第2427号(2016年7月18日)の内容

本号の内容
<1面>
改憲総攻撃を打ち砕け!
 <反ファシズム・反安保>なき日共の「立憲主義守れ」
運動をのりこえ闘おう

<4面>
EU分解・世界的地殻変動の幕開き
<5面>
オバマ広島訪問を礼賛する代々木官僚弾劾
<2面>
金沢で憲法改悪反対のデモ 6・19
◎中国・ASEAN外相会合が決裂
◎「米軍基地は沖縄に集中していない」と強弁する米軍当局
<3面>
熊本大地震で露わとなった「耐震性審査」のインチキ性
<6面>
横行するパワハラに抗して闘おう
「認定子ども園」への再編をごり押し
Topics 「全労連」指導部の16春闘中間総括
<7面>
憲法改悪とネオ・ファシズム支配体制強化を打ち砕け! <下>
 自治体労働者委員会
<8面>
若き黒田さんの「学問的苦悩」
■防衛省に屈した日本学術会議

 「解放」最新号

































  


改憲総攻撃を打ち砕け!

<反ファシズム・反安保>なき日共の「立憲主義守れ」運動をのりこえ闘おう

 全国の労働者・学生諸君! 七月十日の参議院選挙において安倍政権・自公与党は、維新・「こころ」や無所属の極悪反動分子を含めれば参院の三分の二にとどく議席を手中にした。「与党勝利」が確実になるや否や安倍は、選挙期間中には口にしなかった改憲の野望をヌケヌケと語りはじめた。「自民党は改憲しようという党。その前提で票をいただいている」「いよいよ(衆参の)憲法審査会に議論の場が移って、どの条文をどのように変えるか集約される」と。辺野古新基地建設に反対する沖縄県民が、そして東京電力福島原発事故の被災民切り捨てに抗議する福島県民が、安倍政権にたいする怒りを現職閣僚の落選というかたちで突きつけた。にもかかわらず安倍は、これらを傲然と無視し「安倍政権は信認された」などとほざいているのだ。すべての諸君! 事態は風雲急を告げている。いまこそわれわれは、憲法改悪を阻止する歴史的な大闘争をたたかう態勢を、労学両戦線においてうちかためるのでなければならない。
 このかん日共指導部は、憲法改悪反対の大衆闘争も辺野古新基地建設阻止をはじめとする反戦・反基地の闘いも、そして一六春闘も、すべて「参院選挙における改憲派三分の二議席獲得阻止」の名のもとに「野党共闘」尻押しの選挙カンパニアへと歪めてきた。彼らは民進党との選挙協力の維持を最優先にして、大衆運動の場面において「反安保」「ファシズム反対」を掲げることを抑圧し、闘いが戦闘的・左翼的に高揚することを必死でおさえつけてきたのだ。一時は「第九条を守れ」さえ後景化させてきた。だからこそ改憲派による参院制圧≠キら阻止できなかったのである。日共中央の底なしの議会主義的腐敗を弾劾せよ!
 「二十一世紀の超大国」へと驀進する中国にたいする敵愾心を燃やすネオ・ファシスト安倍は、没落するアメリカ帝国主義にしがみつきながら、日米グローバル侵略戦争同盟の構築・強化に、「軍国日本」の再興に、遮二無二突進している。この政権は、「アメリカとともに世界中で戦争をやれる国」にふさわしい内実の新憲法を制定する策動を一挙におしすすめようとしているのだ。
 安倍政権・与党が選挙中に「改憲隠し」に狂奔したのは、昨年夏の戦争法制定阻止闘争における、わが革命的左翼を先頭にした巨万人民の決起に彼らが震撼させられたからにほかならない。いま具体的に日程にのぼりはじめている「憲法改正」をめぐる闘いを、われわれは、かの戦争法制定阻止闘争をうわまわる激烈な大闘争として爆発させるのでなければならない。それは、昨夏の闘いを没階級的市民主義一色に染めあげようとした日共中央の腐敗を弾劾しつつ、それをのりこえてたたかうわが革命的左翼の組織的奮闘いかんにかかっているのである。いまこそ<反ファシズム>の旗高く、安倍ネオ・ファシスト政権打倒めざして進撃しよう!

三分の二議席獲得のためのファシスト的策略の貫徹

 改憲勢力で衆参両院の三分の二の議席を獲得するために安倍政権は、参院選挙において、薄汚いファシスト的策略を弄した。「何を変えるかはまだ論議されていないから憲法は選挙の争点にならない」(安倍)などと言って、彼らは改憲問題を後景化させた。「三分の二をとれば改憲に向かう」というのは「デマの類だ」「九条改憲の可能性はゼロだ」(自民党副総裁・高村)などというウソ八百を平然と並べたてながら。
 同時に「同一労働同一賃金の採用検討」「最低賃金一〇〇〇円」「介護職員・保育士給与の引き上げ」「給付型奨学金制度の検討」など、民進党や日共が以前から掲げていた政策をみずからの選挙政策にとりこんだ。これにたいして日共や民進党は、「争点隠し」「政策論争から逃げている」などといった泣き言を並べることしかできなかった。
 NHKをはじめとする御用マスコミをフル活用して安倍政権は、「アベノミクスの継続か否か」が選挙の唯一の争点であるかのように宣伝させた。破綻を露わにしているアベノミクス諸政策を「道なかば」といいくるめつつ。
 もちろん、アベノミクスは「道なかば」なのではない。「トリクルダウン」という詐欺師まがいのデマをふりまきながらの大企業優遇策は、あらゆる部面において貧富の格差を拡大した。黒田日銀の「異次元の金融緩和」策も、「二年で物価上昇率二%」という政策目標の空念仏さを白日のもとにさらけ出している。
 それにもかかわらず安倍政権に「アベノミクスの自慢話」(『しんぶん赤旗』)を許したのは、ひとえに民進党・日共のへっぴり腰の対応のゆえであった。民進党党首・岡田は「アベノミクスを全面否定しませんが、もう限界にきているのではないでしょうか」などという弱よわしい批判に終始した。これを日共指導部はなんら批判しなかった。「社会保障・税一体改革」の名のもとに民進党は(「連合」指導部もまた)人民の怨嗟の的たる消費税の増税に固執している。それゆえに消費税増税の先送り決定が安倍政権の手柄ででもあるかのような宣伝を、民進党みずからが許している。これについても日共指導部は真っ向から批判しなかった。あくまでも岡田執行部にすり寄り、「民共共闘」の維持に汲々としていたにすぎない。
 むしろ日共指導部は、安倍政権による「民共連合は野合」という攻撃にたいして、防衛的な弁明につぐ弁明に終始させられた。「安保も自衛隊も争点ではありません」と逃げ回った挙げ句の果てに、防衛予算を「人殺しの予算」とまっとうに評価した政策委員長を更迭することによって、安倍政権と自衛隊に土下座したのが志位指導部だった。
 このような民進党・日共の腐敗しきった対応のゆえにこそ、アベノミクス諸政策の貫徹によって生活苦を倍加させられている労働者・人民にむかって安倍は、雇用が拡大した、賃金は上昇した≠ネどというファシスト的デマ宣伝を厚顔無恥に流布することができたのだ。なんたる屈辱的事態か!

憲法改悪、戦争と貧困の強制を粉砕せよ

 あらゆる手練手管を弄して参院三分の二≠フ議席を手中にした安倍政権は、憲法改悪の発議と国民投票を現実的に射程に入れて、労働者・人民にたいする悪辣な攻撃の刃をふりおろそうとしている。その第一弾として、九月中旬と目される臨時国会において、衆参両院で憲法審査会を再開することを画策しているのだ。
 憲法審査会の再開をテコにして安倍政権は、改憲の内容をめぐる論議の土俵に野党とりわけ民進党をひきずりこむことを画策している。「自民党は改憲草案を出している。民進党は対案を出すべきだ」(政調会長・稲田)、「民進党の中にも改憲に賛成する人はいる」(安倍)などとほざきながら。改憲問題をめぐる民進党内部の対立にくさびを打ちこみ、もって前原・長島らの右派勢力を抱きこむことが安倍政権の最大の狙いにほかならない。参院選挙の一人区において一定の効果≠あげた「民共共闘」を衆院解散=総選挙までに現実的に破壊するとともに、民進党そのものを分裂させようとしているのだ。
 安倍政権は、それだけでなく、「連合」組織そのものを、すでに「民共共闘」にたいする反発によって亀裂が走っているこの「連合」組織を、右から分断するための揺さぶりをかけている。「JCメタルが連合脱退を決めた」という虚偽のアドバルーンを雑誌『選択』に掲載させてゆさぶりをかけたり、「連合」や民進党が一貫して掲げてきた「同一労働同一賃金の実現」を検討するとうちあげてみせたのは、まさに「連合」傘下の一部労組を自民党支持へととりこむためでもあるのだ。
 さらに安倍は、「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」とほざきながら、「成長戦略」に謳っている「労働法制の改悪」を加速しようとしている。「参議院選挙後に」として引き延ばしてきた「高度プロフェッショナル制」=残業代ゼロ制度を実現するための労働基準法の改悪。さらに「解雇の金銭解決」=解雇フリーの制度化をただちに実行しようとしている。労働時間規制にしろ、解雇規制にしろ、労働者階級が歴史的にたたかいとってきた既得権であり、これを奪いとる攻撃は同時に労働組合破壊の攻撃なのだ。われわれは、「連合」労働貴族の闘争抑圧に抗して、労働組合の団結を強化するかたちで、この反動攻撃を粉砕するのでなければならない。
 さらに二〇一四年改悪の地方公務員法にもとづく「能力・業績に基く人事評価制度」の導入を地方自治体当局に義務づけ、もって、公務員の賃金切り下げと労務管理体制の強化を強引に貫徹している。ネオ・ファシスト政権は、全国各地方の「連合」組織を支えている自治労・日教組をターゲットとして公務労働運動とその組織を破壊することをねらっている。今日版国家総動員体制づくりにとってその要となる自治体行政組織の国家主義的統制と「愛国心」教育を徹底化するための「国定教師」づくりは、彼らにとって急務となっているのだ。われわれはこの攻撃を断じて許してはならない。
 安倍政権は、東京オリンピックにたいする「ISのテロに備える」と称して、今日版治安維持法といえる「共謀罪」を法制化する機会を虎視眈々とねらっている。憲法への緊急事態条項新設の企みとともに、この凶悪な治安弾圧法の制定をわれわれは絶対に許すわけにはゆかない。
 さらに安倍政権は、「一億総活躍社会」などと銘打って、社会保障を徹底的に削減し労働者・人民に「死ぬまで働く」ことを強制する制度をつくりだそうとしている。それだけではない。「待機児童ゼロ」と称して、保育士の育成を抜きにして、保育児童を劣悪な条件で「詰め込む場所」を増設すること、もって女性労働力を非正規・限定正社員・パート・バイトなどの雇用形態を緻密化することをとおして確保することを、政府・支配階級は企んでいるのだ。安倍政権の「一億総活躍社会」なるものは、日本企業の「稼ぐ力」の強化=国力増強≠フために、少子高齢化のもとで労働者・人民を徹底的に搾りとることの宣言にほかならない。
 「戦争と貧困」のよりいっそうの強制は同時に底なしの格差の拡大であって、これを打ち砕く力は、バラバラに分断され相互に競争することを余儀なくされている労働者たちが、労働現場において労働組合の団結を創造し強化すること以外にはありえない。第二労務部≠ニして資本家の手先と化している労働貴族どもの抑圧に抗して、断固としてたたかおう!

東アジアの戦争勃発の危機を突き破る反戦闘争を!

 東アジアはいま、米日―中露の軍事的角逐を震源とする戦争的危機に覆われている。南沙諸島・西沙諸島の軍事施設建設に続いてスカボロー礁の埋め立て準備を開始した中国・習近平政権に危機感を募らせているアメリカ権力者の意を受けて、安倍政権は、フィリピンとベトナムに巡視艇などの準兵器≠提供するとともに、それらの使用法の教育・訓練と称して両国に頻繁に海自艦船などを訪問させている。こうした海自艦の南シナ海周辺国への航行それ自体を、安倍政権は、アメリカ海軍が南シナ海で展開している「航行の自由作戦」と称する対中国の威嚇的軍事行動に実質的に呼応するかたちで実施しているのだ。
 この安倍政権の策動を習近平政権は、「日本が南海に手を突っこむ」とみなして危機意識を募らせている。そして対日の軍事行動を一挙にエスカレートしているのだ。六月八〜九日に尖閣諸島接続水域に中・露両海軍艦船が連携して航行する軍事的示威行動を強行した。六月十五日には鹿児島県の「日本領海」を、十六日には沖縄県の北大東島周辺の接続水域内を航行した。これらはアメリカ政府が南シナ海における対中軍事行動の正当化のために掲げる「公海における航行の自由」を逆手にとるかたちで強行された。さらに十七日には、東シナ海上空で自衛隊F15戦闘機二機と中国軍機とが空中戦≠展開した。こうして習近平の中国は、今や自衛隊との軍事的衝突も辞さぬかのような対抗姿勢をあらわにしているのだ。
 習近平政権は、七月十二日に国際仲裁裁判所が中国が国境線とよぶ九段線には海洋法上なんの根拠もないとの判断をくだすであろうことを想定して、くりかえしこの裁判そのものが「無効」であり「判決」を無視すると宣言している。そしてこの海域における中国の実効支配を既成事実化することを企んで、南沙諸島・西沙諸島の人工島に戦闘機や対空ミサイルを配備するなどの策動を加速している。七月五日から国際仲裁裁判所「判決」の前日の十一日まで、習近平政権は、南シナ海・西沙諸島周辺で、南海艦隊・東海艦隊・北海艦隊の三大艦隊の主力艦を集結させ、これまでで最大級の軍事演習をおこなった。
 こうした習近平政権の対米・対日の軍事的挑発・威嚇行動にたいして、安倍政権は、連日「反中国」の排外主義的宣伝をおこないながら、アメリカ権力者とともに対中国の米日共同作戦体制の強化に突進している。佐世保を拠点とする陸上自衛隊「水陸機動団」=日本版海兵隊を創設するとともに、この部隊の足≠ニして佐賀空港にオスプレイを配備する。この日本版海兵隊を、在沖米海兵隊――その出撃拠点として沖縄辺野古に新基地の建設が企まれている――と一体的に運用≠キることを、日米両権力者は計画しているのだ。そして京都府京丹後の自衛隊基地内に新設した米軍Xバンドレーダーと韓国内に新たに配備するTHAAD(最終段階高高度地域防衛)ミサイル・システム――七月七日に韓国政府が受けいれ決定――とをアメリカ太平洋軍のもとで連携させ、もって対中国の警戒・監視能力を飛躍的に強化することを企んでいるのだ。〔この韓国政府によるTHAADシステム受けいれ決定の翌日に、北朝鮮・金正恩政府は、潜水艦発射ミサイルの発射実験を強行した。〕
 今こそ、反戦・反安保の大衆的闘いを強めるときだ。戦争法撤廃・日米グローバル戦争同盟の強化反対・憲法改悪阻止の旗幟を鮮明にして、日米両権力者を震撼せしめる闘いを創造しよう!

<反ファシズム>の戦線を構築し安倍政権打倒へ!

 今回の選挙結果にたいして日共指導部は、まったく危機感がない様を露わにしている。安倍が「(改憲への)橋が架かった」と表明しているときに、代々木官僚は、「改憲勢力が議席の三分の二を占めましたが、自公は選挙戦で『憲法隠し』に終始し、国民は改憲への『白紙委任』を与えたわけでは決してありません」(七月十一日、常任幹部会声明)などという一片の寝言を表明しているにすぎない。なんというボケぶりか。ネオ・ファシスト安倍は、はじめから人民を欺瞞し議席をだまし取ることを計算して、三分の二がとれたならばただちに改憲に着手することを計画していたではないか。だからこそ選挙戦のあいだ安倍じしんは、「九条の改定はしない」とは絶対に公言しなかったのだ。
 いまなすべきは、ただちに憲法改悪阻止の大闘争を呼びかけることであって、安倍に向かってブルジョア政治の常道≠説くことではない。だがこのあたりまえのことさえも分からないほどに、まともな保守政治家≠ヨの信頼に浸りきっているのが日共の老党首&s破であり志位なのだ。
 志位は、野党共闘を「第二の段階、第三の段階に発展させていきたい」などと語っているけれども、これも寝言にすぎない。すでに安倍政権と極悪反動分子どもは、ブルジョア・マスコミをつかって「民共共闘」推進の民進党・岡田執行部の引き下ろしによる「民共連合」の破壊に、さらには民進党そのものの破壊=解体へと突きすすんでいるではないか。
 そもそも、戦争法制定を強行し、日米グローバル戦争同盟の構築・強化に日米両政府が突進しているこのときに、「反安保」を完全放棄するばかりか、「国民連合政府」の政策と称して安保条約第五条にもとづく日米共同作戦を肯定するとまで公言するとは、なんという犯罪か。「自衛隊を今すぐなくせとは言っていない」などと弁解がましく力説し、あまつさえ人民に貧困を強制しながら計上された五兆円超の防衛予算を「人を殺すための予算」と評価した党政策委員長・藤野を即刻解任し、「全面的に党の方針とは違う」などと謝罪してまわった無様さはなんなのだ。こんな対応で、日本を「世界中で戦争をする国」へと飛躍させるための安倍政権の反動攻撃を打ち砕く力が組織できるはずがないではないか。まさにベクトルが逆なのだ。
 そればかりではない。「連合」を分裂させる策略を練り、自治労・自治労連・日教組・全教などの公務員労働組合の破壊攻撃をネオ・ファシスト政権が加速しているときに、「労組動員型の運動は古い」などと公言して労組を主体とした改憲阻止闘争の組織化に敵対してきたのが日共指導部だ。まさしく労働者階級が労働組合に結集し組織的に団結してたたかうことの真っ向からの否定ではないか。
 これらのすべては、「四野党共闘」なるものにしがみつき「野党統一候補への一票」を第一義的に追い求めた議会主義的腐敗のゆえなのだ。彼らは戦争法に反対して起ちあがった労働者・学生・市民を「野党の応援団」としかみていない。議会主義的腐敗のゆえに「労働者以前に主権者だ」などと平然とほざき、「主権者」が神々しく見えてくるのだ。いまこそ日共中央の腐敗を、怒りをもって暴きだすのでなければならない。
 すべての労働者・学生諸君!
 世界は大激動のただなかにある。南シナ海・東シナ海の制海権奪取をかけた習近平中国の軍事行動と、これを抑えこむための米日両権力者の軍事的威嚇行動の強行とによって、東アジアはまさに一触即発の戦争的危機に覆われている。また、イギリスの「EUからの離脱」決定は、世界の金融市場をパニックに陥れた。その後も欧州金融危機の兆しが露わになるたびに日本経済は円高・株安の嵐に見舞われている。こうした世界的激動に直面させられている日本の独占ブルジョアジーは、総体として、「日米同盟強化」と「政治の安定」とを求めて、安倍政権・与党を強力にバックアップしている。
 アメリカ帝国主義の歴史的没落を見透かした習近平中国の台頭に危機意識をつのらせている日本政府・支配階級は、アメリカ帝国主義との「血の同盟」=日米新軍事同盟の絆を強め、世界中のどこへでも・いつでも日本国軍を派兵することができる「戦争をやれる国」へと日本国家を飛躍させることに、二十一世紀の生き残りの道を求めている。安倍政権が着手しようとしている憲法改悪の攻撃は、まさしくこうした日本政府・支配階級総体の階級的意志のもとに開始されているのである。
 そうであるがゆえに、憲法改悪阻止の大闘争は「本質的に階級 対階級の白熱的な政治闘争、反権力の闘いとして組織され推進されなければならない」(黒田寛一「憲法改悪と日本労働者階級の闘い」『スターリン批判以後 下』)のである。こうした構えと展望のもとに断固としてたたかいぬく部隊は、わが革命的左翼をおいて存在していない。わが革命的左翼に課せられた責務は重大である。
 憲法改悪阻止、反戦反安保、ネオ・ファシズム支配体制の強化反対の旗のもとに、労働組合の共同行動を断固として創造しよう! この力を基礎として反ファシズム統一戦線を結成し、安倍ネオ・ファシスト政権打倒をめざしてたたかおう!

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EU分解・世界的地殻変動の幕開き

 「EU離脱」を選択したイギリス人民

 「離脱すべきか残るべきか」を問うた六月二十三日の国民投票において、イギリスの労働者・民衆は一二七万票の少なくない僅差≠ナ「Brexit(ブレグジット)(EU離脱)」を選択した。EU単一市場において利益をむさぼりつづける独占資本家とその政治的代弁者どもがくりひろげた「離脱はイギリス経済に致命的打撃を与える」という脅し文句は、キャメロン政権下で財政緊縮政策をおしつけられ移民との職の奪い合い・賃金切り下げ競争にさらされている労働者たちの心を逆撫でするものでしかなかった。「経済の安定を損なうな」だと? オレたちの生活を破壊しておいて、何が「経済の安定」だ!=\―これが、多くの労働者たちの真情であった。左翼諸党派の雲散・階級闘争の衰滅のもとで彼らは、「EUから主権をとりもどし、職を奪う移民の流入を規制せよ」という大英帝国ナショナリズムと民族排外主義に彩られた「EU離脱」の訴えに、みずからの虐げられた現実の打開の方途を求め、「EU離脱」に賛成票を投じたのであった。
 イギリスの「EU離脱」というこの選択は、マネーゲームに覆われた現代資本主義世界をパニックに陥れた。イギリス経済はもちろん、EU経済や世界経済の予測不能の危機到来におびえた全世界の独占資本家と投機屋どもは、今いっせいに、より安全とみなした資産に資金を避難することに狂奔している。株式とりわけ銀行株が売られて世界同時株安が現出する他方で、日本・ドイツ・アメリカの国債や金(ゴールド)が買われて高騰し、英ポンドは歴史的な大暴落に見舞われている。直後のパニック的様相は数日で「鎮静化」したかにみえるとはいえ、イギリスの「EU離脱」選択は、EU分解の幕開けを告げ、世界的な金融・経済構造の大地殻変動をひきおこしつつある。
 「社会主義」ソ連圏の自己崩壊と帝国主義諸国の階級闘争の衰滅=プロレタリア的階級性の蒸発、というスターリン主義の歴史的大犯罪にささえられて経済のグローバル化を推進し、全世界の労働者・民衆を失業と貧困の地獄に突き落として延命をはかってきた米欧日の現代帝国主義は、いまや金融緩和マネー依存症を深刻化させつつ衰弱し、グローバル化・リージョナル化と国民国家との相剋に揺れうごいている。経済のグローバル化がもたらした階級分裂の極端化、このゆえの労働強度の増進と貧富の差の拡大、そして電脳的・スマホ的疎外の深まりにたたきこまれている帝国主義諸国の労働者・民衆の闘いは、しかし「格差」にたいする市民的反抗に解消されたり、民族排外主義的運動に疎外されたりしてしまっている。この悲劇的現実を突破するために、いまこそスターリン主義を超克し、真のマルクス革命思想で武装した労働者階級のインターナショナルな闘いが戦闘的に再生されなければならない。

(1) 階級的・地域的分裂を露わにした国民投票

 イギリス首相キャメロンと保守党内残留派および労働党指導部が「EU離脱の経済的ダメージの大きさ」をがなりたて残留を懇願したにもかかわらず、そしてEU諸国権力者たちやアメリカ大統領オバマ、さらにはIMFやNATOのトップまでもが「EU離脱」の危険性をあげつらい残留派の援護射撃をおこなったにもかかわらず、イギリスの労働者・民衆は「EU離脱」を選択した。とりわけ、イングランドの地方都市と農村部、そしてウェールズの労働者たちの多くが「離脱」票を投じた。イギリス主要部のイングランドにおいて「EU残留」票が多数を占めたのは、ニューヨーク・ウォール街と並ぶ国際金融センター・シティを擁するロンドンとその周辺のケンブリッジなど、金融やICTや医療産業などが集積する大都市部だけであった。
 スコットランドと北アイルランドの人民の多くが「EU残留」を支持したとはいえ、彼らの思いはイングランドの支配・収奪≠ノ抗するためにEUとの結びつきを維持・強化することにあった。――イングランドに「資源」も「人材」も収奪され格差が拡大しつづけている、と反発し危機意識を強めるスコットランドの支配層と民衆の多くが、スコットランドの排他的経済水域圏にある北海油田を経済的基盤にして、イギリスから独立しEUに加盟することを希求している。また北アイルランドでは、イギリスから独立し、アイルランド(EU加盟国)との国家的統一を熱願する動きが脈打ちつづけている。まさにこのゆえに、イギリスの「EU離脱」が選択されたいま、スコットランドでも北アイルランドでも、「EU残留」を名分として、イギリスから独立すべし、という気運が急速に高まっているのである。
 経済のグローバル化を積極的に推進しつつ「金融立国」として生き延びることを追求してきたイギリス資本主義、この現状を肯定し維持する観点から「EU残留」票を投じたのは、明らかに、ロンドンとその周辺の金融業やハイテク産業を牛耳る独占資本家・富裕層と、これらの諸企業に雇用され相対的に高賃金を受けとっている高学歴のホワイトカラーやスカイカラーの労働者たちおよび雇用される可能性が開けていると思わされている高学歴の若者たちだけであった。残りの大多数の労働者・民衆は、経済のグローバル化とこのもとでキャメロン政権がとりつづける財政緊縮政策によって強いられてきた失業と強搾取と貧困にたいする鬱積した憤懣と怒りを、――階級闘争の衰滅のもとで「移民に職を奪われ公共サービスを食い潰されている」という民族排外主義イデオロギーにも感化されることによって――「EU離脱」選択というかたちで表出させた。スコットランドと北アイルランドにおいて「EU残留」票が多数を占めたのもまた、経済のグローバル化のもとで進行するロンドンへの富の集中とイングランドへの従属≠フ強まりにたいする、労働者・民衆の反発と拒絶の屈折した意思表示にほかならなかった。
 まさしく「EU離脱」というイギリスの労働者・民衆の僅差≠フ選択は、経済のグローバル化の進展のもとで、現代イギリス資本主義社会がよりいっそう階級分裂を露わにし、いまや階層的にも地域的にも世代的にも分断され、連合王国(UK)という国民国家の枠組みそのものが空中分解の危機にあることを白日のもとにさらけだしたのである。

(2) グローバル化・「金融立国」のもとでの社会経済的諸矛盾の拡大

 実際、経済のグローバル化の推進のもとで、イングランドの地方都市において企業城下町を形成していた自動車、鉄鋼、造船などの伝統的な製造業は、日本や韓国の諸企業との国際競争に敗れ、「世界の工場」にのしあがった中国企業にとどめを刺され、もはや見る影もないまでに衰退してしまっている。(イギリスの自動車産業は、すべて日系企業など外国資本の傘下に入ってしまった。このことに象徴されるように、イギリスの製造業は外資だのみを強めている。いや金融業さえもが基本的に外資依存なのである。イギリス産業のウィンブルドン化≠ヘ、かくも凄まじい。)
 イギリス支配階級は、製造業の衰退として現れたイギリス資本主義のこの危機を、「金融立国」をおしすすめることによってのりきってきた。一九六〇年代のオフショア市場としてのユーロドル市場の形成を歴史的前提とし、サッチャー政権の「金融ビッグバン」(一九八六年)という一大規制緩和をテコとして、歴代政権は、ロンドン・シティを国際金融センターへと発展させてきた。EUに加盟しながらも単一通貨ユーロを導入せずにポンド通貨を維持し、オフショア市場の強みを発揮して基軸通貨ドルと欧州地域通貨ユーロとの仲介をおこない、また大英帝国の遺産≠スる属領を駆使してタックス・ヘイブンを提供することによって、世界中から資金を引きつけるとともに世界中に資金を供給・再配分し、もって莫大な金融的収益を巻きあげる、というかたちにおいて金融業をイギリスの基軸産業≠ヨとおしあげてきたのである。ロンドン・シティは、いまや世界の外国為替取引の四〇%超を占めて断トツの世界一を誇り、世界の金融諸機関がロンドンにひしめきあっている。イギリスGDPの三〇%近くをシティが稼ぎだし、この金融業を中心にした第三次産業が、イギリスの雇用人口の八〇%を占めるまでに膨れあがっている。――このいびつな産業構造のゆえに、イギリスはアメリカに次ぐ世界第二位の構造的な経常収支赤字国に転落し、この赤字を補填するためにも巨額の資金流入に依存せざるをえなくなっている。それゆえイギリスのEU離脱は、<ポンド下落―資金流入の途絶>の悪循環による金融・経済危機を胚胎することにもなっている。
 金融業を基幹産業≠ヨとおしあげたこうした追求のもとで、斜陽産業となった製造業や炭鉱などから放り出された地方の根っからのブルーカラー労働者たちは、金融業やハイテク産業などに転職しうるはずもなく、その多くが低賃金の建設業や流通業などで糊口を凌ぐ境遇に追いやられてきた。しかもEUの東方拡大(二〇〇四年)を契機として、ポーランドなど中東欧諸国から移民として大量に流入してきた労働者たちを、超低賃金で雇いこき使うというやり口を資本家どもは採ってきた。(流入した移民労働者の数はいまや、ポーランドからの八三万人を筆頭に三〇〇万人を超えるまでに膨らんでいる。)
 こうしてイギリス人労働者たちは、移民労働者との職の奪い合いにたたきこまれ、失業に追いこまれたり、大幅に賃金を切り下げられたりしてきたのである。しかも高失業率の見かけ上の引き下げを企むキャメロン政権のテコ入れのもとに、資本家どもは、ゼロ時間契約の雇用(資本家が必要なときだけ働かせ・働いた時間分の賃金しか支払わない、という資本家の利害に全面的に適合させた雇用形態)の導入・拡大にも狂奔してきた。いまやゼロ時間契約の雇用を強いられている労働者は、一八〇万人とも五〇〇万人ともいわれるまでに激増している。(二〇〇八年のリーマン・ショックで跳ねあがったイギリスの失業率はいま五・〇%に低下したとされているのであるが、この「低下」がゼロ時間契約の激増によって支えられていることは明らかである。)
 ところで、リーマン・ショックとして現出した世界金融パニック(二〇〇八年)は、とりわけ「金融立国」イギリスを直撃し、イギリス経済は莫大な損失をうみだした(銀行の損失額は、アメリカ一兆ドル、ユーロ圏諸国八〇〇〇億ドルにたいしてイギリスは六〇〇〇億ドルにのぼったとされる。この損失規模は、GDP比ではアメリカの三倍超にあたる)。この危機をのりきるために、当時のブラウン労働党政権は、銀行への資本注入や巨額の財政支出政策を強行し、財政赤字をGDP比一〇%超に急膨張させた。二〇一〇年に自由民主党との連立で政権を握った保守党・キャメロンは、この膨れあがった財政赤字を削減するために緊縮財政を十年間つづけるとわめきたて、労働者・人民に襲いかかった。公務員四九万人の削減、子ども手当カット、消費税の二〇%への増税(二・五%引き上げ)、大学授業料三倍値上げなどなどの財政緊縮政策を次々とうちだし、労働者・人民へのツケ回しに狂奔してきたのがキャメロン政権なのである。労働者・人民へのこの犠牲転嫁を踏み台とし、米欧日金融当局が撒き散らした金融緩和マネー≠ノ依拠することによって、イギリス経済は、ユーロ圏諸国の経済停滞を尻目に、二〇一三年からは二%台の経済成長を実現してきたのであった。
 好景気≠フときはシティにむらがる資本家や投機屋だけが潤い、銀行が危機におちいると国家が救済し、緊縮財政と称してそのツケを労働者・人民に回す。労働者たちは移民と職の奪い合いをさせられ、賃金を切り下げられ、ますます貧困と強搾取を強いられる。――この「金融立国」イギリスの社会経済的現実と財政緊縮政策を強行しつづけるキャメロン政権にたいする労働者・民衆の怒りのマグマの鬱積こそが、権力者たちの思惑を吹き飛ばし、イギリス人民の「EU離脱」選択をもたらすことになったのだ。

(3) 追いこまれ国民投票の賭けにでたキャメロン

 シリア・中東からの難民の大量流入というヨーロッパを揺るがす大問題とも重なって焦点と化した<急増するEU域内からの移民の規制>および<EUのさまざまな規制の強化にたいして「主権を取り戻す」こと>を最大の争点にして、「離脱か残留か」をめぐってなされた今回の国民投票。そもそもこれは、「EU離脱」を叫ぶ大英帝国ナショナリズムを理念とするイギリス独立党が保守党の基盤を掘り崩して伸張し、保守党内の「離脱」派と残留派との分裂が深まるなかで、追いつめられたキャメロンが政権の座にしがみつくために、「離脱」派の要求を受けいれて実施したものにほかならない。キャメロンの狙いは、国民投票によって「EU残留」のお墨付きをとり、そうすることによって保守党内外の「EU離脱」派を抑えこむとともに、EUの規制強化をめざす独・仏枢軸のEUにたいして「離脱」の声を見せつけ、イギリスについての「特別な扱い」をひきだすことにあった。
 そもそもキャメロンは、「EU単一市場は活用するが国家主権は譲らない」と主張する党内「EU懐疑」派に依拠して保守党党首になりあがり(二〇〇五年)、二〇一〇年の総選挙において「イギリス国民の同意なしに、これ以上イギリスの権限をEUに委譲しない」と謳って政権(自民党との連立)の座についたのであった。
 この二〇一〇年に、ギリシャ政府債務危機を発端とするユーロ圏諸国の政府債務危機が全世界を揺るがした。この事態に直面して、イギリスでは「EU離脱」を掲げる独立党が急速に勢力を拡大し、保守党内の「EU懐疑」派も「EU離脱」派へと舵を切ってゆく。キャメロン政権は、こうした「離脱」派の勢いを抑えこむためにも、EUにたいして、ユーロ危機のりきりのための「財政協定」をイギリスには適用しないこと(ユーロ危機のりきりのための負担や規制の拒否)を強硬に要求し、これを呑ませたのであった。けれども、保守党内「EU離脱」派はさらに「EU離脱」の国民投票を要求し、キャメロンへのつきあげを強めてゆく。追いつめられたキャメロンは、二〇一三年一月に、「二〇一五年総選挙において保守党が勝利したならば、二〇一七年末までに<EU離脱>を問う国民投票を実施する」と宣言し、賭けにうってでたのであった。(二〇一四年の欧州議会選挙では、独立党が最多の議席を獲得した。)
 二〇一五年の総選挙において過半数を制し保守党単独政権を組織したキャメロンは、公約どおり国民投票の実施を決めるとともに、EUにたいしては、(1)過剰な移民流入を抑えるために、移民への社会保障給付を期限つきで制限すること、(2)ユーロ圏の財政安定のための緊急措置に、非ユーロ加盟国は財政負担を負わないこと、などの要求をつきつけた。そして、二〇一六年二月の臨時欧州委員会において、他のEU諸国の猛反発をおしきってこの要求を認めさせたキャメロンは、「EUの中での特別な地位」を獲得したと凱歌をあげ、この成果を誇示することによって国民投票での「EU残留」の選択をとりつけることを狙い、国民投票を急きょこの五月に前倒しして実施することを決めたのであった。――だが、党内分裂を抑えこんで自己の権力基盤を強化すると同時に、統合の深化≠はかる独・仏枢軸のEUに「金融立国」イギリスの「特別の権利」を認めさせることを狙っておこなったキャメロンの賭けは、完全に裏目にでた。経済のグローバル化によって痛めつけられ続けてきたイギリス労働者・民衆の鬱積した怒りは、権力者の虫のいい思惑を完全に吹き飛ばしたのである。

(4) 独・仏枢軸のEUとイギリスの角逐

 「Brexit(イギリスのEU離脱)」決定を受けて、イギリスを除くEU二十七ヵ国の権力者は六月二十九日に、「イギリスがEUの単一市場の恩恵を受けるには、労働者の移動の自由などを受けいれなければならない」という声明を発表した。EU離脱の動きが他のEU諸国にドミノ倒し的に拡がることを抑えるためにも、イギリスとの「Brexit」交渉において、「EU単一市場は活用するが、EUの種々の規制は受けない。国家主権は譲らない」というイギリスの「EU離脱」派が主張している虫のいい考えは許さないという基本方針を、EU諸国なかんずく独・仏の権力者は先制的につきつけたのである。
 イギリスの「EU離脱」決定に刺激されて、他のEU諸国でもいま、「反EU・EU離脱」をめざす動きが活発化している。フランスでは、ルペンの率いる国民戦線が、民族排外主義を剥きだしにして反EUを煽り、来春の大統領選にむけて突進している。ドイツやオーストリアやオランダでもネオ・ナチの極右政党が跋扈している。ギリシャやイタリア、スペインなどの政府債務危機のりきりにあえぐ南欧諸国では、EU(+ECB、IMF)による財政緊縮政策のおしつけにたいする怒りが「格差」を糾弾する「市民」運動や反EUの民族主義的闘いとして沸騰している。そして、中東欧諸国では、押しよせるシリア難民にたいするEUの対応に反発を強める国家主義者たちが、西欧的価値観を押しつけるな、とがなりたてている。ポーランド与党党首カチンスキは、「(加盟国に権限を戻す)EU条約改正を」と叫んでいる。
 「Brexit」を受けてさらに活発化しつつあるこうした動きに危機意識をつのらせ、EUの分解をくいとめるために、イギリスとの「離脱」交渉では一切妥協しない、という構えをとっているのが、ルペンに足もとを揺すぶられているフランスのオランドであり、EUの盟主として財政規律の厳守を各国に迫っているドイツのメルケルなのである。
 ところで、そもそもイギリス権力者は、これまでも、EUに加盟していながらイギリス独自の利害なかんずく「金融立国」を推進するために、さまざまな「特別の地位」をゴリ押しして認めさせ、独・仏権力者との角逐をくりひろげてきたのであった。その最たるものが、単一通貨ユーロの導入を拒否し、ポンド通貨を維持しつづけてきたことにほかならない。EUに規制されない独自の金融政策の権限を確保し、オフショア市場としてのロンドン・シティの機能を守るためには、ユーロ通貨同盟の外に身を置いた方がよい、というわけなのである。またシェンゲン協定(協定参加国間は、国境審査なしに自由に出入国できる)についても、「国境管理は国家主権の核心」と主張して参加を拒否している。単一通貨ユーロ導入を基軸にして経済的・政治的統合をはかることを目標にかかげるEUに加盟しながらも、独・仏が主導するEU統合の深化≠ノは「国家主権は譲れない」とことごとく抵抗し、ただただEU域内において諸企業がヒト・モノ・カネを自由に調達し生産し販売することのできる「単一市場」として活用することを追求してきたのが、イギリス権力者なのである。――いまや弱体化しているとはいえ、大英帝国時代の植民地を基礎にしたイギリス連邦(五十四ヵ国)を背後に抱えていることが、こうした彼らのゴリ押しをささえてきたといえる。

(5) EUの構造的危機の深まり

 他方、独・仏枢軸のEUはこんにち、難民対策を主導したり金融取引税の導入をぶちあげたりして、EUとしての政策統合の追求を強めている。とりわけ、いまやEUの盟主として君臨するドイツ・メルケル政権は、財政規律の厳守をEU各国に強硬に要求している。ユーロ通貨に依拠した政府債務の濫発やリーマン・ショックのりきりのための巨額の財政支出のゆえに、ギリシャ、スペイン、イタリアなどの南欧諸国がひきおこした政府債務のデフォルト危機(二〇一〇年)、こうしたユーロ通貨の信認・ユーロ圏の存続を脅かす事態を二度とひきおこさせないために、「毎年の財政赤字をGDP比三%以下に・政府債務をGDP比六〇%以下に抑える」という、ほとんどの加盟国が違反をつづけ有名無実化していたところの、「財政規律」の厳守をEU各国に迫っているのがメルケルなのである。(均衡財政を義務づける「債務ブレーキ制度」をドイツ憲法に明記し二〇一二年から財政黒字を維持しているメルケル政権は、この「債務ブレーキ制度」をEUの財政条約に盛りこませた。)――独・仏が主導するEUのこうした強硬な追求が、イギリスの「EU離脱」派の反発をさらに煽って勢いづかせ、他のEU諸国においても「反EU」のうねりを巻きおこすことに繋がっているのである。
 たしかに、単一通貨ユーロの安定のためには、各国ごとに管理されている財政の安定が問題であるとはいえる。けれども、根底にある各国経済の不均等的発展を不問に付して、ただただ均衡財政を強制することは、ドイツの独り勝ち≠ニして現出している経済の不均等的発展をいっそう拡大し、通貨同盟と経済同盟からなるEUの強化どころか、逆にそれらの同盟の基盤を内側からほりくずしEU分裂の危機を招きよせることにしかならないのである。
 いまやEUは明らかに、統合の深化≠フ掛け声とは逆に、大きく四つに分岐し分裂を深めている。
 @南欧や中東欧諸国への輸出や投資・融資をくりひろげている独覇≠フドイツ(失業率四%台)をはじめとする西欧・北欧諸国。
 Aユーロ危機後の財政緊縮政策のゆえに経済停滞に沈む南欧諸国。ギリシャやスペインの失業率は依然として二〇%超に高止まりしている。ギリシャ政府債務危機は依然として続き、この夏にも再燃の可能性を胚胎している。EUが緊縮財政をギリシャに押しつけつづけるかぎり、ギリシャ危機がくりかえされることは不可避である。若者たちが職を求めてドイツなどに移る他方で、ギリシャやイタリアには、シリア・中東難民が押しよせ、緊縮財政をつづけている政府にのしかかっている。
 BEU内の新興国≠ニして、低賃金の技術的・技能的労働力を求めて進出するドイツ諸企業などの草刈り場≠ニ化している中東欧諸国。進出したドイツ企業にリストラされた労働者たちは、職を求めてドイツやイギリスに向かっている。
 C金融によって好況≠保っているイギリス。独・仏によるEU規制強化に反発して「EU離脱」を選択。
 このように分岐し亀裂を拡大しているEUとりわけドイツやイギリスをめざして、EU域外の中国やアジア・アフリカからも多くの労働者が流入している。こうしてドイツやイギリスでは「職の奪い合い」が激化し賃金の切り下げが強行されており、おしなべてどの地域でも貧富の差が拡大し、民族的・宗教的・文化的対立を激化させているのである。

 「社会主義」ソ連圏のドミノ倒し的自己崩壊がもたらしたヨーロッパの地殻変動の中から誕生したのが、単一通貨ユーロの通貨同盟であり、これを基軸とするヨーロッパの経済的・政治的統合を目標にかかげるEUであった。統一ドイツが強大化することを警戒し、これを抑えこむことを狙ってフランス大統領ミッテランが要求した<マルク通貨の放棄による単一通貨の導入>と<ヨーロッパ統合の推進>とを、ドイツ統一の承認をえるために西ドイツ首相コールが受けいれることによって、単一通貨ユーロの通貨同盟の道はきりひらかれた。それは、<統合ヨーロッパ>のもとにドイツを封じこめることをめざしたミッテランと、ドイツ統一の悲願を優先したコールとの、独・仏の和解にもとづくヨーロッパの平和≠大目的としたきわめて政治的な判断にもとづく通貨同盟にほかならなかった。つくりだされたユーロ圏およびEU域内は、それゆえ経済的には、技術性と労働生産性の高い強力な製造業をもつドイツが圧倒的な国際競争力を武器にして席巻するドイツ国内市場≠フ様相を呈し、通貨ユーロは実質上のマルク通貨と化してきたのであった。ユーロ圏およびEU市場は、このようにはじめからドイツと他の諸国との、とりわけ南欧諸国との経済の不均等的発展という構造的矛盾をかかえ、EUの東方拡大とともにその構造的不均衡をますます拡大し、EU分解の危機をもはらんで内部対立の激化と構造的分岐を露わにしてきたのである。
 EUの構造的不均衡の拡大のもとで、いま各国の労働者・人民は、移民労働者と職の奪い合いをさせられ、強搾取と貧困にますます苦しめられている。だが「社会主義」ソ連圏の自己崩壊いごの脱イデオロギー状況のゆえに、労働者たちの闘いは即自的な怒りの表出にとどまったり、民族排外主義に汚染させられたりして、混乱し混迷を深めている。こうした現実を突破するために、今こそ労働者階級の階級的闘いが国境をこえて組織されなければならない。
(七月十日)
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オバマ広島訪問を礼賛する代々木官僚を弾劾せよ

 アメリカ大統領オバマが被爆地・広島を訪問した五月二十七日、日本共産党の委員長・志位和夫は、このオバマの行動一つひとつに惜しみない讃辞を送った。いわく、「現職のアメリカ大統領が広島を初めて訪問し、平和資料館を訪れ、追悼の献花を行い、追悼のスピーチを行って、被爆者の方々と言葉を交わしたことは、前向きの歴史的な一歩となる行動だったと思っています」と。
 広島・長崎への原爆投下という世紀の国家犯罪について「謝罪」もせず、「戦争のさなかに指導者はあらゆる決定を下すということを忘れてはならない」(五月二十三日、NHKインタビュー)などと正当化しているのがオバマではないか。口先では「核兵器のない世界をめざす勇気をもたなくてはいけません」と語りつつも、現実には今後三十年で一兆ドルを投入して「核兵器刷新計画」を推進することを決定したのがオバマではないか。これほど犯罪的なことがあるか! このオバマの広島訪問を礼賛することは、「核なき世界の実現」を煙幕として対中・対露の核軍事力の増強をおしすすめているオバマ政権を免罪すること以外のなにものをも意味しないのだ。
 われわれのおいてある二十一世紀現代世界においては、核軍事力の圧倒的な優位を護持せんとする没落帝国主義アメリカと、これに対抗して対米挑戦を強めるロシアならびに中国、この両者のあいだでの核軍事力増強競争が、今まさに新たな次元でくりひろげられつつある。この米―中・露の核軍事力増強競争に断固として反対する労働者・人民の闘いを創造していくことの彼岸において、口先で「核兵器のない世界を追求」すると言っただけのオバマのモラルと理性に期待を寄せ、幻想を垂れ流すのは、全世界の労働者・人民にたいする犯罪いがいのなにものでもないのだ。
 それだけではない。伊勢志摩サミット直前に急きょ開催された日米首脳会談と共同記者会見において、沖縄の労働者・人民にたいして元米兵の犯罪についての「謝罪」の言葉を口にしないどころか、あろうことか「米国と日本の軍の方々と会い、彼らの業績について感謝する機会を楽しみにしている」などと言い放ったオバマ。そして岩国基地において、米海兵隊員と自衛隊員を前に「(日米)同盟の強さがここ岩国基地で示されており、日米の信頼と協力、友情の力強い実例だ」などと宣言したオバマ。このオバマの言動には見て見ぬふりを決めこんだうえで、オバマの広島訪問を「前向きの歴史的な一歩」と礼賛するなどというのは、元海兵隊員による女性暴行殺害を弾劾し、日米新軍事同盟の強化に反対してたたかっている労働者・人民にたいする最悪の裏切りといわずして何というべきか。
 まさしく代々木官僚のオバマ広島訪問の礼賛は、日本そして全世界の労働者・人民にたいする新たな犯罪を刻むものであるといわなければならない。

以下、見出し

T 「核なき世界への流れ」=「平和の流れ」の幻夢

   オバマへの心酔

   「歴史的一歩」と美化する根拠

U 権力者の理性にすがった「核兵器廃絶」要求

   戦争の危機を突破する力とは?

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熊本大地震で露わとなった「耐震性審査」のインチキ性

 すべての原発を直ちに停止し廃棄せよ

 熊本地域を震度七級(揺れの強さ)の激震が二度連続して襲ってから約二ヵ月。不気味な地震が多い日で一日三十回も発生し、その数は五月十九日の時点ですでに一五〇〇回の「早いペース」(気象庁)を記録した。震源の全範囲も一〇〇〜一二〇`bを越えた。多くの人民が被災し、家と家族・友人を失い、日々襲ってくる地震動の響きに帰る家もなく恐怖に怯えている。把握されているだけでも一万人以上の労働者人民が今も避難生活を強いられている。
 ところが安倍政権は、呻吟する被災人民の救援を二の次にして、「緊急事態条項設置はきわめて重く大切な課題だ」(官房長官・菅)などと口走って、震災を憲法改悪の口実として政治的に利用するなどの反人民的策動をくりかえしてきた。
 それだけではない。巨大地震が直撃しかねない危機が一挙に高まった川内原発、この原発を「直ちに止めろ!」という労働者人民の圧倒的な声を無視して安倍政権は、運転を強行しつづけているのだ。安倍の意を汲むNHK会長・籾井は、地震直後の四月二十日に、「公式発表」以外は報道禁止≠ニ指示し、「地震速報画面」から川内原発のある鹿児島県をカットするなどの報道管制をしいた。また安倍政権の意向をうけた『産経新聞』(五月七日付)は、川内原発の「運転停止署名」が一二万を超えたことに「反原発派、熊本地震を利用」などと一面トップで敵意を抱いて煽りたてた。
 原子力ムラの御用学者もいっせいにマスコミに登場し「地震動は十分大きな余裕を持った評価がなされているのでまったく問題ない」(岡本孝司・原子炉工学)などと火消し≠ノ狂奔。しかも、原発は安全だとは絶対口にしない≠ニ宣言したはずの原子力規制委員会委員長・田中俊一までもが、「熊本地震の原発への影響はない」などと新たな安全神話≠でっち上げたのである。
 こうしていま安倍政権は、川内原発1、2号機の運転を強行しつづけているだけでなく、四国電力経営陣の尻を叩いて、七月二十六日にも伊方原発3号機の再稼働を強行しようとしている。伊方原発は日本最大の断層帯「中央構造線」が直近を走る最も危険な原発のひとつだ。伊方3号機の再稼働を阻止せよ!
 本稿では、熊本地震によっていっそう露わとなった原発の「耐震安全性評価」のインチキ性、とりわけ「基準地震動」設定のマヤカシを暴きだすことにする。

(以下、見出し)

1 震度七級の激震が連続した内陸直下型地震

2 無謀で危険な川内原発の運転続行

 熊本地震は想定内≠ニ居直る原子力規制委

 川内原発運転に固執する政府・九州電力

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憲法改悪とネオ・ファシズム支配体制強化を打ち砕け!

安倍政権に締め上げられた自治体当局の賃下げ・労務管理強化に抗して闘おう
<下>
自治体労働者委員会

B 安倍ネオ・ファシスト政権による憲法改悪を許すな

1 参院選組織内候補支援に一切を解消する自治労本部弾劾!

  「九条堅持」から「堅持する立場」への昇天

  政府の社会保障制度改悪の容認

2 「野党共闘」の尻押しに闘いをねじまげる自治労連本部を許すな

  「住民生活の守り手」なる没階級的シンボル

3 改憲阻止! 極反動諸攻撃を粉砕しよう!

<上>は第二四二六号四面に掲載

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6・19 「戦争法廃止!憲法改悪反対!」
金沢で五百名が怒りのデモ 

 六月十九日、金沢市のいしかわ四高記念公園において、「安保関連法=戦争法廃止! 憲法壊すな! 石川県民集会」とデモ行進がおこなわれた(主催は「戦争法反対! 憲法改悪阻止!」を呼びかける八団体)。石川県平和運動センターや「石川県労連」傘下の諸労組の組合員や市民ら五〇〇名が結集し、安倍政権による戦争のできる国づくりを許さないという怒りの声をあげたのだ。わが同盟北陸地方委員会の情宣隊は、集会が参院選にむけたカンパニアへと歪曲されようとしているなかで、それをのりこえるべきことを訴えるビラや『解放』号外を、参加者にくまなく配布した。
 金沢大学共通教育学生自治会のたたかう学生たちもこの集会に参加し、「憲法改悪阻止! ファシズム反対!」「日米グローバル戦争同盟反対!」の旗幟を鮮明にしながら、結集した労働者・市民とともに最後まで奮闘した。

金大生の戦闘的なシュプレヒコールが集会に闘う息吹
(6月19日、金沢市いしかわ四高記念公園)
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