動を、われわれは絶対に許してはならない。
 菅は「安倍政権の取り組み」の「継承」として、憲法改定をめざすことをも表明している。憲法第九条の破棄=「自衛隊保持」と「緊急事態条項」の新設とを核心とする憲法大改悪を断固阻止せよ!

 すべての労働者・学生・人民諸君! 安倍継承=菅政権がふりおろそうとしている極反動攻撃を絶対に許してはならない。この攻撃を打ち砕く闘いの戦列を創造せよ。
 いま、立憲民主党と国民民主党との合流新党′巨ャがすすめられつつあるなかで、この新党の綱領案に「原発ゼロ」が記されたことに反発した「連合」右派産別労組出身の議員ども九人が新党を拒否し、玉木新党≠ノ合流の途を選ぶかどうかで右往左往している。「連合」じたいの股裂き・分裂につながりかねないことへの危機感と自己保身から会長・神津が九人と玉木新党≠非難している。こうしたドタバタのもとで、「連合」指導部は反戦平和や改憲阻止や原発反対への取り組みをいよいよ放棄し、傘下労組内の取り組みを抑圧しているのだ。
 日共・不破=志位指導部はといえば、立・国合流≠フ動向を横目で見ながら、「野党連合政権の樹立」を惰性的に叫びたてている。「野党間の一致」=「共通政策」策定のためと称して、みずからの諸政策(代案)を合流新党≠フそれにすり寄る内容のものにますます右翼的に修正することにウツツをぬかしているのが、不破=志位指導部なのである。「野党連合政権」の政策としては、「日本有事」のさいの「日米共同作戦」を認めるというように、日米安保条約を肯定するほどの犯罪を犯しているのだ。
 これら既成反対運動指導部の闘争放棄・抑圧あるいは闘争歪曲に抗し、これをのりこえ、われわれは反戦反安保・改憲阻止の闘いや<パンデミック恐慌>下の労働者・人民への犠牲強制を粉砕する政治経済闘争を創造するのでなければならない。
 <米―中・露の核戦力増強競争反対! 日米新軍事同盟の強化反対! 米軍中距離ミサイルの日本配備阻止! 日米共同での敵基地先制攻撃の軍事体制構築反対! 憲法改悪阻止!>の闘いを、労働者・学生・人民の力を結集してたたかい、その戦闘的高揚をかちとろう!
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黒田寛一著作集の刊行にあたって

プロレタリア解放のために生涯を捧げた

黒田寛一の哲学と革命思想を集大成



(1)
 日本の反スターリン主義運動を創成し導いてきた革命家であり、盲目の哲学者である黒田寛一、その著作集全四〇巻を、堂々たる構成と装丁のもとにここに刊行する。
 今日、新型コロナウイルス・パンデミックのもとで、現代世界はいつ火を噴くかもしれない米中冷戦へと転回した。全世界の労働者人民は、各国権力者によって戦争と困窮を強制されている。
 黒田寛一は、自称「社会主義」ソ連邦の崩壊(一九九一年)直後から二十一世紀世界を<暗黒の世紀>と予見し、これを突破する「思想的パラダイム」はマルクス思想いがいにありえない、と喝破してきた。本著作集は、労働者人民がみずからの解放をめざして国際的に団結し変革的実践に起ちあがる、そのための精神的武器となるであろう。
 第一回配本は、著者の処女作『ヘーゲルとマルクス』を収めた第一巻『物質の弁証法』である。これは、著者の生前の「著作集プラン」にもとづいており、「物質の弁証法」のタイトルも著者がつけたものである。以後、第二巻『社会の弁証法』、第三巻『プロレタリア的人間の論理』と続く。本著作集全四〇巻には、スターリン主義を思想的にも実践的にも克服するという、黒田寛一の先駆的で偉大な追究が凝集されている。
(2)
 黒田寛一は、一九五六年のハンガリー事件と対決し全世界でただひとり反スターリン主義運動の創成に起ちあがった。「非スターリン化」を要求して決起したハンガリー労働者の闘いを「労働者の母国」を任じるソ連の軍隊が圧殺した、この画歴史的事件にたいして、黒田は共産主義者としての生死をかけて対決したのだ。労働者階級の自己解放のために、スターリン主義を超克する真実の革命的労働者党を創造し根づかせていく、これが黒田の革命家としての出発点であると同時に、反スターリン主義運動の<原始創造>をなす。黒田は生前に語っていた、「<一九五六年のハンガリア>は、つねに必ずわれわれが追体験し場所的に実現するべき原点なのだ」と。
 一九五六年以後、黒田寛一は、半世紀にわたって<反帝国主義・反スターリン主義>を戦略とする革命的前衛党創造のために奮闘してきた。黒田に導かれてわが革命的左翼は、革命的反戦闘争などの諸大衆闘争や労働戦線の帝国主義的再編反対の闘いをつうじて労働戦線・学生戦線に深く根を張り、物質力をもった反スターリン主義運動を創造してきた。日本帝国主義国家権力による謀略をも駆使した組織破壊攻撃を断固として打ち砕いてきた。まさにこれらは、日本の反スターリン主義運動が世界に誇るべき、世界史的な意義をもつ闘いであった。現代史を最先端において切り開いてきたこの闘いを貫く黒田の哲学と革命思想こそが<革命の第二世紀>を導くことができるのである。
 全盲という肉体的ハンディキャップを感じさせない黒田寛一のすさまじい闘い、それは、「暗闇につつまれた熱情」と自身が言表しているところの共産主義者としての主体性の発露であろう。この黒田の主体性は、若き日の彼の実存的および思想的の格闘によって育まれ、うち鍛えられてきたといえる。黒田は、「マルクスに帰れ!」と叫びながらマルクスの<変革の哲学>をよみがえらせ、みずからの哲学を<実践の場所の哲学>として独自に切り開いてきたのである。
(3)
 本著作集は、著者自身の構想にもとづいて編成した。革命家にして哲学者であった黒田寛一が残した諸著作・諸論稿(講述テープを含む)は膨大であるが、本著作集では、黒田自身が推敲したものを基本にしてしぼりこみ、四〇巻に収めた。全巻を以下の六つのグループに分類し、年代順に配した。
 ≪哲学≫では、現代唯物論の客観主義的偏向と対決し哲学的探究を積み重ねた若き黒田の『ヘーゲルとマルクス』から晩年に書き下ろした大著『実践と場所』全三巻までの諸著作を収めている。ここでは、実践論、認識論、言語的表現論などの核心が追究されている。
 ≪革命的共産主義運動の創成と前進≫においては、『革命的マルクス主義とは何か?』などの創成期の著作から、闘いの理論と歴史を総括した『日本の反スターリン主義運動』第一・二巻を、さらに労働運動論の追求などを集成している。反スターリン主義運動に結集した闘う労働者・学生との討論をつうじ、彼らの実践を理論化するかたちで形成されてきた、大衆闘争論・運動=組織論・同盟建設論で構成される組織現実論は、その白眉をなす。
 ≪マルクス経済学≫のテーマのもとに、変革すべき資本主義の経済構造の解明をめぐる学問的論争と対決し『資本論』の方法を考究すると同時に、現代資本主義の腐朽性を暴露した諸著作を収める。
 ≪現代世界の構造的把握≫、≪スターリン主義ソ連邦の崩壊≫においては、スターリン主義・ソ連圏に巻き起こった諸事件、なかんずくソ連邦の「世紀の崩落」と対決し、労働者階級にとっての意味を暴きだした諸著作を集成している。現代世界の激動を「みずからの耳を目として」凝視して読んだ黒田寛一の、世界情勢論および情勢の分析方法などが明らかにされている。
 二十一世紀世界は戦争と貧困・「古典的階級分裂」、地球環境破壊に覆われ、資本主義の最期を告げる鐘が鳴っている。≪マルクス主義のルネッサンス≫においては、黒田寛一が「プロレタリア革命の第二世紀を切り開け」と迫真の呼びかけを発している。

 マルクス主義を日本に土着化させるための黒田寛一の追求は、同時に全世界の労働者階級の解放の道を照らしている。日本の反スターリン主義運動が<世界に冠たる>のゆえんが、本著作集に一点の曇りもなく明らかにされている。黒田の渾身の諸労作を変革の武器として学んでいかれんことを!
(二〇二〇年九月五日)

黒田寛一著作集刊行委員会
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C調委員長のジレンマ

 「腹を括って安保政策でもうひと山越えろ」と迫られて…

 九月初めのある日、代々木党本部の委員長室にて。
 あ〜あ。安倍辞任について、『解放』に載ってた「海外へのアピール」を真似して「一つの新たな激動的な時代がはじまった」って言ったところは評判よかったんだけどなあ。「病気が理由」で辞任したことを喜ぶと世論から反発されると思って「健康の回復を願う」なんてコメントしたら、わが党内からなんで革マル派みたいに「安倍政権をついに打ち倒した!」と快哉を叫ばないのか!?≠チて反発がでちゃった。
 でもさ、じっさい喜んでる場合じゃないんだよね。次の菅政権になったら、一時的に支持率が上がるうちに年内にも解散・総選挙を強行する可能性が高い。一月のわが党大会いご党勢が後退したままの今、解散されたら大変だ。「特別月間」を設定して党員たちに『しんぶん赤旗』読者を増やせ、党員を増やせ、とハッパをかけても、ぜんぜんダメ。八割の支部は党員拡大の働きかけを始めようともしない。みんな何でボクの言うこときかないんだよっ!
 それに、立憲民主党と国民民主党と無所属の衆参議員の約一五〇人で「合流新党」が結成されることも、ボクにとっちゃジレンマだ。わが党との共闘に強硬に反対してきた連中が脱落したから、枝野さんと小沢さんが主導する新党がわが党との共闘を推進してくれることには大いに期待したい。でも、大きくなった新党への世間の期待が高まっちゃうと、かんじんの総選挙で反自民票やわが党の支持票がみんな新党にいっちゃうかも。わが党員もそっちに合流≠オちゃうかも。……
 一七年の総選挙で結党直後の立憲民主党に票をかっさらわれてわが党が惨敗、というような事態をくりかえさないためには、わが党候補を野党統一候補にしてもらわなきゃいけない。とにかく新党との「選挙協力」の協議を急がなきゃ。合流新党の綱領案の内容は、「立憲主義・格差是正・多様性」という「三つの転換方向」の理念をおしだしているわが党の基本政策とほとんど同じ。立民さんと一致できるようにわが党の政策を「発展」させてきた甲斐があった。今こそ「新自由主義からの転換」を旗印にして「本気の野党共闘」を実現しなくちゃ。
 残るハードルは安保・自衛隊政策だ。「政権合意」したいのなら「腹をくくってもうひと山越えろ」って立民の安住さんからも迫られてるしなあ(『前衛』九月号の座談会)。新党綱領案で掲げられてる「国際協調と専守防衛」を貫き「健全な日米同盟を軸」とするっていう「現実的な安全保障」政策に合わせろってことだよな。うーん、もうわが党も「野党連合政権」としては自衛隊「合憲」・安保条約「維持」の対応をとると明言して、「日本有事」の際には「自衛隊活用」だけでなく「安保条約第五条にもとづく日米共同対処」も認めてるんだけどなあ……。
 「もうひと山」かあ……「代々木官僚による『安保廃棄』の廃棄を許すな」っていう革マルの批判に響き合っちゃってる党員がいっぱいいるからなあ。もしも「日米同盟を軸」とするとまで「政策的一致点」として掲げたら、反逆する党員が続出しそうで怖いなあ……。
 えっ? 閣外協力にしておけばこれ以上基本政策を右翼的に緻密化しなくていいじゃないかって? いやいや、せっかく「野党連合政権」をめざすんだから、やっぱ入閣しなくちゃ。「桜を見る会」追及でいまやわが党の顔になったタムトモ(田村智子)副委員長なんか「閣僚をめざさないといけない」なんて日本記者クラブでの会見(七月十四日)で息巻いちゃってるし。ボクだって! よーし、もっと枝野さんたちとの「政策的一致点」を発展させるように腹をくくってがんばらなくちゃ。……でも、いや〜な予感が……
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