第2586号(2019年9月16日)の内容

<1面>
米・中の軍事的角逐の新局面
 米―中・露核戦力強化競争反対の反戦闘争を推進せよ!
<4〜5面>
MMT――通貨増発による<貧困と格差>打開の幻夢
<3面>
消費税増税断固反対!
年金「財政検証」
 破綻のツケを労働者・人民に転嫁
<6面>
Topics 年金制度の大改悪粉砕!
改憲・ペルシャ湾派兵を阻止しよう
 自治体労働者委員会
<2面>
〈ドル支配〉に挑戦する習近平の中国
<7面>
南シナ海 米―中の軍事的角逐
◎メコン川開発をめぐる米―中の対立
<8面>
第57回国際反戦集会海外からのメッセージ D
LALIT(モーリシャス)/コナショフ(ロシア)/ロシア共労党チュメニ州委

 「解放」最新号


























  


米・中の軍事的角逐の新局面

米―中・露核戦力強化競争反対の反戦闘争を推進せよ!


文在寅政権のGSOMIA破棄と東アジアの地殻変動

 韓国の文在寅政権が、安倍政権にたいして韓・日間の軍事情報包括保護協定=GSOMIAの破棄を突きつけた(八月二十二日)。中国や北朝鮮にかんする軍事機密情報をアメリカの統括のもとに三国で即時に共有することはミサイル防衛システムの生命線をなすのであって、GSOMIAの破棄を文在寅政権がトランプ政権の制止を無視して強行したことは、対中国・対北朝鮮の米日韓三角軍事同盟の瓦解を意味する。
 元徴用工への賠償を日本企業に命じた韓国大法院判決の撤回をごり押しする安倍政権が傲然としかけた輸出優遇国から韓国を除外する経済制裁、これへの対抗措置として、また次期法相に指名したみずからの右腕・゙国(チョグク)を標的とした「娘の大学不正入学」などの疑惑への追及をかわし・政権維持をはかるためにも、文在寅は日韓GSOMIA破棄に踏みきり「反日」ナショナリズムを鼓吹しているのだ〔九月九日に法相任命を強行〕。文在寅政権は同時に、アメリカ権力者がINF(中距離核戦力)全廃条約の失効と同時にアジアへの中距離ミサイル配備計画を明らかにしたことにたいして、韓国への配備を拒否すると中国権力者に確約したり(八月二十日の中韓外相会談)、独島(竹島)において韓国軍の「島嶼防衛訓練」――「竹島」の領有権を主張する日本を仮想敵国としたことが明白なそれ――を大々的に強行したりもした(八月二十五日)。
 こうした文在寅政権の動きは、安保・外交戦略の基軸を、米・韓・日の対北朝鮮軍事協力から、中国・ロシアおよび北朝鮮との政治的・経済的関係の強化に移しつつあることのあらわれにほかならない。第二次世界大戦後=南北分断以後一〇〇年を迎えるまでに南北統一の民族的悲願を達成し「世界にそびえ立つワンコリア」を実現するという展望を思い描いているのが文在寅なのである。そのために、韓国にとって最大の貿易相手国であり・北朝鮮の後ろ盾を任じている中国との協力関係を強めることを基礎として「韓半島の平和体制」の構築をめざしているのだ。〔だが、南北が手を結んで「平和経済」を推進するならば統一を実現できるという文在寅が描く未来図≠ヘ、ネポチズム専制支配を護持せんとしている金正恩の北朝鮮との政治支配体制の根本的相違を無視しているがゆえに、画餅でしかない。〕
 日韓GSOMIA破棄に踏みきった文在寅政権にたいしてトランプ政権は、「失望した」「米軍にたいするリスクが増大する」と非難し、撤回を迫っている。「世界の覇者」の座をアメリカから奪取せんとしている中国を「現状変更勢力」と烙印し・これを封じこめることを世界戦略の基軸にすえたトランプ政権にとって、対中国軍事包囲網の中核をなす米日韓三角軍事同盟を崩壊させる文在寅政権の裏切り≠ヘ看過できないのだ。トランプ政権は文在寅政権を米韓軍事同盟の鎖で縛りあげ、在韓米軍駐留経費負担の五倍化や対イラン「有志連合」参加=ペルシャ湾派兵などの要求を突きつけるにちがいない。
 他方、習近平政権とプーチン政権は、中・露の軍事情報を収集する在韓米軍の「高高度防衛」ミサイルシステム=THAADを撤去に追いこむために、文在寅政権にたいする揺さぶりを強めるであろう。
 米日韓三角軍事同盟から韓国が離脱する志向を文在寅政権が鮮明にしたことによって、いまや東アジア・朝鮮半島における<米・日・韓>対<中・露‐朝>の構図が崩れさり、構造的激変がもたらされつつある。韓国が中・露‐朝に与してゆくならば、日本列島が文字通りの対中国の最前線となる。このゆえに、日本をばアメリカを守るMDシステムのみならず中国を標的とするミサイルの前進基地たらしめようとしているのがトランプ政権なのだ。
 朝鮮半島とならんで東アジアの地殻変動の焦点となっているのが、香港と台湾である。「逃亡犯条例改定案」の「完全撤回」のみをもって収拾を図ろうとした北京政府・香港行政府にたいして、香港の労働者・学生・人民は「五大要求は一つも欠かせない」を掲げてたたかいつづけている。この香港人民の闘争を、建国七十周年記念式典を挙行する十月一日までに圧殺することに、習近平政権は血眼になっている。深センに集結させた武装警察と香港駐留の人民解放軍がいつでも武力弾圧にうってでる態勢をとっているのだ。軍事・経済・政治の全部面におけるトランプのアメリカとの激突にかちぬくことに全力を傾注するために「内憂」をとり除く、すなわち香港人民のデモを鎮静化させ・中国本土に伝播することをなんとしても阻止せんとしているのが、習近平政権なのである。
 香港警察の人民大弾圧を眼前にした台湾の労働者・人民のなかから、習近平が一月に明示した「一国二制度の台湾への適用」による「統一」なるものに断固として反対する声がまきおこっている。これを背景として、「一国二制度反対」と「香港デモ支持」をいちはやく表明した蔡英文が、来年一月の総統選挙に向けて国民党候補・韓国瑜にたいして優位に立つ情勢に転回している。半年前には国民党の「親中派」候補が優勢を誇っていた状況からの逆転がもたらされたのだ。
 「台湾問題の解決・国家の完全統一」をなしとげおのれの歴史的業績たらしめる野望に燃える中国国家主席・習近平は、総統選で「独立志向」の民進党・蔡英文を叩き落とし台湾で高揚する「一国二制度による統一反対」の気運をかき消すためにも、なんとしても香港人民のデモをおさえこむことに必死になっている。
 北京官僚政府は「人民解放軍は台湾を中国から分離しようとする者を断固として打倒する」と宣言し(「新時代の中国国防」白書)、台湾海峡において軍事演習を連続的に強行している。「台湾独立」を志向する蔡英文政権と、この政権を――歴代のアメリカ政府が掲げてきた「一つの中国」政策を実質上破棄して――支えているトランプ政権を牽制する示威行動をくりかえしているのだ。これにたいしてトランプ政権は、南シナ海で展開してきた「航行の自由作戦」を台湾海峡においても開始するとともに、六十六機もの新型F16V戦闘機の売却(総額八〇億ドル)を決定するなど蔡英文政権への軍事援助を一挙的に強めている。台湾をめぐって、米・中の軍事的緊張がかつてなく高まっているのである。
 朝鮮半島、香港、台湾、そして中国が人工島の軍事要塞化を完成しアメリカが巻き返しに必死になっている南シナ海――これらを焦点として、アメリカと中国(およびロシア)との角逐の新局面がひらかれ、東アジアに地殻変動がひきおこされているのである。

(以下、見出し)

ミサイル・宇宙大軍拡競争への突入

世界の覇者の座を賭けて非和解的に激突する米・中

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通貨増発による<貧困と格差>打開の幻夢

米民主党内「民主社会主義者」が担ぐMMT

A 末期資本主義におけるケインズ政策の焼き直し

 昨二〇一八年のアメリカ中間選挙において、格差と貧困、移民排斥・社会の分断がひろがるアメリカ社会の変革≠訴え、下院議員に初当選した民主党内プログレッシブ(進歩)派≠フアレクサンドリア・オカシオ=コルテス。「民主社会主義者」を標榜するこのプエルトリコ系女性議員が取りあげたことで一躍注目を集めはじめたのが、MMT(Modern Monetary Theory 現代貨幣理論)なるものにほかならない。
 民主党は今年二月に、オカシオ=コルテスが中心となってまとめた「グリーン・ニューディール」決議案を、アメリカ議会に提出した。環境保護政策によって数百万人規模の雇用を創出したり医療保険などの社会福祉の拡充をはかる、という内容からなるこの決議案を実行するための財源(十年間に七兆ドル)を、ドル通貨の増発で賄う考えであるとオカシオ=コルテスが説き、これを基礎づける理論としてもちだされたのがMMTであった。(この決議案は、三月下旬の米上院において、共和党のみならず民主党の一部議員も反対に回ることによって、否決された。)
 プログレッシブ派≠フリーダーとして前回に続いて大統領選の民主党候補指名争いにのりだしているバーニー・サンダースはいま、MMTを理論的拠り所にして、総額一兆六〇〇〇億ドルに達する学生ローンを帳消しにする法案をうちだし、貧困に苦しむ若年層を中心にして支持者の拡大をはかっている。
 〔ちなみに、日本においてこうしたプログレッシブ派≠フ主張とそれを基礎づけるMMTをとりいれ、消費税の廃止、奨学金返済の帳消し、全国一律最低賃金一五〇〇円を政府が補償することなどの諸政策を唱えているのが、れいわ新選組・山本太郎である。〕
 ブルジョア・マスコミからは異端の理論≠ニいうレッテルを貼られているMMT。サンダースの経済顧問をつとめるステファニー・ケルトン(ニューヨーク州立大教授)らが提唱しているこの理論は、現代帝国主義世界にひろがる失業と貧困、所得格差の絶望的なまでの拡大という現実を、現存ブルジョア国家の政府の労働・社会保障・教育政策などによって変革=$・正することを希求し、こうした諸政策とその財政的裏づけを明らかにするという問題意識のもとに唱えられているといえる。
 〔この意味ではMMTは、「第四次産業革命」の名のもとに独占体諸企業が労働現場にAIロボットなどを次々と導入し、多くの労働者を失業・半失業状態に追いやっているなかで、失業と貧困の増大に危機意識をつのらせ、この深刻化する社会的諸矛盾を緩和する方策として唱えられはじめた「ベーシック・インカム」(政府が労働者・人民に基本所得を給付し保障するという政策)の考え方ともつながっている。〕
 その理論的核心は、「通貨発行主権」をもつ国家の政府は、――ハイパー・インフレをひきおこさないかぎり――政府債務の拡大(自国通貨の増発)に依拠して財政支出拡大政策をおこなうことが可能であり、「完全雇用」実現のために社会保障・教育などの諸政策を積極的に展開し需要を創出すべきである、というものにほかならない。――自国通貨増発に依拠した財政支出の拡大という手法は、国債の増発と中央銀行によるその引き受け≠ニいういわゆる「財政ファイナンス」と実質的に同じであるといえる。
 財政赤字が常態化するアメリカ国家財政のもとでも、財政赤字解消のために増税や財政支出削減をおこなうのではなく、ドル通貨の増発によって「財源」を確保し、失業・貧困の解消と拡大する所得格差の是正、教育・医療サービスの社会的保障などの諸政策をとることが可能であり推進すべきである、と力説しているのがMMT論者なのである。

 「健全財政」思想の放擲を提唱

 <ブルジョア国家の政府が、「完全雇用」などを政策目標として掲げ、政府債務(自国通貨増発)によって財源≠確保し財政支出拡大政策を展開する>――MMT論者が唱えるこうした政策の骨組みは、不況をのりきるために、管理通貨制を基礎として、ブルジョア政府が赤字国債の発行に依拠して有効需要創出のための財政スペンディング政策を実施する、といういわゆる「ケインズ政策」のそれと基本的に同じであるといえる。大きく異なっているのは、国家財政についての考え方である。
 ケインズ政策では、国家財政赤字をつくりだして財政支出拡大策を実施することは、あくまでも不況のりきりの局面における一時的な問題であって、中長期的にはこうした財政赤字は税収増や財政支出削減によって解消し、均衡財政を維持するということが大前提とされていた。これにたいしてMMTのばあいには、「健全財政」の維持という考え方そのものを否定し放擲することによって、財政赤字の常態化を容認し、財政スペンディング政策の積極的推進を位置づけているわけなのである。この意味では、MMTは財政赤字の常態化のもとでのケインズ政策の復活≠フ試みにほかならず、一九七〇年代以降、スタグフレーションに突入した帝国主義諸国において財政赤字の膨張をかかえて行き詰まったケインズ政策をば、「財政ファイナンス」を容認する理論的枠組みをひねりだすことによって弥縫し、二十一世紀の末期資本主義において深まる<格差と貧困>を打開するための政策として焼き直し、再登場をはかったものであるといえる。「財政ファイナンス」はこれまで、「財政規律」を喪失させてハイパー・インフレをひきおこし経済を破滅に導く麻薬≠ニして、ブルジョア国家の財政・金融政策における禁じ手≠ニされてきた。まさにこのタブーとされた政策を、事実上公然と推奨している理論がMMTなのである。
 そうであるがゆえに、異端≠ニされるこの理論にたいしては、このかんの金融・財政政策をになってきた部分やそのブレーンどもから、いっせいに批判が投げつけられている。米FRB議長パウエルや米元財務長官サマーズは「非現実的だ」と罵倒し、リフレ派で米民主党のブレーンとされるノーベル経済学賞受賞者クルーグマンも「支離滅裂だ」と歯牙にもかけない態度をとっている。
 けれども、そもそもこのかんの米・欧・日の帝国主義権力者がくりひろげてきた異例の金融緩和政策じたいが、金融資産バブルの狂騒とその裏面における経済低成長のもとでの貧困と格差の拡大をもたらしただけであり、いまや行き詰まりを露わにしているのであって、パウエルらがこうした現実を省みることなく、「MMTは非現実的」などと罵倒することほど破廉恥なことはない。実際、彼らがこのようにMMTを叩けば叩くほど、現実にはむしろ、赤字財政拡大政策を唱えるMMTへの関心が高まることにもなっているのである。しかも「MMTは非現実的」という批判にたいして、ケルトンらMMT論者たちが、「実質的な財政ファイナンスを続けてもインフレが進まない日本を見よ! MMTの現実性を実証しているではないか!」と反論を展開しているがゆえに、こうした関心の高まりに拍車がかけられてもいるわけなのだ。

 アベノミクス破綻がMMTを援護

 リーマン・ショック以後、米・欧・日の金融当局は、ゼロ金利に続いて大規模な量的金融緩和政策を実施するだけでなく、マイナス金利政策にも足を踏み入れる(ECB、日銀)など、異例の金融緩和政策を強行しつづけてきた。けれども、パウエルが「インフレが昂進しないのは謎だ」とぼやいているように、インフレ率は一〜二%にとどまり、ただ株式など金融資産の価格だけがバブル的に上昇してきたにすぎない。「第四次産業革命」の狂騒に包まれながらも経済低迷は続き、多くの労働者が失業と貧困にあえぎ、一握りの資産家・富裕層との貧富の差をいよいよ拡大してきただけなのである。
 しかも今、米FRBがトランプ政権の利下げ圧力に屈して金融再緩和へと舵をきったことによって、米中激突に揺れる帝国主義世界経済はいよいよ金融バブルとその破裂の危機を深めている。米・欧・日の金融政策が完全に行き詰まっていることは誰の目にも明らかなのだ。
 とりわけ、「異次元」金融緩和策を柱にして安倍政権と黒田・日銀が強行してきたアベノミクス諸政策の破綻は歴然としている。MMT論者が「日本を見よ」というように、安倍政権は、日本の財政赤字が常態化しているなかでも、赤字国債増発に依拠した大型景気対策をくりかえし(政府債務残高はいまやGDPの二・四倍に達している)、黒田・日銀は「異次元」金融緩和策の柱として国債の大量購入をおこなう(いまや国債の五割近くを日銀が保有するにいたり、購入しうる国債の涸渇に直面しているほどである)、というかたちで事実上の「財政ファイナンス」を続けてきている。にもかかわらず日本経済は、ハイパー・インフレが起きるどころか、黒田・日銀がインフレ目標に掲げた二%にも遠くおよばず、停滞しつづけているのが現状なのである。
 まさにこのゆえにケルトンは、これほど通貨を増発しても低インフレが続いている日本の現実は、「財政ファイナンス」をさらに拡大する余地があることをこそしめしているのであって、このときに財政赤字縮小のための消費税増税をおこなうのは愚の骨頂であり、MMTにもとづいて財政支出のいっそうの拡大(国債増発)による雇用創出政策をこそ推進すべきだ、と声を張りあげているわけなのである。
 〔アベノミクス諸政策とその破綻の現れにほかならない「高政府債務・低金利・低インフレ」という日本の現状を、MMTの「現実性」を実証するものに祭りあげられた安倍は、「政府債務残高の対GDP比での安定的な引き下げをめざしているから、MMTの論理を実行しているわけではない」などと弱々しく弁解し、日銀・黒田も「日銀は独立性を保っており、財政ファイナンスには当たらない。財政赤字や債務残高を考慮しないというMMTの考え方は、極端な主張だ」と区別だてに汲々としているにすぎない。〕
 「財政ファイナンス」に依拠した財政支出拡大政策を唱えるMMTが――これまでの金融・財政政策を推進してきた者たちからは「非現実的」と罵倒されつつも――注目を集め拡がってきているのは、まさしく、帝国主義諸国のこのかんの金融・財政政策、とりわけリーマン・ショック以後にとられつづけてきている異例の金融緩和政策の行き詰まりと、これらの諸政策がもたらしたマネーゲームの狂騒のもとでの社会的諸矛盾の激化にたいする、労働者・人民の怒りと失望と閉塞感の拡がりのゆえなのである。

以下見出し

B 管理通貨に幻惑されたMMTの錯誤
 「職と所得」を保障する財政政策の提唱―リフレ理論の否定
 「通貨増発に依拠した財政支出拡大」論の観念性
 金の呪縛からの解放≠説く倒錯

C 末期資本主義的<悪>の政策的修正を希求

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消費税税率10%への引き上げ断固反対!

安倍政権の大衆収奪の強化を打ち砕け

 安倍政権は十月一日からの消費税税率一〇%への引き上げを強行しようとしている。生活必需品や電気・ガス・水道・鉄道・バス運賃などの公共料金にすべからく課税される消費税の税率引き上げは、低所得者の生活と家計を直撃する。労働者・人民は、賃金切り下げ、年金給付費の削減、各種保険料負担の増大によって、すでに貧窮に叩きこまれている。一〇%という二桁におよぶ消費税税率への引き上げによってさらなる貧困地獄に追いこまれるのは明々白々だ。
 大多数の人民が消費税税率一〇%への引き上げに反対しているにもかかわらず、首相・安倍は、七月の参院選において自・公でかろうじて過半数を超えたことをもって「国民は消費税増税の必要性がわかっている」などとうそぶき増税に突進している。安倍政権の反人民的な大増税攻撃を絶対に許してはならない。

軽減税率・ポイント還元――「増税対策」の欺瞞

 安倍政権は、このかん消費税増税が既定事項ででもあるかのような諸施策をとってきた。各地方自治体にプレミアム商品券をバラマキ配布させ、複数税率対応のレジ導入を奨励する宣伝をマスコミをつうじて垂れ流してきた。そしていま「低所得者救済」などと称して、労働者・人民の痛税感をやわらげる¥煤Xの「増税対策」をうちだしている。
 「軽減税率制度」は、食堂やコンビニなどのイートインコーナーで外食・店内飲食する場合は税率一〇%だが、飲食料品(持ち帰り含めて)の税率は八%とするという、あたかも二%減税であるかのような錯覚≠悪用した課税補完策だ。低所得者への増税緩和措置などと宣伝されているが、食品への支出の絶対額が多い富裕者への恩恵≠ェ大きく、低所得者ほど負担割合が重い消費税の「逆進性」はなんら解消しない。
 この煩雑な課税制度を敬遠し、外食産業の一部大手ファストフードチェーンが、店内飲食と持ち帰りの際の販売価格を統一するという。価格を維持するために大手企業が、原材料などの仕入れ先の中小・零細企業にツケ回しすることは火を見るよりも明らかだ。
 また、電子マネーやクレジットカードを利用して買い物をするキャッシュレス決済の場合に二%もしくは五%のポイントが戻る「ポイント還元制度」(来年六月までの期間限定)も人民を欺瞞する増税対策だ。カードを所持し使用できる富裕層が高い買い物をするほど有利な制度だ。経済産業省からポイント還元実施の認可を受けた登録数は九月二日時点で二八万店と対象店の一割強にすぎない。ポイント還元制度は、中小・零細店舗に消費税納税とカード会社への重い手数料負担を強い、カード信販会社、金融諸機関、端末機器を製造するICT企業・電機独占体に莫大な利益をもたらすものなのだ。
 安倍政権が「キャッシュレス決済」の普及に突進するのは、「第四次産業革命」にとって不可欠なビッグデータの集積・活用をこの機に一気に促進することを目論んでいるからだ。海外に比して普及度の低いキャッシュレス決済率を高め、人民大衆の消費・購買データを一元的に集約・蓄積することこそを狙っている。「消費税対策」と称するキャッシュレス決済の普及策は、「個人情報」の国家的管理・総監視社会の構築をつうじたネオ・ファシズム支配体制強化の企みと一体のものなのだ。
 「低所得者支援」などと喧伝し安倍政権がうちだしている増税対策のことごとくが大企業支援策だ。それらは、政府・支配階級が大増税を貫徹し人民から租税を情け容赦なく取りたてる、まさに苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)≠フための目くらまし以外のなにものでもない。

軍事費増大・大企業優遇策への突進

 安倍政権は、大増税攻撃と同時に社会保障の切り捨てを強行している。介護・医療・年金などの社会保障費の政府支出を大幅に削減し、人民には「自助努力」と称して負担増を強制している。要介護1・2の人を介護保険給付対象から除外、六十五歳以上の高齢者が支払う介護保険料の値上げ、後期高齢者の医療費自己負担の一割から二割への増大、生活保護の生活扶助費削減、年金受給開始年齢の引き上げなどなど、高齢者・低所得者を狙い撃ちにして犠牲を強要しているのだ。
 その他方で安倍政権は、大独占企業には法人税減税のほか「研究開発減税」・「賃上げ減税」などの名で税負担を軽減・免除する優遇税制を実施しつづけている。しかも消費税そのものが輸出製造業に巨額の利益をもたらす。輸出免税制度によって、たとえばトヨタ自動車は二〇一八年度決算で消費税を一円も払っていないどころか四五〇〇億円以上の還付金を受けている。消費税税率が一〇%になれば五七〇〇億円以上の還付金がころがりこむ。
 資本金一〇億円以上の独占企業の内部留保は、四四九兆円を越え過去最高を更新した(一八年度統計)。大企業の資本家どもは、労働者の首切り・賃金カットを断行することによって企業業績を回復・向上させるとともに、政府の大企業優遇策によって史上空前の巨大利益をあげているのだ。
 安倍政権が八月三十日に発表した二〇二〇年度予算の一般会計の概算要求は、一〇五兆円に膨らみ過去最高を更新した。とくに防衛省が提出した軍事費の予算案は五・三兆円を超え過去最大だ。安倍政権は、アメリカ・トランプ政権の要求に唯々諾々と応え、アメリカの言い値で契約する「対外有償軍事援助(FMS)」によってイージス・アショアや大量のF35戦闘機などの超高額な兵器を爆買い≠オている。日米安保同盟の鎖で締めあげられている安倍政権は、アメリカ製の武器・装備の購入に湯水のように血税を注ぎこんでいるのだ。
 米―中・露激突下の世界的戦争が勃発しかねない状況のもとで、首相・安倍は、トランプの要求に応じて日本国軍を中東に派遣し、アメリカとともに戦争をやれる軍事大国へと日本を改造するために、憲法第九条の改悪と大軍拡の財政的基盤を確立することに狂奔している。
 アベノミクスの諸政策によって「デフレ脱却・景気回復」をうながし「財政再建」と「賃金上昇」を実現するなどという幻想は完全に潰えた。その破綻を弥縫し労働者の実質賃金の大幅減少という実態をおし隠すためにデータ偽造に手を染めたのが安倍政権だ。この極反動政権は、さらに膨らむ財政赤字を補填し、巨大化する軍事費と大企業優遇策の財政的保証に充てることを核心的狙いとして、消費税大増税にうってでようとしている。
 独占資本家どもは労働貴族の協力のもとに、労働者に容赦のない賃金カット・解雇攻撃を加えている。非正規雇用形態へのきりかえを迫り、賃金・諸手当の大幅削減を強いている。このうえ安倍政権は、社会保障切り捨て・大衆収奪を強化し、労働者・人民を絶望的な貧窮生活に叩きこんでいる。貧困にあえぐ低所得者・高齢者からあまねく徴収する消費税を重税化し、労働者・人民に重犠牲を転嫁する大増税攻撃を絶対に阻止しなければならない。

大増税阻止! 改憲阻止!
<反安倍政権>の闘いを!


 安倍政権の増税攻撃を目前にして、「連合」神津執行部は「社会保障と税の一体改革」をすすめるために消費税増税を「着実に実施」せよとほざいている。「社会保障改革」の名において安倍政権が強行する社会保障切り捨て策動に何ひとつ反対せず、増税攻撃の片棒を担ぐ大裏切りをはたらいているのだ。
 また日共・不破=志位指導部は「消費税、いま上げるべきではない」を一致点とした「市民と野党の共闘」がすすんでいると公言している。景気への影響が大きいからいまは上げるべきではない≠ニ政府に要請し、消費税一〇%増税を中止せよ。代わりの財源案はある≠ニ「真の財政再建」の代案を宣伝してまわることによっては、安倍政権の増税攻撃を木っ端微塵に打ち砕く力を創造することはできはしない。
 消費税税率一〇%への引き上げ断固阻止! 安倍政権の大増税・社会保障切り捨てを粉砕しよう! 安倍政権・独占資本家の意を体し消費税増税を積極的に容認する「連合」労働貴族弾劾!「消費税税率八%への据え置き」を政府に懇願する日共指導部による闘いの議会主義的歪曲をのりこえ、労働者・学生・人民の総力をあげて「大増税反対・大衆収奪の強化阻止」の闘いを断固として創造しよう。
 安倍政権による消費税大増税阻止の闘いを、日米新軍事同盟強化反対・憲法改悪阻止の闘いと同時的におしすすめ、安倍日本型ネオ・ファシズム政権打倒へと突き進もう!

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年金「財政検証」

破綻のツケを労働者・人民に転嫁する安倍政権

社会保障切り捨てを許すな

 八月二十七日に政府・厚生労働省は、公的年金の「財政検証」を公表した。労働者・人民の怒りが高まることを怖れて参院選前の公表を意図的に遅らせていた安倍政権は、参院選後一ヵ月がたち、しかも臨時国会の開会まで一ヵ月以上あるこのタイミングで、公表に踏みきったのだ。どこまでも労働者・人民の目を欺こうとする安倍政権を断じて許すな!
 厚労相・根本は、「経済成長と労働参加が進めば、(年金制度は)おおむね一〇〇年持続可能になる」などとうそぶいている。「経済成長と(女性や高齢者の)労働参加が進めば」などという限定句をつけるところに、「財政検証」の欺瞞性と反動性がはしなくも暴露されているではないか。
 報告書では、物価が一・二〜二・〇%上昇し実質賃金が一・一〜一・六%も上昇するという三つの「ケース」の場合には、「マクロ経済スライド」によって年金を切り下げても、所得代替率(現役世代の平均手取り額にたいする年金額の比率)は五〇%を上回るという試算≠ェ示された。「良いケース」でも、三十年後には、二〇一九年度の所得代替率六一・七%から大きく低下するのだ。
 そもそも、アベノミクスのもとで実質賃金が下がりつづけているにもかかわらず、今後は実質賃金が上昇するかのような試算を提示することじたいが、まったく欺瞞的ではないか。この試算≠ネるものは、今なお年金制度が「一〇〇年安心」であるかのように粉飾するための数字上のごまかしにほかならない。しかもこの試算≠もとにしたとしても、基礎年金(国民年金)部分の所得代替率は、「マクロ経済スライド」による給付削減によって、現在の三六%台から約三十年後には二六%台へと約三割も下落するというのだ。
 そればかりではない。報告書では、「経済成長」も「労働参加」も進まなければ、二〇五二年度に積立金が枯渇するという試算も示された。その場合には、所得代替率は三六〜三八%に落ちこむとされている。
 政府・厚労省は、年金水準を引き上げる方策として、@基礎年金の加入=納付期間を五年間延長することや厚生年金の納付年齢の上限を七十五歳とすること、A年金の受けとり開始年齢を最大七十五歳まで引き上げること、Bパートタイム労働者を厚生年金に加入させ、現在は保険料を納めていない専業主婦や高齢者からも保険料を徴収することを例示した。
 要するに政府・厚労省は、年金財政を破綻させず、将来にわたって年金を受けとりたかったら、女性も高齢者もせっせと働いて保険料を収めよ。給付は七十五歳になるまで受けるな≠ニいうのだ。まさにこれは、年金財政をふくむ国家財政上の破綻を開き直り労働者・人民に犠牲転嫁するということではないか。こうした方策を安倍政権は、今秋にも策定作業を本格化させようとしている社会保障制度改革案に盛りこもうとしているのだ。
 すべての労働者・人民諸君! 労働者・人民からの年金保険料の収奪のいっそうの強化と、「マクロ経済スライド」をはじめとする給付水準のさらなる引き下げを絶対に許してはならない! 安倍政権による社会保障制度改悪に断固として反対せよ! 年額五兆円を超える軍事費やアメリカ製兵器の大量購入、「思いやり予算」をはじめとする米軍関連経費には労働者・人民の血税を湯水のように注ぎこみ、その財源の捻出のために年金をはじめとする社会保障費の徹底した削減と消費税増税などの大衆収奪のさらなる強化に突き進んでいるのが安倍政権ではないか。戦争する国づくりに突き進み、労働者・人民にいっそうの貧窮化を強いる安倍政権にたいして、今こそ怒りを叩きつけよ!

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