第1862号(2005年4月4日)の内容

<1面>
韓国・東アジア諸国人民と連帯し改憲阻止の一大奔流を巻き起こせ
改憲
の濁流にのみこまれる日共中央を弾劾し闘いの戦列を強化せよ!

<4面>
金属戦線版産報運動に抗し05春闘の高揚を!
<5面>
JEC連合労働貴族の反労働者的「春討」方針
《うた》 05春闘
<6面>
UIゼンセン同盟中央の裏切りを許さず05春闘を闘おう
年賀繁忙期の「1ネット方式」の惨状
<2面>
「イラク占領反対! 憲法改悪阻止!」
3・20日比谷集会が大高揚
首都圏の学生が銀座デモ
3・19WPN・平和フォーラム系日比谷集会
<7面>
「NHK問題」―か細い「注意喚起」に終始する出版労連中央
報道報国会≠ニ化したマスメディア
Topics 東武線踏切り事故の真相
<8面>
わが反スターリン主義運動の原点の再主体化のために
『新世紀』最新号(第216号)紹介

<3面>
万華鏡2005――情勢の断層を読む
◆苔むす軍神
◆覇権の喪失
◆割れる王朝
狂える帝国

週間日誌〈世界の動き・日本の動き〉
  「解放」最新号
 






































  


韓国・東アジア諸国人民と連帯し改憲阻止の一大奔流を巻き起こせ

改憲
の濁流にのみこまれる日共中央を弾劾し闘いの戦列を強化せよ!


 小泉政権は公明・民主両党の合意をとりつけて、日本を「戦争をやれる国」へと飛躍させるための第九条改悪を核心とする改憲草案をとりまとめる作業を開始した。同時に、この草案を国民投票にかけるための法案の準備にも着手した。ブッシュ政権のユニラテラリズムをむきだしにした「対テロ戦争」や、「民主主義の拡大」と称しての軍事行動を日本国家として支援するために、「日米共通の戦略目標」にもとづいて、新たな「日米安保共同宣言」をも策定しようとしている。しかし同時に、この改憲・安保同盟強化の大濁流にたいする、韓国・中国をはじめとするアジア諸国人民の怒りにみちた反撃もまた開始された。
 島根県議会による「竹島の日」条例の制定をはじめとする小泉政権の数かずの暴挙に怒る韓国人民、改憲・日米安保同盟強化の策動に危機感をいだくアジア諸国人民と連帯して、いまこそわれわれは改憲阻止・反戦反安保の一大闘争をまきおこそうではないか。

以下、見出し

改憲に突進する小泉政権への韓・中両国の猛反発

最終階梯にのぼりつめた改憲攻撃

日本ナショナリズムをむきだしにした自民党改憲草案

「共通戦略目標」にもとづく日米安保同盟の強化

改憲の濁流にのみこまれる反対運動の危機を突破せよ

九条にもとづく自衛隊活用≠説く日共中央の犯罪性
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イラク反戦・改憲阻止 

分断策を超え広がる共同行動


労・学・市民六千の熱気

国際共同行動3・20集会(日比谷野音)が大高揚

 
六〇〇〇名余の労働者・市民と連帯して奮闘する
首都圏の闘う学生たち(日比谷野音)
全世界の闘う人民と連帯(三月二十日)
アメリカ帝国主義がイラク侵略を開始した日からちょうど二年目の三月二十日、東京・日比谷野外音楽堂で「STOP! 有事法制 イラク占領反対、自衛隊の撤退を 許すな! 憲法改悪、守ろう9条」を掲げて国際共同行動3・20集会(陸・海・空・港湾労組二〇団体等による集会実行委員会主催)が開催され、六〇〇〇名の労働者・学生・市民が結集した。
 この日、アメリカでは米陸軍の「基地の町」フェイエットビル(ノースカロライナ州)をはじめとする数百ヵ所で反戦集会が開催された。一〇万人が参加したロンドンや一万人が結集したローマを筆頭に、全世界でイラク反戦のデモ津波がまきおこった。こうした世界各地で起ちあがった人民と連帯して、日比谷集会の高揚がかちとられたのだ。

「改憲反対」に全く触れず 志位の奇異≠ネ発言

 ところで、まさしく今、改憲有事≠ニいうべき情勢のただなかであるにもかかわらず、ただ一人、「改憲反対」の「か」の字も語らなかった輩がいる。日本共産党委員長・志位だ。それまでの発言者たちがそれぞれに「改憲阻止」の決意を語り、志位の後に発言した社民党代表・福島の代理=保坂も改憲反対を強調したことのゆえに、このシイのキイな発言は浮きあがり異様なほどであった。
 志位が声をはりあげて呼びかける――「『人道復興支援』の最大の目玉の給水活動は、もう終了しました」、だから「自衛隊を家族のもとに返せと要求していこう」と。だが、誰も呼応しない。小泉政権がおしだしている「人道復興支援」というイラク派兵の大義名分を認めたうえで、派兵の理由がなくなった≠ニ主張しても、迫力が出るわけがない。
 しかも、熊谷が「米軍の即時撤退」を求めたのに比して、志位が語ったのは、「米軍にたいして、ただちに期限を決めて撤退に向けた措置をとれと求めたい」などという間延びした要求でしかなかった。こうした志位の発言を聞いた党員たちは、顔を寄せあって、「熊谷さんは元気だけど、ウチの委員長は元気ねぇなぁ」とか、「憲法と自衛隊の共存という不破議長の発言はおかしいよなあ」とかという会話をそこかしこで交わしていたのであった。


   
「改憲容認は許さない!」自治労・日教組幹部に怒りの声

3・19WPN・平和フォーラム系日比谷集会

「郷土の森広場」を埋める自治労や教組などの組合員
(三月十九日)
 三月十九日、東京・日比谷公園において「ワールド・ピース・ナウ」の集会が開催された。
 イラク侵略戦争開戦から二周年のこんにち、占領破綻に焦りをつのらせるブッシュ政権を支えて五次にわたる日本国軍の出兵を強行した小泉政権のもとで、憲法改悪の大濁流が形成され労働者・人民に襲いかかっている。この危機的な情勢に直面しているにもかかわらず、しかも全世界の「イラク戦争反対」の共同行動の一環と銘うっているにもかかわらず、陸・海・空・港湾労組二〇団体等のよびかける集会を「日共の集会」と断じる平和フォーラム系諸労組ダラ幹のセクト主義のゆえに、またしても労働者階級の闘いを分断するかたちにおいて、この集会は開催された。


  
「米占領軍・日本国軍は撤退せよ」

3・20 首都圏の学生が銀座デモ

反改憲の闘いの戦闘的高揚を呼びかける学生たち
(3・20、銀座)
 日比谷野音集会に先だって、首都圏のたたかう学生たちは、「憲法改悪阻止! イラク軍事占領反対!」を掲げて学生統一行動を実現した。
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報道・言論のファシズム的弾圧を許すな

か細い「注意喚起」に終始――「NHK問題」に関する出版労連中央の声明


「虚偽報道禁止」条項にもとづく攻撃の先取り
(前略)
 たしかに出版労連中央が言うように、〇一年の安倍・中川によるNHK番組にたいする「政治介入」は、ブルジョア法である憲法や、放送法にさえ違反している。しかし何故このときに、国家権力はNHKの放送内容に露骨に介入して「言論・表現・出版の自由」を形式的にも踏みにじったのか?
 しかも安倍・中川が四年前に番組改変を迫った事実を、NHKの長井暁氏や、「朝日新聞」が暴露した。このことにたいして安部・中川は、白を黒といいくるめる事実の捏造をしたうえで、「朝日の方こそ虚偽報道だ」と開き直り、逆に朝日新聞社にたいする攻撃に転じた。これは何故か?
 あきらかに安倍・中川に代表される自民党内タカ派政治エリートは「朝日新聞」に代表される保守リベラル系のジャーナリズムを絞め殺し、もって日本を「戦争のできる国」へと飛躍させるための攻撃に抵抗をしめす一切のジャーナリズムを沈黙させ封殺する、巨大な攻撃を現に今かけているのだ。まさに右派マスコミ、右翼団体をも動員しての政府・自民党の真正ファシズム的な攻撃が公然と開始されたのだ。
 にもかかわらず出版労連中央は、「言論・表現・出版の自由が圧迫されている」ことへの「注意を喚起」しているにすぎない。一大攻撃を開始した政府・自民党が何を目的に、いかなる攻撃の一環としてこのような攻撃をかけているかをまったくとらえることができないのだ。
 現にいま、国会では改憲を是とする議員が九五%を超え、改憲発議が確実な情勢となっている。四月には憲法改定の手続法であるところの国会法改悪法案・「国民投票法案」の上程が策されている。この法案には、教員や公務員にたいする政治活動禁止の条項や、「虚偽報道禁止」を名目にしたマスコミ報道への禁止条項と罰則までもが盛り込まれ、反対運動の徹底的な封殺が公然と規定されている。〔「人権擁護」の名のもとにマスコミの報道規制をうたう人権擁護法案の国会再上程もたくらまれている。〕
 「NHK問題」をめぐる朝日新聞社にたいする「虚偽報道」というキャンペーンは、まさにこのジャーナリズムにたいする攻撃の先取りとしての意味をもっているではないか。

「言論弾圧反対・改憲阻止」の闘いを創造しよう
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報道報国会≠ニ化したマスメディア

国民を戦争に動員するためのメディア規制

総屈服したマスメディア
 〇四年三月の衆議院総務委員会でNHKの海老沢勝二会長(当時)は、「国民保護法案」にたいして「反対する気はありません」と言い放っている。NHKは「国民の保護のための法制の『要旨』に関する意見」で何点かの留意点を指摘したのみで「国民の生命・身体等に直結する緊急情報は迅速、的確に視聴者・国民に伝えることが、公共放送の責務と考えており、指定公共機関に指定されるかどうかにかかわらず、組織を挙げて全力で取り組みます」とまで表明している。
 民放連は、このかんの一応反対≠フポーズをなし崩しにして、法成立にたいして無反応・沈黙を決めこんでいる。朝日放送(大阪)にいたっては、「指定公共機関になるメリットもある」と言ってはばからない。こうしたことの背景には、地上波放送のデジタル化にともない民放テレビ一二七社の要する設備投資が八〇八一億円の巨額にのぼり、体力のない地方局は公的支援を政府に求めざるをえないという事情がある。小泉政権は、民放各社の苦境を見透かし傲然と屈服を強いてきているのだ。
 ところで、昨〇四年三月、イラクでの自衛隊の活動の取材にかんして新聞協会、民放連は防衛庁と取材協定を締結した。自衛隊が発表・承認する事実以外の報道はまかりならぬ、ということに同意したのだ。つまり恭順の意を表明したのだ! 以来日本のマスメディアのイラクの戦争報道は自衛隊の広報班とみまがう報道で国民の目を覆う役割を任じて恥じない。まさに有事報道規制の先取りである。日本のマスメディア総体が、日本型ネオ・ファシズム体制を支える鉄の六角錐の一角として深ぶかと組み込まれているのだ。
 さらに警鐘を打ち鳴らさなければならないことがある。昨〇四年十二月一日付「読売新聞」は憲法改定の手続きを定める国民投票法案の与党合意の骨子を報道している。そのなかに「新聞・雑誌は虚偽記載、事実をゆがめて記載等、表現の自由を乱用して国民投票の公正を害してはならない」という項目がある。国民投票法にあえてマスメディアにかかわる項目を入れること自体、社会各界・各層の様ざまな立場からする改憲反対の論陣を張ることを許さないというメディア規制法にほかならない。自民・公明の与党二党の暴挙はもとより許せるものではないが、それになんらの否定的コメントも掲載しない読売新聞の報道姿勢にこの問題にたいする読売の立場がしめされているのだ。
 
マスコミ労働者は今こそ奮いたとう!
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トピックス

東武線踏切り事故の背後には……

労働者への責任転嫁を許すな

 三月十五日の夕刻に、東京都足立区にある東武伊勢崎線・竹ノ塚駅近くの踏切で、遮断機が上がって横断をはじめた人びとのなかに準急電車が突っ込み、保険会社員ら二人の女性が死亡し主婦二人が重軽傷を負うという痛ましい事故が発生した。
 この踏切は操作が手動式であり、操作に当たっていた東武鉄道従業員は、詰め所内に設置されている「連動盤」で列車接近の表示をいったんは認識しながらも、ただちに遮断機を下ろさなかった。そしてその次に通過する下り電車の接近ランプに気をとられ、まだ少しの余裕があると思いこんで遮断機を上げつづけた。このことによってこの惨事が引き起こされたといわれている。
 警察権力は、当該の踏切保安係の労働者を「業務上過失致死傷」の容疑で逮捕した。東武鉄道当局は、この労働者がロックを解除して遮断機を上げつづけていたのは作業内規に違反したものであり、またこの労働者が一年ほどまえにも同様のミスを犯していたが本社には報告されていなかったと発表した。またしても、うみだされた事故の一切を当該労働者の責任に転嫁しようとしているのだ。
 だがこの踏切は、手動式で対応してもラッシュ時には一時間のうち五十分も閉まってしまう名うての開かずの踏切≠ナあり、自動式にするならば完全な「開かずの踏切」になってしまうそれである。それゆえに会社当局は、保安係の判断・裁量によって少しでも余計に開けることができるように手動式を維持してきたのである。じっさい、「早く開けろ!」という通行人の怒声に促迫されながら、労働者はカンとコツで少しでも長く開けることを強制されているのだ。
 しかもこの踏切を高架にせよと付近住民が要求していたにもかかわらず、この切実な訴えは放置されていた。東武鉄道は「資金難」を、都や国交省は当該の道路が「区道」であることを口実に拒否し、「援助が得られない」ことを理由に区当局もまた手をこまぬいていた。
 そればかりではない。事故当時、本来は二名いるはずの保安係が現場には一名しかおらず、もう一人は便所に行っていたということも報道されている。東武会社当局は、二十四時間を三交替勤務で二名ずつ配置していたとのことである。列車通過頻度が極めて高い、したがって高度の緊張と連続作業の勤務に労働者は八時間以上にわたって従事させられ、「生理現象」の解決も労働者相互間の融通でやらされているにちがいない。「自動化」によって人減らしできないところを、会社当局は労働強化を強いることによってのりきってきているのだ。じっさい、東武資本は〇二年に諸部門の分社化を含むところのリストラ施策をうちだし、実行しつつあった。事故被害者の家族は、「謝罪」にきた会社幹部を「安全にカネをかけていないから、こうなったんだろう!」と怒鳴りつけたそうである。
 今回の痛ましい事故の責任を労働者に負わせるのは不当きわまりないことなのだ。
 東武鉄道の事件だけでなく、鉄道事故が頻発している。マスコミが伝えたところによると、東京都営地下鉄新宿線では夕方ラッシュ時にブレーキの故障で電車が停止し、乗客を徒歩で誘導するという事件も発生している(二月十八日)。この事故は、「ワンマン化」のための新型車両を実験のために旧型車両に連結したことによって引き起こされたものなのだ。また都交通局・荒川線では当局が運転時分の短縮を強要したことのゆえに運転手がスピード違反を余儀なくされた。にもかかわらず都交通局管理者は、乗客を装ってこれを「摘発」し、処分を発令したという。労働強化と人員削減の「一石二鳥」を狙って当局は労働者に次々と攻撃を仕掛けてきているのだ。
 頻発する鉄道事故は、私鉄と公営交通とを問わず、資本・当局の悪辣な人減らしと労働強化のゆえにもたらされているのだ。リストラ諸施策に協力する交運諸労組指導部がそれを支えている。労働者への責任転嫁を許すな!
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新世紀(The Communist) 最新号紹介

第216号 2005年5月

賃下げ・リストラ、改憲攻撃を打ち破れ

イラク選挙の波紋―現代世界の激変を浮き彫りに


 ▼本号は「05春闘の高揚のために」を特集した。
 「反戦・反改憲・反リストラの春闘を」(中央労働者組織委員会)は、「連合」労働貴族による四年連続のベア要求見送りという屈辱的現実を打ち破り、春闘の高揚をかちとるために奮闘することを呼びかけた論文である。労働諸法制の改悪と改憲をたくらむ独占資本家ども。彼らの露払い役としていまやたちあらわれている笹森執行部を弾劾し、各職場から戦闘的闘いをつくりだすべきことが力強く提起されている。
 「賃下げ・リストラ徹底の宣言」は、「いまこそ攻めのリストラを」と号令する奥田・日本経団連の『経労委報告』の反動性を徹底的に暴きだす。「人材力の強化」の名のもとに、成果主義賃金制度の徹底化をはかり、低賃金の非正規雇用労働者の活用=使い捨てにのりだしている独占資本家の悪らつな階級的攻撃を打ち砕く闘いをさらに強化しようと呼びかける。
 リストラと過労死者の続出、カサにかかっての反動諸攻撃と労働貴族どもの全面協力、これらによってもたらされている労働者の無気力化……。このような職場の悲惨な現実をくつがえすために、わが革命的・戦闘的労働者たちは<こじあけ精神>を発揮してたたかった。「労働運動の組織化と労働者組織建設上の教訓」(中央労働者組織委員会)は、この一年間にわたるわが闘いの諸教訓を明らかにしている。
 イラク反戦・反安保、改憲阻止の闘い、「日の丸・君が代」反対闘争、郵政民営化にともなう諸攻撃に反撃する闘い、これらの闘いの前進を可能にしたものは何か? この論文は、内部思想闘争の貴重な教訓をていねいに、情熱をこめて明らかにする。

 ▼ブッシュ帝国の支配にたいするイスラーム的反逆を旋回軸とする二十一世紀世界の地殻変動とその意味するものに迫る諸論稿を掲載した。
 「米占領破産―イラク国民議会選挙の一大波紋」は、シスターニ派の圧勝におわった一月イラク選挙が「一超」帝国の占領支配の破産を刻印したことを鮮明にする。この破産を自覚したブッシュ政権が、中東支配のために新たに仕組んだ謀略が、二月十四日のレバノン前首相ハリリ暗殺にほかならないことをも、本論稿では明らかにしている。
 「小康社会の全面的建設」をシンボルとした胡錦濤中国の内外総路線≠ニは、巨龍をむしばむ諸矛盾をのりきるための前方への逃走$略でしかないことをうきぼりにするのが、「『二十一世紀の超大国』への爆走」である。ウクライナ大統領選挙におけるユーシェンコの勝利と「オレンジ革命」なるものの意味するものはなにか? CIS統合強化とロシア連邦の中央集権的再編の策動は、反ロシアの民族主義的反逆をよびおこすだけではないのか?「プーチン・ロシアの苦悶」は、これらの問題を鋭くえぐりだす。

広松哲学ののりこえとは
 ▼「哀別の一断面――熊野純彦の広松渉評について」は、「『二人の広松』は許しがたい、『哲学者としての広松』に一本化することが、『師それ以上の或るもの』としての広松からの哀別の第一歩である、と考えているのかもしれない。」と、熊野を批判する。この批判からは、筆者の哀れみの気持さえもただよってくる。「政治家としての広松」を忌み嫌う熊野は、師の哲学の南無阿弥陀仏≠理解することが、ついにできない。この彼にいま訪れている「哀別離苦」。広松学徒にたいする批判は、ひとつの体系をなしている学問を継承しのりこえていくことの困難さを、われわれにも教えてくれている。
 神戸児童連続殺傷事件の「犯人」にしたてあげられたA少年にたいする七年間におよぶ「矯正・贖罪教育」なるものの驚くべき実態を衝撃的につきだしたのが、「虚構のA少年『矯正』物語」である。極秘の「贖罪教育」なるものが公表されたこと自体、CIAが仕組んだ権力犯罪を隠蔽し、A氏を生涯にわたって監視体制のもとにおくという権力者のドス黒い狙いにもとづいているのだ。
 「国家権力の新たなテコ入れをうけた走狗ブクロ派」は、ブクロ派が「前進」新年号において「党建設」をわめきはじめたのはなぜかを暴きだしている。それは、中野一派の解党願望≠ノもとづく「新指導路線」を弥縫するためであり、「日の丸・君が代」反対闘争の破壊を策す国家権力の意に応えたものであることを。
 本号を闘いと思索の糧として活用されんことを。
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狂える帝国

続出するヤコブ病 患者をひたかくし

 「アメリカ産牛肉の輸入をいつから再開する? その期日は?」とニッポンの首相・小泉がアメリカ国務長官ライスに責めたてられたことは先刻ご承知の通り。世界の五十ヵ国がアメリカ産牛肉の輸入を禁止しているなかで、こんなにアメリカから責められているのは日本ただ一国。
 その直接の理由はほかでもない、首相・小泉が昨年十月に「米国産牛肉輸入を再開する」とブッシュに約束したことのゆえ。大統領選で苦戦していたブッシュが食肉業界の支持をも固めるために小泉に無理強いして出させた約束。それがいまや日本はアンフェア≠ニいう対日非難の論拠になっている。アメリカの狂牛病対策を信頼したから小泉首相は輸入再開を約束したのではナカッタデスカ。日本の全頭検査には科学的根拠はアリマセーン。国際基準でもアリマセーン。消費者の利益にも反してイマース≠ニ、ライスを先頭とするアメリカ政府高官は言いたい放題。
 これにたいして日本政府は表だってひとことも反論していない。農林水産省や厚生労働省の一部には悔し涙を流している官僚もいるだろうが、なにしろ昨秋の決定は首相官邸のトップダウン。プリオン専門委員会も内閣府の管轄。つまるところ小泉その人が輸入再開を約束した際にアメリカの狂牛病対策は大枠で信頼できるが、念のために生後二十ヵ月以下に限って輸入する≠ニいう結論を出してしまったのだから、いまさらこの結論とつじつまが合わないことは言えない。アメリカの狂牛病対策には問題ありなんてことは公式には言えない。そこでヤンキーはますます傲慢につけこんでくる、「科学的根拠がないのにアメリカ産牛肉の輸入を妨害している日本には経済制裁を!」と。
 ではアメリカの狂牛病対策は科学的なのかというと、これがまったくもってデタラメでズサンきわまりない。検査をやっているのは全出荷牛のうちの〇・七%だけ。それも日本やヨーロッパで採用されている「ウエスタンブロット法」という検査方法よりも感度が悪い方法でやっている。日本で異常プリオンが見つかった検体をアメリカに送って検査したところ陰性と判定されたほど。
 それだけではない。「生後三十ヵ月以上の牛の危険部位を除去する」という連邦政府の指示さえ食肉市場の現場では守られていない。米政府職員労組の食肉検査支部議長が議会で証言している。曰く、牛の年齢管理ができていない、危険部位を除去する指示も守られていない、と。議会の調査機関でさえ、牛肉骨粉をエサに使用してはいけないという規則を知らない牛肉生産者が多数いると報告している。
 「アメリカには狂牛病による患者はいない」(ライス)というのも大ウソ。ニュージャージー州においてヤコブ病の死者が集団発生していた。これは一昨年に発覚したこと。死者は或る陸上競技場のレストランのなじみ客ばかり十三人(後に三人増えて計十六人)。このレストランの牛肉料理が怪しいにもかかわらず、州保健局は「アメリカには狂牛病はない」という理由をもって「散発性ヤコブ病」――原因は狂牛病ではなく遺伝など――と判定した。「散発性ヤコブ病」が発生する確率は百万人に一人であって、こんな集団発生はとうていありえないはずなのに。
 この事態は、疑問を抱いた遺族や友人らが告発して明らかにされた。これはアメリカの隠された狂牛病汚染、その氷山の一角だ。
 こうした事実が暴きだされているにもかかわらず、ブッシュ政権は、アメリカを狂牛病に汚染されていない「清浄国」として国際的に認知させようとしている。これはとんでもないことだ。もしそれが通ってしまったら、危険部位の除去もいいかげんなプリオン付牛肉がどんどん日本に入ってくる。アメリカ産牛肉一〇〇%の吉野家の牛丼など、それこそ、「早い、安い、狂う」になる。
 アメリカで毎日牛肉を食っているヤンキーからすれば、日本人がなんで大騒ぎしてるのかチンプンカンプン。発病率がウン万分の一しかないヤコブ病を気にして、年間三五〇〇万頭も処分する牛を一頭一頭検査するなんて、ムダ、ムダってのが彼らのコモンセンス。全米でヤコブ病の死者が何百人か出ても、殺人被害者の方がずっと多い。ヤコブ病で脳ミソがスカスカになろうがアルツハイマーでそうなろうが同じこと……。結果がすべてのアメリカン・プラグマチズムの見地からすれば、こんな具合になる。たしかに、ブッシュの頭はもとからスカスカだから、彼らが狂牛病を心配しないのも「アメリカ牛は安全だ」と胸を張れるのも当然のこと。
 こんなブッシュ王朝のいいなりになってアメリカ牛肉の輸入に道をひらこうとしているコイズミは、それこそ日本人民の生命など一顧だにしない売国奴だ。
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