第2589号(2019年10月7日)の内容

<1面>
米・中両大使館に怒りの拳
 アメリカのイラン攻撃反対! 安保粉砕
 香港人民への習近平政権の武力弾圧反対!
 9・24 全学連が連続的に決起
<3面>
サウジ石油施設への攻撃事件の意味するもの
<2面>
全学連第89回大会かちとる
鹿大生が反改憲集会で奮闘(9・19、鹿児島)
北海道総がかり行動に檄(9・19、札幌)
<4面>
Topics UAゼンセンが首切りを甘受する「セーフティネット」を提唱
出版産業の「新生」を第一義として「賃上げ」闘争を放棄
 出版労連「運動方針」批判

<5面>
米中の草刈り場と化す南太平洋
福島原発汚染水海洋投棄を許すな
頓挫したアフガニスタン和平協議
<6面>
亀の歩みでも黒田思想をわがものに
◎『新世紀』最新号(第303号)紹介
週間日誌は5面に掲載
 「解放」最新号




























  


米・中両大使館に怒りの拳

 アメリカのイラン攻撃反対! 安保粉砕!
 香港人民への習近平政権の武力弾圧反対!

 9・24 全学連が連続的に決起

「アメリカのイラン軍事攻撃阻止!」米大使館に怒りの声
(9月24日、東京港区)
「香港人民への武力弾圧許すな!」中国大使館に弾劾の拳
(9月24日、東京港区)
中国大使館の正面に革マル派旗を掲げて抗議する学生たち
(9月24日)
香港人民への武力弾圧を許すな! 中国大使館に怒りの拳
(9月24日、東京港区)
 九月二十四日、全学連の学生たちは、アメリカ大使館・中国大使館にたいする闘争に連続的に決起した。
 アメリカのトランプ政権がイラン軍事攻撃の衝動を強め、このアメリカに安保の鎖で締めあげられた日本の安倍政権がペルシャ湾派兵の機をうかがっている。だが高まる戦争的危機のもとで日本の既成反対運動指導部はなんらの闘いをも展開してはいない。この反対運動の危機をのりこえるかたちで全学連の学生は、断固として反戦反安保の闘いに決起したのである。同時に、習近平政権が香港人民への武力弾圧の牙を研いでいることを暴露し弾劾する闘いを貫徹したのだ。

「日本のペルシャ湾出兵阻止!」をも掲げ抗議闘争

 全学連大会初日のこの日、大会に結集した学生たちは全国代表団を結成し、米・中両大使館に向かった。午後三時三十分、赤坂のアメリカ大使館前に登場した学生たちは、深紅の全学連旗と革マル派旗を敢然と掲げ、ただちに抗議闘争を開始する。
 「アメリカのイラン軍事攻撃阻止! イランへの経済制裁の強化を許すな!」
 眼前のアメリカ大使館に向かって、たたかう学生たちは怒りをこめてシュプレヒコールを叩きつけた。首都中枢に怒りの声が轟く。
 酒井全学連委員長がマイクを握り訴えた。彼は、イランによるサウジ石油施設攻撃はアメリカ帝国主義の中東支配の終焉を全世界に知らしめたという画歴史的な意義をもっていると喝破し、次のように呼びかけた。
 「イランによるサウジ石油施設攻撃に震えあがったアメリカのトランプ政権は、追いつめられれば追いつめられるほど、起死回生をかけてイランにたいする軍事攻撃の選択肢を選びとる可能性があるのだ。われわれは、軍国主義帝国アメリカのイラン軍事攻撃に断固反対してたたかおう。アメリカからの軍事援助を受けたサウジアラビア権力者によるイエメンへの報復的な軍事攻撃を許すな!」
 つづいて発言した学生は闘志をみなぎらせ訴えた。
 「イラン包囲網のたてなおしに躍起となるトランプ政権は、安倍政権にたいして、海上監視艦船団の結成を軸とする対イラン有志連合への参加を強く迫っている。われわれは、トランプ政権に日米安保の鎖で締めあげられた安倍政権が日本国軍をペルシャ湾に派遣することを絶対に許してはならない。いまこそ安保破棄めざしてたたかおう!」
 これらの決意表明をうけて、全学連の学生はますます意気高くアメリカ大使館にたいして怒りの拳を叩きつける。
 「日本国軍のペルシャ湾への出兵を阻止するぞ! 日米新軍事同盟粉砕!」
 たたかう学生たちは、阻止線を張って威嚇する警察権力・機動隊の弾圧を一切許さず、約三十分間にわたってアメリカ大使館にたいする抗議闘争をたたかいぬいたのだ。

北京ネオ・スターリニスト官僚を弾劾

 アメリカ大使館にたいする抗議闘争を貫徹した全学連の学生たちは、連続して中国大使館にたいする抗議闘争に起ちあがった。
 午後五時頃、元麻布の中国大使館前に登場した全学連の部隊は、「闘う香港人民に対する中国・習近平政権の弾圧を許すな! 対米対抗の核戦力強化反対!」と大書した横断幕を掲げ、抗議闘争を開始した。「北京官僚による香港人民にたいする武力弾圧を許さないぞ! たたかう香港人民と連帯してたたかうぞ!」
 全学連の闘いを恐れた警察権力・機動隊は、大使館の正門に通じる路地に阻止線を張った。怒りに燃えた全学連の学生たちは機動隊と対峙しつつ断固として歩道上に陣取り、中国大使館に向かってシュプレヒコールの嵐をあびせたのだ。
 酒井全学連委員長が熱烈に訴えた。
 「香港の労働者・学生・人民はいま『五大要求の一つも欠けてはならない』を合言葉にして、香港行政府・警察によるデモ隊への催涙弾の発射、指導者の逮捕・起訴などの弾圧に抗してたたかっている。この不屈にたたかう香港人民の闘争を圧殺するために、習近平政権は、深センに一万六〇〇〇人もの武装警察隊を集結させて武力弾圧の態勢をとっているのだ。たたかう香港人民にたいする中国ネオ・スターリニスト官僚どもによる武力弾圧を断じて許すな! 香港行政府・警察の凶暴な弾圧を弾劾せよ!
 われわれは、香港のたたかう労働者・学生・人民に呼びかける。いまこそ労働者・学生・人民の団結した力でもって拘束された人民の奪還をかちとるとともに、さらに普通選挙の実施などの諸要求を実現し、中国官僚の専制支配の強化をはねのける<香港の自治>の拡大をめざしてたたかおう!
 われわれ全学連は、日本のたたかう労働者階級とともに、香港の労働者・学生・人民と連帯してたたかいぬく決意である」
 さらに、学生が訴えた。
 「われわれは、日米両権力者による日米新軍事同盟の強化に反対すると同時に、中国・習近平政権による対米対抗の核戦力強化に断固として反対する。習近平政権は、トランプ政権による中距離ミサイルのアジア配備の策動に対抗して、核ミサイルの増配備に突き進んでいる。日本を含むアジアの労働者・人民に核ミサイルの矛先を向ける中国権力者の反プロレタリア的な策動を断じて許すな!」
 全学連の学生たちは、機動隊の阻止線と対峙しつつ、断固として抗議闘争を展開した。そして、中国大使館の正門前に四度にわたって抗議団を送り、中国大使館の真正面に全学連旗と革マル派旗を翻らせつつ怒りのシュプレヒコールを中国大使館に叩きつけた。
 たたかう学生たちは、「事態の平和的解決を望む」などとつぶやき北京官僚の顔色をうかがっているにすぎない日共スターリニストを弾劾しつつ、香港人民の闘いの圧殺に狂奔する中国・習近平政権を、約一時間半にわたって徹底的に弾劾したたかいぬいたのだ。
 全学連のたたかう学生たちは、反スターリン主義革命的左翼の一翼を担うものとしての自負と誇りに燃えて、軍国主義帝国アメリカのトランプ政権と中国ネオ・スターリン主義官僚にたいする断固たる闘争を全世界の労働者階級・人民の最先頭で貫徹したのである。

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サウジ石油施設への攻撃事件の意味するもの

T アメリカ帝国主義への逆襲

 九月十四日、何者かが放ったドローン(無人攻撃機)と巡航ミサイルによって、サウジアラビア東部にあるアブカイクとクライスの二つの石油関連施設――国営石油会社サウジアラムコの施設――が爆発・炎上するという事件が発生した。一直線に並んだ高さ数十メートルのタワー型設備が、正確に攻撃されたとされる。
 この攻撃によって、サウジアラビアは、一日あたり生産量の約半分(五七〇万バレル、世界の供給量の五〜六%)の原油生産がストップするという事態に叩きこまれた。
 事件の直後にイエメンのシーア派反政府勢力フーシ派が、「神のおかげで十機のドローン部隊が攻撃した」という声明を発表した。
 他方、アメリカ国務長官ポンペオは、「攻撃はサウジの北方からなされた」「使用された武器はフーシ派のものではない。サウジアラビアにたいするイランの直接の戦争行為だ」と発表した。アメリカ国防総省にいたっては、「計画的で洗練された攻撃だ。すべての兆候がイランの責任を示している」と、脱帽感≠ウえ漂うコメントを発表したのであった。
 またサウジアラビア国防省は九月十八日になって、「攻撃は無人機十八機・巡航ミサイル七発によるもので、北北西から来ている」と発表するとともに、無人機と巡航ミサイルの残骸・施設の北西側が被弾している写真・何かが飛来する映像などを公表した。
 こうしたイランへの非難にたいして、イラン大統領ロウハニは即座に、「長年にわたるサウジからの攻撃にたいするイエメン人民の相応の報復だ」「(イランの関与という主張には)証拠もなく意味もない」と反論したうえで、もしもアメリカが軍事攻撃にふみきった場合には「全面戦争をもって応える」と逆にアメリカを威嚇したのであった。
 一方では、諸々の権力者の垂れ流す虚実入り乱れる様々の情報をば、革マル主義者としてのわれわれの価値意識・価値基準にもとづいて吟味しつつその真偽を洞察し、かつ「対象の対象的分析と対象の主体的分析」というわれわれの下向分析の方法を駆使して「いつ・どこで・誰が・何を・何のために・どのように」おこなったかをあきらかにすること。他方では、巻きおこった事件をいわゆる「大情勢」(『政治判断と認識』三六頁参照)のなかに位置づけ捉えかえすこと。――この両者の統一において事件の真相と深層が、そしてその意味が明らかにされなければならない。
 このような方法にのっとってわれわれは、次のように言うことができる。すなわち、サウジアラビアの心臓たる石油施設の中枢を的確に射抜いたかの攻撃は――たとえ表向きには認めていないのだとしても――シーア派国家イランが、フーシ派を追認役として決行したところの・アメリカ帝国主義にたいする満を持した逆襲であった、と。

U 敵のアキレス腱に狙いを定めて

 イランと米・英・独・仏・露・中の六ヵ国とが二〇一五年にまとめたいわゆる「イラン核合意」(イランの核開発を抑制するそれ)を、「オバマがおこなった最悪の合意だ」としてこれを一方的に破棄した(二〇一八年)アメリカ大統領トランプ。そしてそれ以降、イランを国際金融取引から締めだしイラン産原油の輸入停止を世界に強要する制裁(ロウハニ言うところの「経済的テロリズム」)を発動するとともに、ペルシャ湾に原子力空母や戦略爆撃機などを差し向けてイランへの軍事攻撃の態勢をとり、イラン攻撃の口実をつくるためにオマーン湾において日本のタンカーを砲撃し・これをイラン革命防衛隊になすりつけるという謀略をもデッチあげた(六月)アメリカ権力者。そして現に、トランプが決行直前に止めたとはいえ一度はイラン軍事攻撃を強行しようとした彼ら。
 こうした軍国主義帝国アメリカの軍事的スーパー・パワーをバックとした傲岸きわまりない対イラン要求(核合意の結び直し)をまえにして、イラン権力者は「一打逆転」を狙いだしたにちがいない。ペルシャ湾の向こう側には、アメリカの同盟国サウジアラビアの原油採掘施設・精製施設・(海水を真水に変える)淡水化施設などが、脇腹を無防備にさらして寝そべっている犬のように、あちらこちらに横たわっている。
 フーシ派がイエメンの南西部で米軍の無人機を撃墜した八月二十一日頃、ハメネイは言った、「アメリカが悔悟せぬかぎり、いかなる会談もない」と。またロウハニは言った、「われわれにも我慢の限界がある。原油輸出がまったくできなくなれば、国際的な海上輸送路の安全はこれまでどおりにはいかないであろう。一方的なイランへの圧力は各国の利益にならず、この地域の安全は保障されない」と。アメリカ帝国主義にたいする断固たる反撃の決意が漲っているではないか!
 ちなみに、いまイエメンは、サウジアラビアが支援するハディ暫定政権(全土の掌握をめざしている)とUAEが支援する「南部移行評議会」(南部の分離・独立をめざしている)とが分裂し、この両者と、首都サヌアおよび北部の大部分を支配するフーシ派とのあいだで、三つ巴の内戦となっている。こうした状況のなかで――これまでもイエメン内戦は「サウジアラビアとイランの代理戦争」の様相を色濃くしてきていたが――八月十三日、イラン最高指導者ハメネイはフーシ派の広報官を首都テヘランに招いた。そしてそこでハメネイは「イエメン分裂を企むサウジの陰謀への強い抵抗」を呼びかけ「イエメンの一体性を守れ」と檄を飛ばして、「フーシ派支持」をあらためて公然と表明したのであった。
 このフーシ派は、イランが設計した無人機のコピーで・レバノンのヒズボラの専門家の助けを借りてイエメン内で組み立てられた無人機とミサイルを持っている。これらを用いて今年にはいってから九月まで四十七回にわたってサウジへの反撃にうってでているといわれている。まさにフーシ派は、九月十四日の「サウジの石油施設攻撃」の追認者としてうってつけなのだ。
 イランの権力者たちは考えたにちがいない。――大統領選を目前に控えて、トランプには対イラン戦争に踏みきる意志がないことは、六月二十一日にイランによる米軍無人偵察機撃墜への報復としてイランへの軍事攻撃に踏みきろうとしたその直前にトランプ自身がこれを止めたことからしても、また中東全域への米軍の派遣を大幅に縮小することを選挙公約に掲げていることからしても、明らかである。また経済制裁も、アメリカが打つ手はもはやほとんど残ってはいない。しかも原油生産は大幅に縮小したとはいえ、中国やインドが「制裁」の脅しに抗って依然としてイランから原油を購入している。そして、過去の原油高で蓄積した外貨が残っていて経済制裁への耐性を示しており、たとえトランプが再選を果たしたとしても五年程度は凌ぐことができる。そしてイランが中洋世界の盟主の地位をかちえるためにも、また国内の「宿敵アメリカ撃つべし」の声にこたえるためにも、今こそうって出るべきだ……。
 こうして腹を固めたハメネイらイランの指導部は、アメリカ大統領トランプが戦争屋ボルトン(大統領補佐官)のクビを切ったまさにそのタイミングをみて(しかもイスラエルではネタニヤフ政権が倒壊寸前になっている)、「時は今だ!」と攻撃に踏みきったにちがいないのだ。

V 周章狼狽するトランプ

 イラクとの国境沿いのイランから発射されたといわれる巡航ミサイル・ドローンはアメリカ政府の全面的支援で張りめぐらされたサウジの防空レーダー網やパトリオットミサイルシステム網を完璧にかいくぐり、石油施設にピンポイントで命中した。しかもイランが標的にしたのは、一定の時間の後には修復が可能な一部の石油精製施設であった。彼らは巧妙にも、もっと重要な原油の採掘施設や海水を淡水化する施設は、次なる攻撃対象として残した。「下手に動けば、二の矢があるぞ」と威嚇したのだ。
 まさにこのゆえに心底戦慄したのが、サウジアラビアの皇太子ムハンマドであり、アメリカのトランプであった。
 見よ、トランプの狼狽ぶりを! 当初は大統領の顔色をうかがうソンタク男≠フポンペオが、ボルトン解任で調子にのって、「攻撃したのはイランだ。戦争行為だ」とわめいた。だがトランプは、「今のところそのようだが、もう少し様子を見よう」。そして「イランの支援による攻撃のようだ」とか「イランの関与と責任は否定できない」とかと弱々しくつぶやきつつ、「戦争は起こしたくない」とツイッターでくりかえした。そこでポンペオもまた大統領をソンタクして、「平和的解決を」などと言いだしたのであった(九月十九日、訪問先のUAEで)。
 軍事的脅迫と経済制裁とによってイランを締めあげ、ニューヨークでの国連総会を機にロウハニとのあいだで「歴史的会談」を実現するというのが、いまや「アメリカ・ファースト」ならぬ「トランプ・ファースト」「選挙ファースト」丸出しのトランプの企みであった。だが、このトランプの虫の良い夢≠ヘ、見事にうち砕かれた。見よ! 国連総会の場でのロウハニ大統領・ザリーフ外相の余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の姿を。
 ロウハニは、アメリカに向かっては「交渉の道を開きたければまず制裁を解除せよ」と突きつけ、核合意の存続を主張する欧州にたいしては「美しい言葉だけで効果的な措置がない」と切り返した。そしてエネルギー安全保障や航海の安全で協力するイラン主導の「希望の連合」構想を示しつつ、「われわれの地域は崩壊の瀬戸際にある。一つの過ちが大火事をあおりうる」と警告を発したのであった(この国連でのロウハニ演説はイラン国営放送で生放送された)。

W 9・14事件の政治的・軍事的・歴史的意味

 9・14サウジ石油施設への攻撃事件――その政治的・軍事的、そして歴史的意義はどこにあるのか。
 実に何ヵ月にもわたって原子力空母や戦略爆撃機などを差しむけ、イランにたいする軍事攻撃の態勢をとってきた軍国主義帝国アメリカの大統領トランプが、いま、サウジアラビアを攻撃したイランにたいして「平和的解決」を呼びかけている。しかも、ミサイル防衛システム「パトリオット」やレーダー・システムやこれを運用する米兵二〇〇人を送って、サウジアラビアの防空体制の補強に大童となっている。そればかりではない。トランプ政権はいまやイランから、「一つの過ちが大火事をあおりうる」とか「全面戦争になってもよいのか」とかと脅しをかけられてさえいる。
 これらのすべては、まさに軍国主義帝国アメリカのシーア派宗教国家イランへの敗北を鮮やかに示すもの以外の何ものでもないのだ。
 かの事件は、軍国主義帝国アメリカの歴史的というべき力の衰退≠まざまざと浮き彫りにした。しかも同時に、トランプ率いるアメリカがその軍事的スーパー・パワーをバックとしてアメリカの国家意志を他国に強引に押しつけるというこのやり口(隷従化戦略)が、「張り子の虎」にすぎないことをも暴露したのである。――このことが、イランによるサウジ攻撃事件の第一の意義である。
 そして第二の意義は、半世紀以上におよぶアメリカ帝国主義の中東支配の最後的終焉を全世界に知らしめたということである。
 砂漠に眠る原油によって手にしたオイルダラーをアメリカ製兵器に湯水のように注ぎこんで、軍事強国として中洋に君臨することを夢想してきたのが、サウジアラビアの権力者どもであった。だがしかし9・14事件をまえにして、彼らは、今回攻撃された原油精製設備のみならず石油採掘施設や海水の淡水化施設などがさらに攻撃された場合には国家機能が完全に麻痺してしまうがゆえに、<宿敵>イランにたいする報復攻撃に踏みきることができないし、同盟国アメリカにそれを要請することもできない。
 こうして、「スンナ派の総本山」として「アラブの盟主」を自他ともに任じてきたサウジアラビア国家の政治的威信は、いまや地に堕ちてしまったのだ。
 それだけではない。アメリカ大統領トランプの刎頸の友≠ナあるイスラエルのシオニスト・ネタニヤフが率いるリクードもまた、サウジ石油施設攻撃の直後に実施された総選挙において元軍人ガンツが率いる野党「青と白」に敗北を喫した。今後「連立交渉」に失敗すれば、ネタニヤフは首相の座を追われるだけではなく監獄が待っている。いまやネタニヤフ・シオニスト政権は最期の時を迎えているのである。
 このようなものとして、9・14サウジ石油施設攻撃事件は、イスラエルとサウジアラビアとを拠点とした軍国主義帝国アメリカの中東支配の最後的終焉を全世界に告げ知らせるものとなったのである。トランプ政権によるペルシャ湾の「航行の安全保障」を名分にした「有志連合」結成の呼びかけには英・豪・サウジ・バーレーン・UAEの五ヵ国政府しか呼応せず、発足を前にして実質上難破している。
 トランプのアメリカ帝国主義と政治・軍事・経済のあらゆる部面で国際的に激突している中国・ロシアの両権力者はこのイランの逆襲を契機にして、いっそう中東地域への関与≠強化するにちがいない。プーチン政権はイランのみならず、シリア、トルコへの軍事協力の拡大に拍車をかけ、習近平政権は「一帯一路建設」の名においてこの地域の石油資源を囲いこみ、中華経済圏≠ノ組みこむ策動を強力におしすすめるであろう。
 そして、九月十四日にサウジ石油施設にたいしておこなわれた攻撃こそは、現代における戦争とくに局地戦の様態変化をも衝撃的なかたちで暴露した。これが第三の意義である。
 すなわち、膨大な核兵器をもち「軍事技術革命」によって達成されたハイテク兵器で武装された米軍兵力をもつアメリカ帝国主義。彼らはこれまで軍用ドローンを「対テロ戦争」という名のムスリム人民殺戮戦に投入し何万人もの無辜(むこ)の人民の命を奪い去ってきた。だがいまやこのアメリカが、数十万から数百万円の費用で・3Dプリンターで二十四時間もあれば作成できる「貧者の兵器」となったドローンによる攻撃のまえにいわば敗退を喫したのである。
 アメリカ製軍用ドローンを巧みに無線誘導し捕獲したイラン(革命防衛隊)がこのドローン技術をコピーし、「貧者の兵器」に仕立てあげてシーア派の諸勢力に配っている。「中東ドローン戦争」といわれるゆえんである。このドローンにいまや逆襲されているのが、アメリカ帝国主義なのである。
 低空低速で地を這ってくるドローンや巡航ミサイルは、高高度から高速で落ちてくる弾道ミサイルの迎撃を想定した「パトリオット」(サウジアラビアが一二兆円もの巨費をつぎこんで購入してきたアメリカ製兵器、一発発射すれば三億円以上がかかる)などでは容易に撃ち落とせないのであって、今回の攻撃は既成のミサイル迎撃システムの無力性を完膚無きまでに暴きだしたのだ。
 アメリカ帝国主義による軍事侵略戦争は、ことごとく敗北してきたのであるが、石油大国のアキレス腱を一挙に露呈させた今回の9・14事件は、軍事的超大国アメリカの局地戦が今後必ずや敗北するであろうことを鮮明にしたのである。

 だがもちろんわれわれは、警戒を怠ってはならない。いまや「ウクライナ疑惑」によって窮地に立たされているトランプは、追いつめられれば追いつめられるほどにUSナショナリズムの高揚を策し、イランにたいする大規模な軍事攻撃の挙に出る可能性がある。イランにたいする経済制裁の手がもはや残っていないがゆえに、ますますそうなのである。
 われわれは、「アメリカ帝国主義のイラン軍事攻撃阻止! ホルムズ海峡への日本国軍の派遣阻止!」の反戦反安保闘争を、さらに強力におしすすめなければならない。たたかう労働者・学生は、「反安保」を完全に放棄した日共系平和運動をのりこえ、<反安倍日本型ネオ・ファシズム政権>の闘いを巻きおこすために、さらに奮闘しようではないか。
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出版産業の「新生」を第一義として「賃上げ」闘争を放棄

出版労連「運動方針」の批判

(以下見出し)

「ハラスメントとの闘い」の前面化

「課題と方針」からの「賃上げ」要求の削除

資本家どものリストラ施策を是認

安倍式「働き方改革」への呼応

「言論・出版・表現の自由を守れ」方針の錯誤

組織の弱体化への無為無策

 組合組織の戦闘的強化をかちとれ
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最新号紹介

新世紀 The Communist

第303号 2019年11月

習近平政権の香港人民への武力弾圧を許すな

反改憲・反戦反安保闘争の一大前進をかちとるために

 ◆本号の巻頭には「ネオ・スターリニスト習近平政権の香港人民への武力弾圧を許すな」を掲載した。逃亡犯条例改定法案に反対し普通選挙実施などを要求し二〇〇万人のデモやストライキで起ちあがっている香港人民への熱い呼びかけ、全世界人民への檄が発せられている。
 ◆「今こそ戦争勃発の危機を突き破る反戦の炎を」(大泉柚)は、国際反戦中央集会の基調報告だ。米―中・露激突のもとで、トランプ政権は日本国軍をアメリカの属国軍として対中国の前線である南シナ海やインド洋に展開させ、さらにイランを封じこめるためにペルシャ湾にまで引きずりだそうとしている。
 憲法改悪・ペルシャ湾派兵・日米安保強化の三つの攻撃は、分離しえない一つの事態の三側面というべき歴史的攻撃にほかならない。それゆえにわれわれは、三つの闘争課題を一体のものとして設定し、のりこえの立場にたって戦術を解明していくべきである、と本論文では明らかにされている。
 七月参院選の「結果とその意味」を鮮明にしているのが、「憲法改悪とペルシャ湾への日本国軍出撃を阻止せよ」だ。改憲勢力が三分の二議席を割りこんだにもかかわらず「勝利だ」と強弁し改憲攻撃に突進する安倍政権、このネオ・ファシスト政権にたいする一大闘争にうってでることをよびかけている。
 ◆「日韓GSOMIA破棄と東アジアの地殻変動」は、韓国・文在寅政権のGSOMIA破棄によって、アメリカ帝国主義を要とする米日韓三角軍事同盟が、音をたてて瓦解したことを明らかにしている。南北朝鮮の統一≠ニいう民族的悲願を実現するために文在寅政権は、今や韓国の安保・外交戦略の基軸を中・露との関係強化をはかるものへと転換しつつあるのだ。「安倍政権による韓国への報復的経済制裁を許すな」は日本軍国主義の朝鮮植民地支配を居直る安倍ネオ・ファシスト政権を弾劾し、また「『徴用工』―朝鮮人強制連行・強制労働の犯罪」(伊平屋歩)は天皇制ボナパルチズム権力による苛烈な朝鮮人民支配の実態を暴きだしている。
 ◆過去五年間で一八万件以上にものぼるかんぽ生命の「不適切販売」は、経営陣が労働者に過酷なノルマを課し低賃金で保険営業にかりたて強制したものであると暴き弾劾しているのが、「労働者に責任を転嫁する郵政経営陣」(西澤真実)である。「郵政六十五歳定年制―低賃金で過酷な労働を強制」(奈良山出)は、高齢労働者の「本格的活用」の名のもとに深夜勤や八時間フルタイム雇用を強要する悪らつな攻撃を打ち砕けとよびかけている。安倍政権の社会保障切り捨て策のもとで進むロボット導入やICT活用と労働強化の攻撃に反対しようとよびかけているのが、「『介護の生産性向上』を号令」(釜戸菜々)である。
 ◆「『資本論』につらぬかれたマルクスのパトスをわがものに」(相馬克子)は、不破哲三の「未来社会論」との対決をつうじて同時にみずからの思想的背骨を鍛えていくという意欲あふれる学習論文である。
 <シリーズ・わが革命的反戦闘争の歴史>は、「一九七一年沖縄返還協定粉砕闘争」として「5・19沖縄全島ゼネスト」と「首都での調印・批准阻止闘争」を収録した。国際反戦集会にむけた海外へのアピール(英文)と海外から寄せられたメッセージ(原文)も掲載した。
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 全学連第89回大会をかちとる
 9・24〜25
 改憲阻止・ペルシャ湾派兵阻止・日米安保粉砕の闘争態勢を構築 
 全学連は九月二十四日、二十五日の両日、首都・東京において、第八十九回定期全国大会を開催した。この大会において全学連の学生たちは、<憲法改悪阻止・ペルシャ湾派兵阻止・日米安保粉砕>を課題とする今秋期闘争の指針を明らかにした。さらに、たたかう学生たちは、全学連運動のさらなる飛躍をかけて、有木新委員長を先頭とする新執行部体制を築きあげた
新執行部のもと秋期闘争にうってでる決意を固める
(9月25日)
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 9・19 鹿児島
「改憲阻止! ペルシャ湾派兵阻止!」
 県民集会に怒りの声轟く 
九月十九日、鹿児島市の鹿児島中央駅前で「戦争法廃止! 安倍改憲阻止!! 9・19県民集会」(「憲法壊すな・戦争法廃止! かごしまの会」主催)が開催された。安倍政権が侵略戦争法を強権的に制定してから四年のこの日に、約三四〇名の労働者・学生・市民が結集し、「改憲阻止!」「ペルシャ湾派兵を許すな!」の怒りの声をあげた。鹿児島大学のたたかう学生たちは、安倍政権による憲法改悪とペルシャ湾派兵を絶対に打ち砕く決意に燃えて、この日の闘いに勇躍決起した。
鹿児島大生が<反安保>の旗高く奮闘
(9月19日、鹿児島中央駅前)
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