ブッシュ政権による3・2シーア派信徒大量殺戮の謀略を弾劾する!

三月三日     日本革命的共産主義者同盟・革マル派

 三月二日、イラクのイスラム教シーア派の聖地カルバラと首都バグダッドのカジミヤ地区において、二〇〇万人余の信徒が集まり「アシュラ祭」の行事をおこなっているその真っ只中で複数の爆弾が爆発し、二百数十人もの人びとが無差別に虐殺されるという事件が勃発した。同日、パキスタンのクエッタの「アシュラ祭」においても、銃と爆弾で四十名以上のシーア派信徒が虐殺されるという事件が発生した。
 このイラクにおけるシーア派信徒の同時大量殺戮事件は、ブッシュ政権が、シーア派の権力奪取をなんとしても阻むために、シーア派の力をそぎつつスンナ派との宗派間抗争を引き起こし民族分断をはかることを狙って凶行した、悪辣な一大謀略にほかならない。(パキスタンにおける謀略は、アルカーイダによる「国際テロ」とみせかけるために同時に演出されたと断定しうる。)
 わが革マル派は、イラクにおける占領・軍政の完全な破綻に直面したブッシュ政権がこれをのりきるために仕掛けた世紀の蛮行であることを満天下に暴きだし、満腔の怒りを込めて弾劾する!

(1)

 この事件を、ブッシュ政権は「アルカーイダの犯行」とおしだしふれ回っている。だが、こうしたアメリカ帝国主義権力者どもの対応は、まさしく彼らこそがこの事件の首謀者であることを自己暴露している。
 アメリカ権力者どもは、「私の考えによれば、ザルカウィが指揮した(orchestrated)と思う」(副大統領チェイニー)とか、「アルカーイダが関与している」(駐留米軍准将キミット)とかとまくしたてた。一国の副大統領が何の調査にもとづくこともなく、即日容疑者なるものを特定するとは!
 第一に、アルカーイダは直ちに声明を発表し、事件とは無関係であることを宣言した。「罪のないシーア派人民を……殺したのは米軍にほかならない。……我々は神かけて誓う。我々は、この事件とは無縁である。……我々の目的は、誰の目にも明らかである。我々は、アメリカ十字軍およびその同盟軍を攻撃する。……わがムジャヒディンが望んでいることは、あなた方〔シーア派〕が……米国との戦いに決起することである。」と〔「アブ・ハフス・アルマスリ旅団(アルカーイダ)」署名の三月二日付声明、五面参照〕。
 第二に、二月二十八日に、シーア派とスンナ派の聖職者が合同会議を開いて、「アシュラ(犠牲祭)を全ムスリムの祭典としてやろう」と意志一致していた。まさにその「アシュラ」(シーア派最大の祭り)の最終日に、この大虐殺は引き起こされたのだ。
 聖廟に集まり聖なる儀式をおこなっていた信徒を無差別に殺戮するなどということは、ムスリムの仕業では断じてありえない。イラクのスンナ派ムスリム聖職者協会も、直ちに声明を発してこう宣言したのだ――「我々は、ムスリムがこのような行為をおこなったとは思えない。神聖なる祭典の日に、無辜(むこ)の命を奪うような行為をおこなう者は、イスラームとは無縁のものである」と。
 イラク・シーア派の最高指導者シスターニ師も、「宗派間対立を煽り、イラクを内戦状態に陥れようとする目論見に動揺してはならない」と言明し、同師の報道官は「直接的にも〔!〕間接的にも、責任は米占領軍にある」と明言したのである。
 第三に、この事件は、米軍が「テロ警備」の名のもとに事前から厳戒体制を敷いていたその真っ只中で引き起こされた。このことは、米軍がイラク人を近づけることなくモスク周辺にリモコン付爆弾を仕掛けるためだったと推測しうる。
 しかも米軍は、事件発生の直後に、「自爆、車両の爆発、時限爆弾、遠隔操作による爆発、迫撃砲など、いろいろの手口が組み合わされた」などと発表した。だが、「自爆のようにも見えたが、自爆した人の後ろに仕掛けられていた爆弾が爆発したように見えた」という目撃証言もあるという。米軍が事件後ただちに先のような発表をすること自体が、「ムスリム武装勢力の犯行」に必死に見せかけようとしていることの証左なのである。

(2)

 3・2の「アシュラ」におけるシーア派信徒の大虐殺は、まさに断末魔のブッシュ政権が凶行した血迷った謀略にほかならない。
 傀儡(かいらい)政権づくりを内実とするブッシュ政権の「主権移譲」方針を拒否し「イラク国民の代表を選出するための直接選挙を」というファトワ(宗教令)を発してきたイラク・シーア派最高権威たる大アヤトラのシスターニ師。彼を指導者と仰ぐ、イランからの巡礼者をふくむ二〇〇万人を超えるシーア派信徒が結集した宗教的祭典は、アメリカ権力者にとっては、一九七九年のイランにおける「ホメイニ革命」の悪夢を呼び起こさずにはおかないのである。まさしくこのゆえにブッシュは、アメリカ帝国主義の「主権移譲」の方策を逆手にとってシーア派主導政権の樹立を追求しているシーア派の勢力拡大を阻むために、3・2の大謀略にうってでたのである。
 シーア派信徒を大量虐殺するために、そしてこれをアルカーイダに連なるグループの仕業に見せかけるために、ブッシュ政権は今年初頭以降、周到な準備をしてきた。
 二月五日のシスターニ師への銃撃=暗殺未遂事件。二月十日のイスカンダリアにおける、警察署でのトラックの爆発によって警官志願者約五十名が死亡した事件。翌二月十一日のバグダッドでの、イラク国軍新兵募集センターにおける車輌爆弾による四十六名の死亡事件(この二つの事件とも、米兵のけが人はゼロ。犯行声明も出ていない)。そして、二月二十六日の、スンナ派聖職者アルジャウバエ暗殺事件。まさにこれらはいずれも、アメリカ権力者どもが凶行した謀略なのである。
 そして彼らは卑劣にも、これらの事件があたかも「アルカーイダのテロ計画」にもとづくものであるかのような宣伝に狂奔してきた。イラク駐留米軍はまず、二月九日に、「国際テロリスト=アブ・ムサブ・ザルカウィの、ビンラディンへのテロ支援要請書簡」なるものが存在するとほのめかした。そして2・10と2・11の二つの事件勃発の直後に、その内容なるものを発表した――「米国人、クルド人、イラク人兵士や警官などの占領者への協力者、シーア派が四つの敵である」「シーア派への攻撃は、われわれと異教徒との戦いを長引かせる唯一の手段である」「シーア派を自爆攻撃し車爆弾で殺傷する」と(「読売新聞」。なお「読売」は三度にわたってこの書簡を大々的に報道した)。そしてCPA(連合軍占領当局)の報道官は、ザルカウィに十億円以上の賞金をかけつつ、「この文書は、イラクにおけるテロの詳細な設計書だ」などと大仰に叫びたてたのである。
 アメリカ権力者どもは、今回、この書簡をふりかざして、「3・2の同時テロはアルカーイダが関与したものだ」などとうそぶいているのである。
 だが、この書簡なるものは、明らかにアメリカ権力者どもがでっち上げた作文にほかならない。このことは、今年二〇〇四年の初めにビンラディンが、「現状を憂えるすべての宗教者・為政者・商人が集まって賢人会議を作り、十字軍に立ち向かおう」という主旨の呼びかけを発していたことひとつをとっても明らかなのであって、アルカーイダがシーア派を標的にすることなどありえないのだからである。
 まさにこの書簡こそは、3・2の大虐殺の真犯人がアメリカ権力者にほかならないことの、動かぬ証拠なのである。

(3)

 ブッシュ政権はいま、あらゆる意味で断崖絶壁に追いつめられている。
 イラクにおけるムスリム人民のレジスタンスとアラブ義勇兵の反米反占領闘争は、いまや民衆一斉蜂起の様相さえみせつつある(たとえば、二月十四日ファルージャでの七十名の武装部隊による警察・イラク民間防衛隊攻撃)。そして、破綻した軍政を弥縫するために、CPAからイラク人に主権を移譲するという形をとって傀儡政権をでっち上げようとするブッシュの目論見もまた、いまや完全に挫折している。しかもブッシュは、イラクの大量破壊兵器なるものをでっち上げた事実や、国連事務総長アナンおよびイラク査察団長ブリクスをブレアと共に盗聴していた事実などを、次々と暴かれ、今秋の大統領選における民主党候補ケリーへの敗北が必至となりつつある。
 まさしくこのような四面楚歌のゆえに、ブッシュはいま、シーア派の要求してきたイラクの直接選挙をなんとか大統領選後に引き延ばそうとして、一方では国連のアナンに泣きついて、彼にシーア派の説得をお願いしている。他方では、その裏側で、謀略を駆使してシーア派に打撃を与え、宗派間対立・抗争を煽りたてようとしているのである。そうすることによってブッシュ政権は、米占領軍にたいするイラク人民の闘争の矛先をそらし、破産した軍政をなんとか建て直そうとあがいている。宗派的=部族的抗争を激化させることによって、いわゆる熟柿作戦≠とっているシーア派の権力奪取を阻止し、そこにみずからの管理下の傀儡政権を擁立する道をまさぐっているのだ――イラクを三つないし五つの連邦制にするなどという画餅をも描きながら。
 イラク占領軍政=植民地支配の挫折をつきつけられている断末魔のブッシュ政権は、傀儡政権づくりのために、シーア派を標的とした謀略を今後もさらに続けるに違いない。事実、南アフリカのアパルトヘイト暗殺団をはじめ、世界から集められた傭兵が、米諜報機関と契約を結びつつイラクに潜入し、暗躍しているといわれる。またイスラエルで訓練を受けた約三千人の分子が、イラクで謀略活動を展開しているといわれる(「日刊ベリタ」)。
 昨二〇〇三年八月二十九日、ブッシュ政権がナジャフにおいて凶行した、イラク・イスラム革命最高評議会議長バーキル・ハキム師爆殺の謀略。また、昨二〇〇三年十一月二十九日に、イラク出兵を逡巡する小泉政府の退路を断つために、ムスリム武装勢力の犯行にみせかけて米軍が凶行した、二名の日本人外交官射殺の謀略。――みずからの窮地をなんとか挽回しようとして、「邪魔者は消せ」的な謀略を駆使してきたアメリカ帝国主義権力者どもは、いまやムスリム人民の大量虐殺の蛮行にまで踏みだしているのだ。
 すべての労働者・学生諸君!
 「自由と民主主義とイエス」の名において、今や国連をも利用して、「復興支援」を掲げながら、これをツイタテにしてムスリム大量虐殺の謀略を凶行したブッシュ政権にたいして、階級的怒りを叩きつけよ!
 破綻した米軍政の片棒を担ぐために日本国軍隊をイラクに出兵し、「ゲリラ掃討戦」に踏みだすと同時に憲法を公然と改定しようとたくらんでいる小泉ネオ・ファシスト政府を打倒せよ!
 3・2事件以後「われわれ(シーア派)とスンナ派の人びとは、これまで兄弟であったし、これからも兄弟でありつづける」と叫んで反米デモにたちあがり、反米反占領闘争の最終的勝利に向かって前進しつつあるムスリム人民と連帯し、今こそイラク反戦の闘いを爆発させよ! 
 
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